第46話 戦いの終わり


「んん……」


「あ、起きました! 痛いところはありませんか!?」


「え、ホリィ……? なんで、ここに……」


 戦いに破れ気絶していたアリアはホリィの神聖術により癒やされとうとう気を取り戻した。


「私、魔王に負けて――ガスキンッ!」


 アリアはガバッと起き上がりガスキンを目で探す。そして魔王をマルスと知らない女の子が身動きを封じて話し合っている想像だにしなかった光景に丸くする。そしてその奥――ガスキンの死体を見てアリアは絶叫した。


「いやぁあーーーーーっ! ガスキーーーーーン!」


「っ!? アリア! 気がついたのか!」


「セイントブラスター!」


「!?」


 アリアが魔王へと放った聖属性のの光線魔法を俺はゼノンロードで天井へと弾き返した。


 天井に大穴が空き王城が揺らぐ。まずい。このままでは王城が崩壊する。アリアを止めないと。


「やめろアリア! 戦いは終わった! もう戦わなくていいんだ。憎まなくていいんだ!」


「なんで私を邪魔するのよマルス! あなたも敵なの!? 敵なのね!? ならばもろともぶち殺して――」


「ごめんなさいアリア。記憶の追想(ダウジングメモリーズ)!」


「お゛っ!?」


 ホリィがアリアの後ろからダウジングメモリーズを発動する。アリアは白目を剥きえげつない声を出した。大丈夫なのかあれ。


 3秒ほど痙攣した後、アリアは膝から地面に崩れ落ちた。ピクピクと痙攣し口の端から涎を垂らして「お゛お゛お゛」とうめき声を漏らしている。ちょっと怖い。


 ホリィが今アリアに起こっていることを説明してくれる。


「神とか使徒とか今ここであったこととかの記憶をとにかく全部無理やりぶち込みました。記憶を送るだけなら許可を得ずに行えるので。副作用で一時的に脳が混乱することになるのですが、やむを得ませんでした」 


「ひ、久しぶりに見たけどやっぱりえげつないな……」


「あとは正気に戻ったあとアリアがどんな行動に出るかですが……それはもう、アリアを信じるしかありませんね。ひとまずは王城から脱出しましょう。地面が揺れてますし」


「そうだな。転移ゲート発動」


 俺は転移ゲートを出現させた。俺は魔王とガスキンの死体をかついで、ホリィとフィルレインはアリアは担いで転移ゲートを通る。


 孤児院跡地に俺たちは転移を完了した。


 遠くの方で地鳴りと崩壊音が聴こえる。グリモワール王城が崩壊する音。その音はまるで今までの歴史と運命が崩壊する音のようだった。


 この日、俺たちの戦いは終わった。


 血を流し待ち臨んだ平和へと、少々思いがけない結末ながらもついに辿り着いたのだった。




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