第2話 わし、泣くぞ2
前作での表記の違い。
孫=あきこ、看護師=ひなのです。
婆さん:おじいさん
爺さん:なんじゃい、ばあさん
婆さん:私は決めたことがありますよ
爺さん:なんじゃ?
婆さん:あなたに家事を仕込みます
爺さん:・・・へ?
婆さん:あれ、聞こえませんでした?補聴器つけます?
爺さん:要らん!じゃのうて・・・何で今更家事?
婆さん:ほら、この間爺さん検査入院したでしょう
爺さん:ああ、わしが白目剥いた日のことな・・・ここ数年で一番鮮明に覚えとるよ
婆さん:その時私思ったんですよ・・・爺さんいなくても、私の生活変わらんわねぇと
爺さん:なぁ・・・!婆さん、わしがおらんくて寂しかったじゃろ!?二日間、食事も喉を通らんじゃったろ!?
婆さん:いいえ~ご近所さんが美味しい葡萄(ぶどう)くださって~本当に美味しくいただきましたよ
爺さん:ええー!?なにそれ!わし知らん!わし食っとらん!
婆さん:入院中だったもの
爺さん:一泊二日の検査入院!退院するの翌日!わしの分残しといてくれてもよかったじゃろ!
婆さん:だって、あんまり美味しそうでしたもの
爺さん:ひどい・・・
婆さん:でね?私の生活はとーんと変化なく、美味しいものも美味しく食べられたんですけどね
爺さん:追い打ちかけんでよ・・・
婆さん:これが私の入院だったらどうだったかしら、って考えたのよ
爺さん:・・・どういうことじゃ?
婆さん:おじいさん、洗濯機の回し方知っとる?
爺さん:そんなの、ボタン押せばいいんじゃろ?
婆さん:どこのボタン押せばいいのか、知っとる?
爺さん:・・・説明書読めばわかるじゃろ
婆さん:もう説明書なんてどこにもないわよ?大体、あんな細かい文字、おじいさん読める?
爺さん:そしたら・・・あきこか智子にラインして
婆さん:いちいち孫や娘を呼ぶんじゃありません
爺さん:じゃ、じゃあコインランドリーに
婆さん:短期間ならいいけれど、長期の入院とかしたら費用も手間もかさむわよ
爺さん:そうじゃの
婆さん:洗濯だけならまだいいわ、いざとなったら洗わずに着ちゃえばいいんだもの。でもお食事は?それこそ、毎日のことよ。おじいさん、お鍋とお玉の場所知っとる?
爺さん:・・・そういえば、なんも知らんなぁ
婆さん:でしょう?私もね、いつお迎えが来るかわかりませんから、ここいらでおじいさんに家事を仕込んどこうかと
爺さん:ばあさん、どっか具合悪いんか?
婆さん:あらやだ、血管年齢40歳叩き出した私にそれ聞く?
爺さん:やっぱり家事覚えんでも困らん気がするよ?
婆さん:うふふ。理由をつけて、おじいさんに家事スキル身に着けてもらって楽したいだけですよ
爺さん:本人に言っちゃうのね
婆さん:あら、お嫌かしら?
爺さん:・・・今まで、長いこと家のこと任せきりで、すまんかったな
婆さん:私らの時代はそれが当たり前でしたから。おじいさんは山狩りに、おばあさんは洗濯に、ってね
爺さん:では、色々ご教授願おうか
婆さん:私の教え方はスパルタですよ、ついてきてくださいね
爺さん:・・・出来れば優しく教えてほしいのぅ
0:2か月後。
あきこ:おじいちゃーん、おばあちゃーん
ひなの:ごめんくださーい
婆さん:あらあらあきこ、よく来たわね。ひなのさんもありがとうね
ひなの:いえいえ。田中さんもお元気そうで
婆さん:夫婦共々ピンピンしてますよ。当分、ひなのさんの病院にお世話になることは無いわね
ひなの:それはよかったです
あきこ:ねえ、おばあちゃん。ほんとに今日、おじいちゃんが夕飯作ったの?
婆さん:ええ。張り切って沢山作りすぎたから、あきことひなのさんにも食べてほしくてね。デート中だったのよね?来てもらって悪かったわね
ひなの:いえ、すぐ近くにいたので
あきこ:おじいちゃん、料理なんかできたっけ?
婆さん:この2か月間、私が仕込みに仕込みまくったのよ
あきこ:おじいちゃんの手料理・・・胃薬持って来た方がよかった?
婆さん:あらあら、信用の無い人ね。まあ実績が無いんだからしょうがないわね。でも何回か食べたけど、今のところ一度もお腹壊してないから大丈夫よ。人体実験済み
あきこ:まあ、いざとなったら看護師のひなのがいるしね!
婆さん:そうねぇ、いざとなったらお願いね
ひなの:はい
0:爺さん登場。
爺さん:みんなひどくない?
