マジで恐れ入ったぜ
リリムは、今しがたオークを払いのけた左手をまじまじと見つめた。
間違いなく自分の手だ。もう一度手を開き、閉じてみるが思い通りに動く。
リリムは試しにその握ったままの拳を自分が横たわっている石畳にそのまま叩きつけてみた。
拳は石畳を砕き、そのまま石と石の間に埋まって止まった。
続いて上体を起こし、自分の身体を確認した。どうやら、何かされたわけではなさそうだ。ならばよしと切り替える。
「あんた、すげぇなぁ!」
そんなことをしているうちに、いつの間にか軽薄そうな小柄な男がリリムの所に来ていた。彼女を囲むように十人くらいの男たちが集まっていた。
「あの『醜面のダグダ』を一撃かよ! マジで恐れ入ったぜ。いやぁ、あいつはこの第二十三番収容部屋の中では一番強くて凶悪でさ、誰も手出しできなかったんだよ。いやースッキリした!」
軽薄そうな男――その身体の大きさからするとノームだろうか――はリリムのつまらなそうな顔に気づいていないのか、なおも一方的にまくし立てる。
「さっきもさ、ダグダがあんたを襲おうとしてたのはわかってたんだけどさ、怖くて誰も助けられなかったんだよ。わりぃな」
うそばっかり。自分もあとでおこぼれをもらおうと思ってたくせに――とリリムは思ったが、それを口にすることはなかった。今自分の置かれている立場がわからない上にこの狭い収容部屋とやらの中でむやみに敵を作る必要もないと判断したからだ。
「殺しちゃダメよ。それはもうアタシのものなんだから」
意識を失う前に第一皇女のヴェパルがそう言っていたのを思いだした。
ならば、ここはヴェパルが管理する建物なのだろう。
思ったよりも早く行動に移せるかもしれない。リリムはじっとそのタイミングを待つことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます