第14話 冒険者
「では登録のために、こちらの水晶に手を触れてください。みなさんの魔力情報が登録されます」
手のひらサイズの水色の水晶に手をかざすと、水晶の中に不思議な模様が波打つ。
ぐるぐると動いて止まった。
「登録完了しました。それをもとにプレートに情報が刻まれますので、無くした場合でも再発行手続きできますよ。ランクによって再発の値段が変わりますので、ご注意ください」
それから子供達の手続きも進める。
「冒険者はランク分けされています。EランクからAランクまであり、その上にSランクが存在しますが、世界規模の活躍をした冒険者にのみ与えられるので、基本的にはAランクまでとなります。Eランクからプレートの色が変わります。Eランクは銅プレート、Dランクが鉄プレート、Cランクは銀プレート、Bランクは金プレート、Aランクはミスリルプレートになります」
銅は茶色、鉄は黒色、銀は銀色、金は金色、ミスリルは水色だ。
「依頼にもランクが存在しておりまして、ご自身のランクと同ランクの依頼を一か月間で一度もこなしていない場合、ランクが下がることになりますので、ご注意ください」
月一回は必ず同ランク依頼を受けないといけないか……覚えておこう。
「依頼は受ける時にメンバー間でも共有できますが、事前登録しておく必要があります。パーティー登録をしておくと、お一人が受けてもみなさんが共有されますのでおすすめです。メンバーは六人まで登録できます」
丁度隣では臨時パーティーと思われる冒険者達三人が、一緒に依頼を受けていた。
みんながみんな固定パーティーを組んでいるわけではなさそうだ。
「受けられる依頼は、ご自身と同じランクまでとなります。ランクアップの基準ですが、冒険者ギルドが秘密裏に採点を行っており、ランクアップに足りうる人材だと思われたら、ランクアップになります。基本的に同ランク依頼をたくさんこなしたら上がると思っておいてください」
「メンバーが増えたらその分、多くをこなさないといけないとかありますか?」
「――――そのつもりでいてください」
秘密ではあるが、そこら辺は何となく教えてくれるようだ。
「依頼失敗が三回続いた場合、ランクが下がります。Eランクの依頼失敗が十回重なった場合、冒険者資格はく奪となりますのでご注意ください」
はく奪されたら……言うまでもなく、二度と冒険者になれなさそうだな。
「丁寧にありがとうございます」
「いえいえ。何か疑問があったらいつでも聞いてください。依頼はあちらの掲示板から依頼書を持ってこちらの受付に並んでください。こちらがみなさんのプレートになります」
子供達の登録も全て終わって、四つのプレートが出された。
プレートは直径五センチ程の丸いプレートで、両側に同じ色の金属でネックレスになっている。
「必ず首に掛けないといけないですか?」
「いえ。お持ちにさえなれば構いませんが、登録時にプレートが肌に触れていないと、依頼登録ができないので、それだけご注意ください。多くの方は首に掛けたままにされております」
色で自分の実力を示すことにも繋がるし、黒色以上の人は堂々と見せているけど、茶色のプレートの人はあまり見かけない。プレートが見えない人は恐らく茶色プレートが多いと思われる。というのも、あまり堂々としてないからだ。
「わ~綺麗なネックレス~」
「付けてあげるよ」
アレンが率先してシアにネックレスを付けてあげる。その姿がまた微笑ましい。
「レイラちゃんは私が付ける~!」
シアがレイラにネックレスを付けると、レイラが奪うかのようにアレンのネックレスを取って付けてあげた。
「ありがとぉ……」
「い、いいのよ」
レイラならではのツンツンさ全開だ。
「アラタも!」
「ん? 俺も付けてくれるのか?」
コクリと首を傾げたので、その場に跪く。レイラが両手を伸ばして俺の首にネックレスを付けてくれた。
色なんてどうでもよくて、みんな同じ物を身に付けたことが嬉しく思う。レイラ達もそう思うようだ。
さっそく依頼を――――と言いたいところだが、今日はまだ町に来たばかりなので、宿屋に向かおうかなと思う。
「おすすめの宿屋はありますか? 子供達が泊れそうな宿屋で」
「それでしたら、中央広場を東に向かうと【安らぎの羽根】という宿屋がおすすめですよ。少しだけお値段が上ですが……」
「ありがとうございます。そちらの宿屋に行ってみます」
「お姉ちゃん、ありがとう~!」
シアが元気よく手を振ると、受付嬢も笑顔で手を振ってくれた。
異世界の人だからと、みんなが綺麗なわけではないが綺麗な人が多い。
冒険者ギルドを後にして、言われた通り東を目指して歩く。
暫く歩いたその時、俺達の前を塞ぐ大きな影があった。
「おいおい。ぴょろ男さんよ~」
やっぱり追いかけてくるのか……はあ……。
「何かご用で?」
「ギルドで俺様に恥をかかせてくれたからよ~
随分と喧嘩っ早い。極太の腕を俺に向かって振り下ろす。
ただ、魔物と何度も戦っている俺からすれば、魔物よりもずっと
振り下ろされた腕を、受け流して巨体を投げ飛ばす。
同時に、アレンが剣を鞘に入れたまま、後方で卑猥な笑みを浮かべる巨漢の仲間を叩き飛ばす。
さすが【勇者】を持つアレンだ……!
ここ三週間でここまで強くなれて、保護者として嬉しく思う。
投げ飛ばされた巨漢は、そのまま気を失ったので道に放置して先を急いだ。
「あれ、そのまましていいの?」
「いいんじゃない? 先に攻撃されてるし」
「それもそうだけど、町民達の邪魔になるんじゃない?」
「なおさら自業自得として、衛兵さんにでもお世話になってもらいたいね。それにしても冒険者ってみんなあんな感じで喧嘩っ早いのかな」
「ギルドにいる人達の何人かは、あまり良い視線を向けなかったもんね」
さすがのレイラも気づいていたのか。
慣れているアレンも言わないだけで、頷いているのを見ると気づいてるようだ。
道を暫く歩くと、右手側にお家を模した看板に【安らぎの羽根】という名が書かれていた。
三階建ての木造の温かみのある建物だった。
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