婆さん:あらおじいさん、向こうで待ってたらよかったのに
爺さん:全然ばあさんたちが上がって来んから迎えに来たんじゃよ。もしかしてわしだけ置いてみんなでご飯行っちゃうドッキリかますんかと不安になっての
婆さん:あらやだおじいさんったら。そんな面白いこと、考えなかったわ。・・・今度やってみようかしら
爺さん:やめて。謝るから置いて行かないで
ひなの:お久しぶりです。お元気そうで
爺さん:看護婦さんも相変わらず綺麗じゃの
ひなの:あら田中さん、また看護婦って呼びましたね?今の時代は看護師って呼んでくださいな
爺さん:そうじゃったそうじゃった
婆さん:立ち話もなんですから、上がってくださいな
あきこ:おじいちゃんの手料理、楽しみー!
ひなの:お邪魔します
0:居間にて。
あきこ:えっ・・・ええ!?これ、おじいちゃんが作ったの?マジで!?
ひなの:これは・・・ちょっと予想外です
爺さん:鯛(たい)のカルパッチョ、海老のタコのアヒージョ、マルゲリータにシーザーサラダ、もうそろそろポテトグラタンも焼きあがるぞ
あきこ:てっきりカレーか鍋が出てくると思ってた。まさかのラインラップ・・・というか
ひなの:どれも美味しそう・・・ピザ、これもしかして生地から作ってます?
爺さん:おお、よう気づいてくれたのぅ
あきこ:おじいちゃんこんなに料理できたの!?私アヒージョとか作ったことないんだけど!?
爺さん:今の時代は何でも便利じゃの。魔法の粉で全部解決じゃわい。企業努力に感謝じゃな
あきこ:だからって!というか、おばあちゃんと二人で食べるには作りすぎたね!?
婆さん:あきこが来てくれるって決まってから更に量を増やしてたからね。流石に二人でこれは食べられないわよ
爺さん:でも、食べれんでも余ったらリメイクしたらよかろう?ポテトグラタンとか、明日パンに乗ってけ焼いたら美味そうじゃろ
ひなの:リメイク・・・
あきこ:どうしようひなの・・・私おじいちゃんに料理スキル負けたかも
婆さん:おじいさん、こう見えて昔から向上心と探求心が高くてね。基本を教えたらどんどん覚えていっちゃって。和食から教えたんだけど、一通りできるまで3週間かからなかったかしら
あきこ:なんか悔しい
爺さん:突っ立ってないで、座っとくれ。今茶を淹れるから
あきこ:おじいちゃんがお茶!いつも「ばあさんお茶」ってあごで使ってたあのおじいちゃんが!
爺さん:言い方!・・・って、そうだったかもしれんのぅ。習慣というのは恐ろしいわい。ちょっと待っとれ
0:爺さん退場。
ひなの:すごいですね
あきこ:おじいちゃんって凝り性だったんだ
婆さん:そうねぇ。凝り性もあるけど・・・今まで手伝ってこんかったこと、本当に反省してるみたいなのよ
あきこ:そうなの?
婆さん:料理だけじゃなくてこの際、家事全般叩き込んでみようかと思ってねぇ。お風呂の排水溝開けた時なんか「こんなとこ開くことすら知らんかった。今までなんも手伝わんとすまなんだ」って謝られちゃったわ
ひなの:へぇ・・・
あきこ:でもどうして急に家事を教える気になったの?
婆さん:ほら、私も歳でしょう?いつ何があってもおかしくないし・・・そん時にあの人一人きりにしたらいかんと思ってねぇ
あきこ:なるほど
婆さん:でも、こんなに楽しそうにやってくれるなんて思わなかったわ。嬉しい誤算なのよ
ひなの:田中さん、なんだか楽しそうでしたもんね
婆さん:そうなの!やっぱり長生きの秘訣は生活へのハリでしょう?おじいさんにはこれからも長生きしてもらわないと!
あきこ:おばあちゃん、おじいちゃんが死んだら悲しい?
婆さん:当たり前でしょう?おじいさんのいない生活なんて考えられないわよ
あきこ:それ、おじいちゃんに言ってあげればいいのに
婆さん:やーよ、照れちゃうじゃない
ひなの:・・・もう聞こえちゃったみたいですよ?
婆さん:え?
0:お茶を持った爺さん登場。
婆さん:あらやだおじいさん!盗み聞きなんてはしたないですよっ
あきこ:おばあちゃん顔赤いよ?
婆さん:ああもう、黙って頂戴
爺さん:・・・・・・どうしよう。嬉しすぎて、わし、泣くぞ?
婆さん:・・・もう!ほら、冷めないうちに食べますよ!
あきこ:アツアツですね
ひなの:ほんとにね
婆さん:ああもうっ・・・!
わし、泣くぞ 4人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます