軽く深く嫌ってる

 清佳は壁側のソファに腰かけた。

 その後に光は、向かいのソファに腰かけた。

 ソファにはまだ横に広がりがあるが、光が腰かけたのは清佳の真正面だ。光とテディベア。二対の目が、清佳をソファに縫い止めるように見つめてくる。

 リビングから出ていくには、この目から逃れて、彼らの横を通らなければならない。

 それを、良かったと思った。

 何を言われても、自分が先に立ち上がることはないようにしようと決めていた。リビングから立ち去りにくいのは、むしろありがたい。


「んで、話って何? もしかしてー……愛の告白?」


 意地悪そうに歪んだ口元から、ちらっと白い歯がのぞいた。

 先日、ムラサキは光について、酷く落ち込んでいると言っていたような覚えがあるが、全くその気配はない。

 ただ、落ち込んでいることを認めようとしないとも、ムラサキは言っていた。それを信じるなら、この態度は強がりだ。

 どちらにしても、自分が言うことに変わりはないと気を取り直し、真面目に返した。


「話の前に、確認させてください。伯母を脅迫したのも、私を拉致したのも、光さんと小野寺先輩で間違いないですか?」

「まあね」


 光には驚く様子もなかった。


「……そんな簡単に認めるとは、思いませんでした」

「紫純が言ってたんでしょ? じゃあいいよ。そうじゃなくても、本気で探されれば証拠なんか大量に見つかるし。今更、その場しのぎのごまかしで時間を稼いだところで、俺らには隠蔽する手段はない」


 手のひらを清佳に向けて、何も持っていないことを示すように、指を曲げのばしする。お手上げのポーズにも見える。

 その仕草を見ながら考える。

 考えながらグラスを傾けて、唇を湿らせる程度に麦茶を飲んだ。


「その場しのぎがどうこうって言うより、ムラサキさんに知られたからどうでもいいって気持ちの方が、強そうに見えます」

「……だから何?」


 清佳が去った後のプラントポットで、光と小野寺が、他三人との関係をどうしていくつもりかは、今日予定していた話の内容に大きく関わってくる問題だった。

 清佳としては、今まで通りを目指していてほしい。だが、不安があった。


「ムラサキさんに知られたくなかったのなら、どうして、バレないようにやらなかったのかが、ずっと気になってたんです。直接暴力で脅すなんてハイリスクだし、それにあの時、私の首を絞めたのが誰なのかは知りませんけど、誰にせよ、私に口止めすらしなかった。何でだろう、と思って」

「それは逆ってだけ」

「逆?」

「俺らの目的は、大嫌いなサヤちゃんを、痛い目に遭わせることだった」


 麦茶を少し、膝にこぼした。

 光の笑みに苛立ちがにじむ。一瞬の沈黙の後、付け加えられた。


「……は、さすがに言い過ぎかねぇ。まあ少なくとも、ここから追い出すことと同じくらいの重要事項ではあった。サヤちゃんを直接暴力で脅すことは、計画に欠かせない要素だった」


 グラスをテーブルに置く。祭の夜には焼きそばやら盗聴器やらが積まれていたミニテーブル。今は当然、何の痕跡もない。

 ティッシュ箱が見当たらなかったので、持っていたポケットティッシュで膝を拭いた。

 麦茶は拭き取れるが、投げかけられた言葉はじわじわとしみる。

 嫌そうにしながら光は続ける。清佳の反応を気にしない、一方的な話しぶりだった。


「その上で、あれは、単なる失敗だけど。怪しまれるのが思ったより早かったし、サヤちゃんが余計なこと言うから、土壇場で怖気づいちゃったんだよね~。適当なところでサヤちゃんのスマホから彼氏と会ったとかって連絡入れて、せめて夜の間くらいは、監禁しておく予定だったんだけど」

「彼氏はいませんが……」

「だろうね」


 ムラサキの言葉を引くまでもなく、拉致された時点で、好かれていないことは明白だった。自分も「気持ち悪い」などと言った。盗聴をしていた。嫌われるようなことをしていた。驚くことではない。

 頭ではそう考えられるのに、感情が思い通りにならない。

 深呼吸して、声だけでも整える。


「だとしても、あの夜じゃなくて良かったんじゃないですか? 夏休み中なら、普通の日の方がバレにくかったのでは」

「そう? そこはまあ考え方だろうな。サヤちゃんを誰にも知られずに、目当ての場所まで誘い出す方法、拉致するのに都合のいい場所、人目を完全に排除する方法。その辺を考えたら、人目を避けるより、人の壁で視線を遮った方がいいんじゃないかって話になった」

「人の壁? じゃ、じゃあ、あの時周囲にいたのって……」


 おぼろげに、夏祭りの風景を思い出す。


「あれだけ協力者を集めるには、祭ってのはちょうど良かったしな。みんな、ついでに、手伝ってくれた」

「人を拉致する手伝いが、ついで?」

「さすがに全員に本当のことは言ってねえよ。鬱陶しい奴がいるから、迷子にして困らせたい、くらい」

「それで手伝う人も、どうかと思いますが……」


 しかも少なからず、拉致と知っていて手伝った人間もいる。タイミング的に、清佳を気絶させた人間は、光でも小野寺でもない。さらう時に壁になった人間も、きっと知っていただろう。


「どうしてそんな人と知り合いなんですか……」

「知りたい? なれそめ」


 興味はあるが、わき道にそれてしまう。


「すみません、大丈夫です。今日は他に話すことがあります」

「やっと本題入る気になった?」


 待ちくたびれた、と続かないのが不思議なくらいに、表情がうとましさを伝えてくる。

 嫌いな相手と話すのは疲れる、と思われていそうな顔だ。

 だが、そう思われていても清佳は、話さなければならない。

 正しい選択かは分からない。自分のすることは全て間違いではないかとも思う。それでも、頼まなければならない。

 自分が本当に大切にしたいものを自覚したから。


「私、みんなに謝罪をすることにしました。自分のしたこと全てを。ですがその前に、光さんと小野寺先輩と、和解をする必要がある、と考えています。より正確に言えば、最低でも、和解したという口裏合わせをする必要があると」


 光の表情は面白そうでもないが、席を立つ様子もなかった。


「私が謝罪した時――こいつが謝ったのだから、光さんと小野寺先輩も謝るべきだという流れに、ならないように」


 クーラーの音が耳についた。


「……思い上がりじゃない? 盗聴犯を反省させた、光さんよくやった、ってなるかもしれねえよ?」


 笑ってはいるが、声は酷く冷たい。

 正直に言えば、怖い。光の言う通りかもしれない。

 だが、その可能性を認めるのは、彼らの優しさを信じないことと同じだ。


「もし、そういう人たちだったら、気が楽だったでしょうね」


 恐らく、長く一緒にいた光の方が、よく知っているだろう。


「私は、私が謝ったら、次は二人に矛先が向くと考えています。ですがそれは一旦置いておきませんか。ここで話しても、結論は出ません」

「ま、そーね。じゃあ答えの出る質問。何でその流れを避けたいの? むしろ気持ちいいんじゃない、サヤちゃんにしてみたら。紫純も敬司も祐希も味方にできて、みんなが羨むお姫さまみたいでさ」

「嫌だからです。お願いしたいくらい、嫌なんです」


 二人のことを本当に考えるなら、何の咎めもなく許すことは正しくないのだろうが、嫌だった。


「無理に謝らせるのも、二人が謝罪を拒絶して、他の三人との間に亀裂が入るのも。……私は出ていきますが、だからって、みんなの暮らしがどうなってもいいとは思わないんです。むしろ、できる限り以前と同じように、暮らしていってほしいと思っています」


 自分の日常が失われるのと同じくらい、誰かの日常を奪うのも怖い。

 何でもない日々が延々と続くことの幸福さと、日常を失った時の絶望と、再び与えられた時の喜びと、それを自分の手で奪ってしまった時の虚しさを、知っている。

 道連れにしたくない。清佳が出ていった後に、このことでわだかまりを残してほしくない。


「それと、あと……」


 言う前に、自分の気持ちを確かめる。

 あの夜に起きたことについて、何度も考えた。気持ちは変わらなかった。

 こうして光とあらためて向き合った今も、やはり同じことを思う。


「私が言うのも何だけど、あれはとても納得のいく罰でした。少しだけ、自分の罪を償えたような錯覚がありました」


 死にたいという思いが和らいだ。

 彼らにはそんなつもりはなかったとしても、清佳は少し救われた。

 全ての暴力に正当性など存在しないことは分かっているが、それでも、正しいと思ってしまった。

 無意識に、首に指をのばしていた。指先の冷たさで気がつく。

 手足や首についた紐の痕はかなり薄くなり、押すと少し痛むくらいになった。相変わらず誘拐や、背後に立たれることに関しては恐怖を覚えるし、悪夢を見ることはあるが、それも少しずつ薄れていっている。


「そもそも私は、謝ってほしいとは思ってないんです。むしろ感謝してます。だから……そういう理由です。もしかすると、光さんと小野寺先輩には、あの程度では、足りなかったかもしれないけど」

「……」

「これ、できたら他言無用でお願いしますね。誰かに言ったところで、じゃあ謝罪しなくていいってことにはならないでしょうし」


 特に咲坂は、ただ清佳が構わないと言うだけでは納得しないだろう。紐で縛られている姿を直接見てしまったせいでショックを受けていたし、見かけや言動によらず、優しいところがある。

 「思い上がりじゃない?」とついさっき聞いたばかりの光の声が、脳内で再生される。

 振り払う。


「光さんだから言ってる、みたいなところもあるので。それで、他に何かありますか。質問でも、何でも。もし和解に条件があるのであれば、できることに限りはありますが、極力引き受けます」

「おい、今の」

「はい?」

「俺だから言ってる、って何?」


 光に対してため息をついているのだと思われたくなくて、深呼吸のように、長めに息を吐いた。

 何となく口にしてから、言うべきではなかった、と思った。ごまかそうと咄嗟に、早口に次の話題に移ろうとしたが、恐らく、かえって怪しくなっていた。

 どう答えたものかと少し考える。

 嘘はもう、なるべくつきたくない。

 きっと、呆れられるか、余計に嫌われるだけだと踏む。


「……すみません。光さんなら、私が卑屈なこと言っても、否定も慰めもしないで聞いてくれるだろうなと思って」


 光の眉間にはしわが寄っていた。

 厳しい視線に気圧される。

 だが、先に目をそらしたのは光だった。

 気まずそうに横にそれていった。

 呆れでも嫌悪でもないことは、明らかだった。


「なーんだ、そんなこと。それはまあ、そうだろうね。それを否定するのは、優しい奴か、サヤちゃんがかわいい奴だ」


 光の顔にはすぐ笑顔が戻った。形だけ見れば以前と変わらない。良く言えば親しげ、悪く言えば馴れ馴れしい、先輩の顔をしている。


「和解の話だけど、いいよ。ふりならしてもいい」


 いかにもどうでもよさそうな言い方だった。


「秀人には俺から言っておく。返事あったら連絡するよ。秀人もいいって言うはずだから、大船に乗ったつもりで待ってて。……で、今日のお話は終わり、でいい?」

「あ、いや」

「まだ何かあるの? いいよ、聞くよ~。何でもいくらでも」

「えぇと……」


 ムラサキに「買いかぶらないでやってくれ」と言われた時には、うなずきはしたが、あまり理解できていなかった。

 今は少し分かる気がする。光の態度のどれもが、どことなく憐れに見える。光には怒られそうだが、そう見えてしまう。

 繊細で、純粋。

 可笑しいような、泣きたいような、奇妙な気分だった。


「じゃあ言いますけど、私のこと嫌いって言ったくせに、私の言葉で落ち込まないでくださいよ。光さんは優しくないなんて、私思ってませんし」


 これだけでは伝わらないような気がして、言い連ねた。


「何なら、私は、光さんの優しさをあてにしてました。恥ずかしながら。光さんなら否定しないっていうのは、無関心だから卑屈さを放っておいてくれる、ってことじゃなくて。光さんなら、慰められたり励まされたくない……卑屈でいたい気持ちを分かってくれると思った、ってことです。誤解しないでください」


 一息ついて、麦茶に手をのばした。緊張のせいか喉が乾いた。

 グラスは空になった。

 光は何も言わない。面白くは思っていなさそうな顔をしている。

 今日は、光より先に立ち上がらないと決めた。向けられたものは、全てきちんと受け止めると決めた。

 ぼんやりとグラスを撫でる。そのうちに、話しておきたいことを思いついた。


「そう言えば、今日、光さんにはもう一つ謝ろうと思っていたんですが――前に気持ち悪いって言ったの、すみませんでした。光さんを罵っていい訳ではなかったです。本当に、すみません」


 頭を下げながら、もしかすると、自分が無神経に素通りしてしまっていただけで、他にも機嫌を損ねることがあったのかもしれない、と思う。

 光のみならず、小野寺にも痛めつけたいと思われる程に嫌われているのなら、むしろ何かがあると思うべきだろう。

 その何かには、清佳の非はないかもしれない。一方的で曖昧で理不尽な理由かもしれない。

 だが、たとえそうだったとしても、謝らなければならないような気がする。

 誰かを嫌うのは苦しく、とても恐ろしいことだ。自分も相手もいつ死んで、いつ後悔を背負うことになるのか、分からないのだから。

 自分の存在がそうさせていることが申し訳なかった。

 嫌われていること自体よりも、その方が辛いことに気がついた。


「盗聴も、騙し続けていたことも。他にも何か、私のことで気に障ることがあったなら、それも。正直に言えば、思い当たることはないのですが……思い当たらないという点も込みで、すみません」

「もういい」


 包丁を振り下ろすような声。


「謝るんじゃねえよ。余計に惨めになる」


 だが、その刃は、光自身に向けられていた。


「まさにそういうところだよ。檜原清佳。自分が不当な扱いをされていたら怒れて、自分が悪いと思ったら謝れる。悪いと思っていなくても、必要だと思ったら謝れる。その健やかさと言うか、真っ当さと言うか、いい子ちゃんって感じが……」


