第20話 巨竜調伏
「同僚が気絶させられたというのに、随分と落ち着いているな?」
テオンヴィルはそんなことを指摘してくる。狼狽える真似でもすればよかったか? だが神の敵たる大罪人の前で、そんな演技は不要だろう。
「まぁ、さして慌てる事態でもないと思いまして」
「ようやく貴様と腹を割って話せるな」
「そうですね。このエステラの住人が犯した罪とは、一体何なのです?」
「そんなことより訊きたいことがあるだろう? 魔術王パルマコン?」
テオンヴィルは衝撃的な言葉を発した。エレノアの意識を飛ばしたのはそのためか。
「なぜそのことを?」
「知る方法ならいくらでもある。特に、世界の真実に近づいた私のような存在にはな」
「世界の真実とやらが、神に反逆した理由に関係しているのですか?」
「そうかもな」
テオンヴィルは唸り声を上げる。笑っているようだ。もったいつけられているようで不快だな。
「実際のところどうなんです?」
「古い箴言がある。【エアの怒りを買えば、生きてはいけない。ガイアの怒りを買えば、死ぬことすらできない】とな」
死ぬことすらできない? どういうことだ? いや、テオンヴィルの姿を見れば意味は明白か。獣の姿に落とされ、永遠の時を日陰の中で生きなければならないということだろう。
「あなたが反逆した神は、エアではなくガイアだと?」
「正確には両方だ。太陽神エアに豊穣神ガイア。二柱の神に仇なし、私はこのような罰を受けた」
「どんな歯向かい方をしたのです? さっきからそれを訊いているのですが?」
「それは今言うべきではない。私を聖地ルーラオムへ連れて行け。そうすればすべてが分かる」
なかなか真実を話そうとしないな。とはいえ、この巨獣を相手に力ずくで口を割らせるなど不可能。付き合ってやるしかないか。
「分かった。俺は太陽神エアの寵愛を受けている。多少の無理なら通せる。とはいえ、教会の司教が大罪人を連れ歩くわけにもいかないのでな。身は隠してもらうぞ?」
太陽神エアの目を欺くことは容易い。影の中にしか住めないのなら、影を作り出してその中に住まわせればいいだろう。それもこれも、【神の衣】が太陽光線を操って敵を焼くスキルだからこそできる芸当だからだ。
かくして、俺はエレノアを抱え、エステラの外へ踏み出した。【神の衣】で太陽光線をねじ曲げ、常時影ができるようにした。
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