音楽ランキング SSランク編 中島みゆき

中島みゆき SSランク


死ぬまでに聴かないと損する度 100 SSランク


【解説】

本ランキングでは、なるべく一般にはあまり知られていないミュージシャンをご紹介していきたいのだが、死ぬまでに聴かないと損する度という観点から見れば、中島みゆきを取り上げない訳にはいかなかった。


中島みゆきといえば、メジャー中のドメジャーであり、茂野吾郎も裸足で逃げ出すレベル(?)なのだが、中島みゆきはメジャーとかマイナーとか、そういった次元を超越した不世出の大天才なのである。


その死ぬまでに聴かないと損する度は間違いなく満点。


女性ミュージシャンどころか、全ミュージシャンの中でも桁外れの天才であり、その図抜けた才能に触れずして死ぬことは、確実に人生を損していると言えるだろう。


同年代の女性ミュージシャンといえば、ユーミンや高橋真梨子などの名前が浮かぶ。


勿論両名とも実力派であり、筆者も好きなのだが、中島みゆきはやはり別格中の別格としか言いようがない。


『中島みゆき』とはそれほど例外中の例外であり、正直に言ってしまうと中島みゆきと比較できるようなレベルの女性ミュージシャンなど、この日本には存在しないのである。


筆者と中島みゆきの出会い……といっても、中島みゆきの曲はそこかしこに流れているため、物心つく前にもう出会っていたのだろうが、記憶にある中で一番古い思い出は、『家なき子』のテーマソングに使われていた、『空と君のあいだに』だったと思う。


まだ子供だったその時は、正直な話中島みゆきの曲を聴いてもなんとも思わず、むしろ『この人おおげさな歌い方だなあ』と感じ、ちっとも良いとは思わなかった。


それから十年以上の月日が経ったが、まだ中島みゆきを良いとは全然思わず、筆者にとっては『みゆきバージン』の日々がずっと続いていた。


筆者が生まれて初めて中島みゆきの素晴らしさに気付いた時。


それは初めての出会いから大分経ち、分別を覚え少し大人になった頃だった。


来店した本屋の店内から、何気なく『糸』のBGMが流れ始める。


それまで全く気にも止めていなかったはずの歌詞の意味が、何故かその時ふっと心に染み入ったのである。


素晴らしいとしか言いようがない歌詞。


この歌詞にはこれしかないと思えるメロディー。


歌詞とメロディー、どちらが欠けても成立しない、全てが完璧な調和を持って、一つの楽曲として完成されている。


これはヤバイ、なんなんだこの天才すぎる人は。


中島みゆきの曲は、本当に心に染みる。


時には鋭く突き刺さるように、時には優しく包み込むように、それは圧倒的な凄みと説得力を持って、聴く者の心を強く揺さぶるのである。


昨今の軽薄なミュージシャンなどとは、根本的に違う。


昨今の軽薄な曲を、たった数年で消えるインスタントミュージックだとすると、中島みゆきの曲はたとえ百年後でも人々に愛され、この世に残り続けるだろう。


誰とは言わないが、好きとか、愛しているとか、そういう何の工夫もない直接的な歌詞は、考えるまでもなく分かりやすく、大衆に受け入れられやすい。


よって直接的な歌詞の方が売れやすくなる訳だが、興行的には成功しても、表現のレベルとしては非常に低いと言わざるを得ない。


『好きな人と別れて涙が出る』


凡百の作詞家が直接的な歌詞でそれを表現するところ、中島みゆきはこう表現するのである。


『今夜は煙草が目に染みる』と。


表現として非常に高いレベルにありながら、興行的にも成功しているというのは、中島みゆきの非凡すぎる才能の証明に他ならない(勿論、興行的に成功しなかったら才能がないという訳ではない。才能がありすぎて大衆に理解されなかったミュージシャンも大勢いる)。


通常CDというものは発売後どんどん価格が下落していくものだが、中島みゆきのアルバムは中古でもなかなか価格が下がらないことで有名であり、いつ、どんな時代に於いても高い需要があることが分かる。


そういった市場価値という観点から見ても、中島みゆきの凄さが垣間見えることだろう。


筆者が作詞家として素晴らしいと思うミュージシャンは何人かいるが(フィッシュマンズの佐藤伸治もその内の一人)、その中でも中島みゆきはやはり別格。お笑い大会ランキングを見て頂ければ分かる通り、ダメだと思うものは信念を持って指摘する筆者であるが、全く隙という隙が見当たらない。


真の天才の前では批評など何の意味も持たず、ただただ平身低頭して、その巨大な才能を享受させて頂くのみなのである。


作曲に関しても一部の隙もなく、『音楽』とは歌詞とそれに釣り合うメロディーが調和して初めて完成するものだと、再認識させてくれる。


これほど歌詞のレベルが高いと、メロディーもそれと同等の極めて高いレベルを要求されるため、凡人であればその一曲のみで才能を使い果たし、一発屋になる可能性が高いが、中島みゆきはそんな凡人の危惧などどこ吹く風、天才的レベルでそれをやってのけた上、量産までしてしまうのだ。


歌唱も素晴らしいとしか言いようがなく、曲の特性に応じて、時には聖母のように優しく包み込むように歌ったかと思えば、激しく情念たぎる歌唱をすることもあり、その曲にとって最も適した歌唱を全て理解した上で(おそらく曲を創る段階でどう歌うか、既に決まっているのだろう)完璧に歌いこなされては、本当にぐうの音も出ない(出す必要もないが)。


中島みゆきの曲を完璧に歌えるのは、他ならぬ中島みゆきだけであり、それ以外のカバーは全て取るに足らぬ児戯に過ぎない。


素人のカラオケなら良いが、中島みゆきをカバーできたつもりになっていい気になっているミュージシャンは、木を見て森を見ない、余程の世間知らずだと思わないでもない。


本来中島みゆきの天才性を理解し、少しでも恥を知る者であれば、天才の曲をカバーして台無しにし、あまつさえそれで金を取るなど、恐れ多くて出来ないはずなのだ(中島みゆきに関してだけは、多くの偽物に騙されず、きちんとオリジナルを聴きましょう)。


中島みゆきだけは全ミュージシャンの中で破格の天才だと、筆者が自信を持って断言する。


本当に、聴かないのは人生を損しているだけなので、レンタルでもなんでもいいので、歌詞の深い意味に想いを馳せながら、是非中島みゆきの世界を楽しんで頂きたい。


中島みゆきの素晴らしさに気付く時。


それは貴方が、子供から大人になった証なのかもしれない。

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