 その悪態にはどことなく、身に覚えがあった。

 無自覚に、当たり前のように得ている幸運へのひがみ。それを得られない自分自身への憐れみと、周囲への甘え。自分自身ですら憐んでしまうような現在への悔しさ。

 両親がいることを羨んだあの時の自分は、今の光と同じ顔をしていただろう。

 咲坂と祐希は、今の自分と同じ気持ちで聞いていたのだろうか。

 それにしても、自分は真っ当ではないだろうと思った矢先、光は言った。


「嫌いだった。――あの夜、君が「殺していい」とか言うまでは」


 意表をつかれて、思考が止まった。

 言ったっけ、とまず思った。記憶がなかった。

 だが、光がそう言うのなら、言ったのだろう。

 祭の夜、拉致されて連れ込まれたアパートで「殺していい」と、自分は言ったのだろう。

 そして、それを聞いた光は――清佳を真っ当ではないと思った。

 ひがむような、幸せな人間ではないと知った。

 憐れんだ。


「さっき「土壇場で怖気づいた」って言ってたのは」

「秀人の方の事情もあるし、止めた理由はこれだけじゃないから」

「あ、はい」

「……まあ、でも」


 何か言いかけたようだったが、光は結局、それは言わずに。


「……ごめん」


 謝った。

 清佳は、何と思えばいいのかも分からない。


「……光さん」

「あー見るな見るな」


 テディベアが光の顔を隠した。

 つぶらな瞳と向き合わされる。

 さすがに少し気が抜けて、ソファの背もたれに沈み込んだ。

 テディベアと見つめ合いながら、光の感情と、そしてそれを受けた自分の感情を、思う。考えずに漂わせる。

 そのかたわらで、ほとんど思考を介さずにぼやいた。


「他人ばかりが、目につきますね。親がいるとか真っ当とか、良くも悪くも」

「その言い方はずるいでしょ」


 テディベアの後ろから、人をずるさで責めないでほしい。繊細で純粋な割に、面の皮が厚い。


「じゃあ、何て言えばいいんですか?」

「自分から目をそらしている」

「……まあ、確かにその方が正しいですけど」


 自分のことを棚上げしていないかと、思わず疑惑の目を向ける。

 テディベアの後ろからでは清佳の目は見えないはずだが、光は自分から言った。


「君が本当にあいつらを見てたなら、両親がいて羨ましいなんて思えないし。俺が本当に君を見ていたなら、君は別に真っ当ではないことくらい、どこかで気がついていた。君も俺も、自分から目をそらしているだけ」

「分かってますってば」


 ため息をついたら、光のため息と重なった。清佳を傷つけつつ、自分も傷つけていたらしい。自分を傷つけるついでに清佳も傷つけていたの順序かも知れないが、どちらでも同じだ。

 憐れを通り越して呆れる。

 自分も情けないと思っていたが、この先輩の方がずっと情けない気がしてきた。

 あまりにも情けなくて、かえって安心する。

 だめな子は、自分一人ではない。

 本当にろくでもないとは思うが、清佳には光を責められない。

 ついでに言えば、嫌われていても、苦手ではあっても、清佳にはこの先輩を嫌いにもなれない。

 幼い頃から両親がいなかった彼と、最近失った自分。他にも様々な部分が異なる。苦労や楽な点にも大きく違いはあるだろう。

 だが、光の境遇を知った時に、清佳が安らぎを感じたことは確かだ。同病相憐れんでいるだけで、良い関係性ではないのだろうが。

 若干だらけた体勢のまま、光に告げた。


「光さん」

「何でしょーか」

「さっき言った通り、謝らないでほしいくらい謝らなくて良かったので、いいんですけど」

「……。けど?」

「一方的に、勝手に、光さんに同族意識を感じるくらいのことは、許してくれるといいなぁと思います」


 少しの沈黙の後、テディベアは両手を挙げさせられた。


「それはお手上げですか、万歳ですか。それとも、びっくり、ですか」

「いや、ハグ」

「きっ……」


 かろうじて言い切らずに留めたが、テディベアの背後では軽い笑い声が上がった。


「俺もいいんだけど。一人だけ扱いが悪かろうが、気持ち悪いと言われようが、盗聴されようが。多少腹が立っていたとしても、さすがにもう、俺にああだこうだ言う資格はないし」

「……はい」

「まあでも、泣かす程じゃなかったってだけで、今も別に好きではないってことは、覚えておいてくれると嬉しいかな~」

「あぁ……なるほど」


 それはそうかと納得しながらも、問いかけてしまった。


「それで光さんは、苦しくはないですか」

「……何その質問?」


 テディベアが膝に下ろされた。後ろに隠れやがってと思っていたが、あらためて見つめられると、それはそれで居心地が悪い。


「人を嫌うのは、怖いじゃないですか」

「……いや? 別に?」

「あ、そうですか。まあ私はそうで。じきに出ていく予定ではありますけど……せめてそれまで、私に何かできることがあったら、しようかなぁって。目に入らないようにするとか」

「ないよ何にも」

「……はい。じゃあ、覚えておきます」

「と言うか、サヤちゃん……」


 不意に、光は立ち上がった。


「な、何ですか」

「コーヒーいれてきていい?」

「……どうぞ」


 なし崩しに小休憩を入れることになった。



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