事務所所属と一般公開ライブ
まぁ、そんな祈りが届くわけがなく。人気というか俺の話題は、一気に日本中を駆け巡った。らしい。まぁライブ映像の方も流れたからね。わかってた。
なんで曖昧な表現かというと、俺はSNS見てないので。見るわけがないだろ、メンタル一般人がSNS眺めたら自分に関する話題が駆け巡っているのなんてみたら、速攻で精神面に限界が来てしまうわ。
というわけで例によって新田さん等会社の人間、親類、翼ちゃんを始めたとしたEGFの面々からの情報である。とりあえず俺がSNSをやる事は、マテリアル適合者をやっている間はないだろう。でもアカウントは作成するらしい。運営は事務所のスタッフがするらしいけど。
事務所って何かって?
それは先日俺が行った事と含めて説明しよう。
「……というわけなのでカメラの向こうの皆さん、ご協力よろしくお願いします」
変身した後のドレス姿で、俺はカメラに向かって頭を下げる。
──例のライブが終わってあまり日も経過していないある日の事、俺は自身に関する発表の為に映像を撮影することになった。
発表内容は二つ。一つは俺の
発表自体はスタッフがするという話もあったが、印象的に本人がやった方がいいと思ったので俺が自分から立候補した。
そしてもう一つの発表内容だが……
俺がTESTAMENTに所属をする事に関する発表だった。
TESTAMENTは芸能事務所である。いや、なんで俺芸能事務所に所属する事になってるんだろうな。適合者になって以降、俺凄い勢いで人生の坂を転がり落ちてないか?
いや、普通の人間でいえば駆け上がっているの方でとるんだろうが、俺の望んだ展開とは大分違う方向に流れていっているからな。途中で誤って坂道に足を踏み入れちゃって、そこから止まれずに駆け下りている感覚が圧倒的に強い。
まぁスタート踏み外したのはおいておいて踏み出したのは自分の意思だし、今更止まる訳にいかない所まで来ているので、坂の終わりまで立ち止まるわけにはいかないんだが。
ちなみにTESTAMENTは真壁さん達SYMPHONIAが所属している事務所である。
現在EGFでは俺専用のチームが組まれており、前回の初回ライブは一部を除いてそのスタッフが運営してくれたんだけど……今後それより規模が大きいイベントをやっていくとなるとどう考えても人手不足である。そもそも彼らは元々のEGFの職員あとしての仕事がある。彼らが抜ければそれだけ他の人間は忙しくなっていしまうのだ。
だからといって、EGF職員は簡単には増やせない。マテリアル適合者の個人情報をはじめ守らなければいけない極秘事項が多いし、行っている業務も専門的な事が多い。バイトは雇えないし、下手に正規の職員を増やしても役に立たない可能性が高い。割とエリート集団なのである──よく考えたら国防を担っているんだから当たり前だな。
なので、だったらそっち本業の所に委託しちまえっていうのが今回の事務所所属の経緯である。TESTAMENTならすでにSYMPHONIAが所属している事もありEGFと連携して動けるからな。
今回のこの会見? 映像もTESTAMENTが準備したものである。
しかしまさか真壁さん達と同じ事務所に所属する事になるとはなぁ……いや前述の理由でそういった所に所属するならTESTAMENT一択になるのはわかるんだけど。
加入が決まった時、真壁さんが当然のようにコラボを提案して来たけど、これは俺が何か言う前に却下された。
理由はいくつかあって、一つは異星人の侵攻に関する警戒レベルが上がった事。それにともなって真壁さん達SYMPHONIAは担当区域からあまり離れられなくなった。というか真壁さんが頻繁にこっちに来ていたのがおかしいんだけど。
それと、今や高い人気を持つSYMPHONIAなんかと一緒にイベントやったら、やってくる人間は殆どSYMPHONIAのファンになっちゃうからな。俺の能力の特性を考えれば、俺の歌に興味を持って聞きに来てくれる人間の方がいいのは間違いないだろう。
それ以外にも細々とした理由もあり、現役アイドルと一緒にステージに立つという地獄は回避することが出来た。
尚芸能事務所が運営するにあたり、前回の関係者ライブとは異なり今後は有料となる。……俺が金とって歌聞かせるのか。今の俺の歌唱力を考えればおかしな話ではない。ちなみに別にTESTAMENTがどうのじゃなくて、元からライブに関しては有料とする方針が決まっていた。
会場やスタッフを動かすのもただじゃないってのも理由があるけど、それ以前に──こういう言い方はあれだが、客の"質"を上げるためだ。
無料だと、軽い気持ちや冷やかし、あるいは悪意のある客が来る可能性が高くなる。
……俺の歌を望む相手が少ないようだったら数を集めるためにこんな手法はとらなかったけど、どうやらライブの映像や以前ラジオで流した歌の件もあり、俺の歌を望む人間はかなり多いらしい。だから有償でも充分に客は集まると判断された。
そして俺の発表動画の公開直後、初の一般公開向けのライブの開催が告知された。
時期はその動画の発表から2週間後。ライブ会場のキャパは2800人……これはハコがそれが限界だということではなく、俺の残りゲージ情報から決定された。
なにせ俺も詳しい事はわからないし、事前にある程度動きだしていたとはいえたった2週間でこの規模のライブはかなりタイトじゃないか? 俺自身もトレーニングで忙しかったけど、周りの人間は更に輪をかけて忙しそうだったぞ。
正直ありえないくらい展開が早すぎるんだが、こんな地獄のようなスケジュールなのは当然理由がある。
前述の通り、異星人の侵攻への警戒レベルがあがった。今後近い内に侵攻が発生するのは間違いないとされている。更にその規模は少なくともここ最近では最大規模になる可能性が高いとされている。
ようするに、それに間に合わせるためだ。
予測される侵攻の発生時期と、実現可能なスケジュールの折り合いをつけたギリギリのラインがこのスケジュールだった。
もし次の侵攻に間に合わせる事があれば、俺は大幅に強化した
それが皆の頭にあるから、EGFの職員もTESTAMENTのスタッフも、そして俺もこの2週間とにかく必死で動き回った。会社にも申し訳ないが、仕事の方は少なくともこのライブが終わるまでは完全に休職。とにかく歌とフリのトレーニングに費やした。正直な所夜寝る時以外はとにかく必死で、なんで俺こんな事になってるんだろうとか今の自分の境遇に疑問を感じている暇もなかったのだ。トレーニング終わった後は後でグロッキーで「モウナニモカンガエタクナイ」状態だったし。
そんな精神的なハードな日々を過ごし。俺はいよいよライブの日当日を迎えた。
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