第21話 砂漠での謀殺
「本当に大丈夫なんだろうな? エアに見つかれば今度こそ自我を奪われる」
「大丈夫ですよ。私は神に愛されていますので」
「フッ、異端の王が。よく言うよ」
「それより、ここからは砂漠です」
魔術師団のアジトのある山脈を貫くトンネル。それを抜けた先には、ガラス片の砂漠がある。
「はて。そんな砂漠などあったかな?」
「あなたの起こした大戦乱のせいですよ。大規模な焦熱魔術が使われ、国が一つ消し飛んだんです。あまりの温度に灰はガラス化しました」
俺の開発した【天上式】セイクリッド・フレイムでも、そんなバカげた火力は出せない。大戦乱の時期には、今より高度な魔術が乱発されていたそうだ。
だからこそ、魔術師は弾圧されるのだ。
思想が相容れないからとかではない。教会にとって、魔術は大戦乱で使用された最悪の破壊方法だから取り締まるのだ。
「で? なぜそんな場所を通る? アルド帝国に入国してしまった方が、ルーラオムへは安全にたどり着けるぞ?」
「そこにエレノアを捨て置きます」
「ほう。大きく出たな」
「エステラで化け物に食い殺されたことにでもすればいいでしょう。エレノア・レッドフォードは、俺のスキルで焼いても生き返りました。おそらく、並みの方法では殺せない。だから封印します。あそこで」
「そううまくいくとは思えんがな」
テオンヴィルは意外にも慎重な姿勢だ。
「復活の可能性があると?」
「いや、死ぬのに時間がかかれば復活はしないだろう。その間はな。問題は、彼女のスキルが何なのかということだ」
エレノアのスキルには確かに謎が多い。そもそも、スキルかどうかも分からない。体質として不死身なのであれば、他にスキルを持っている可能性はある。
「復活の能力以外に、何かスキルを隠し持っていると?」
「その可能性は十分にある。まぁ、一度試せば分かるだろう」
「いっそ、あなたに食い殺してほしいのですが」
「嫌だよ。復活して内側から腹を切り裂かれたらどうしてくれる?」
「ですよね」
俺は転移術式を構築し、ちょうど砂漠のど真ん中に落ちるよう軌道を調整して、エレノアを打ち上げた。
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