第25話 魔都動乱


 それから一週間の時が経った。

 冒険者ランクは順調に上がり、俺とホリィの個人ランクは共にD。そして暁の剣のランクもDにまで上がっていた。


 まぁ、俺もホリィもSランクパーティに所属していた元Sランク冒険者だからな。Dランクくらいなら受けられる中で最も難しい依頼のみを受け続ければ簡単に上がれる。あまりランクが低すぎても不自由なので、最低でもCランクくらいには上げておこうと相談した結果決まった。なのでこの一週間はランク上げに奔走していた。そしてその甲斐はあったと言う訳だ。




「あ、協会。寄ってきませんか?」


 いつものようにクエスト帰りに町中をホリィと散歩していると、ホリィが協会に入りたがった。


「ラヴィアン教正教会第13支部、か」


 ラヴィアン教はアヴァロン公国でもっとも信者数の多い宗教だ。だが、歴史ある宗教と言う訳ではなく、宗教が出来たのはつい数十年前のことらしい。そのような宗教が他の宗教を追いやり国のメイン宗教までのし上がるというのは歴史上極めて異例なことらしい。


 ……サフィラ教と全く同じ成り立ちなんだが、不穏なものを感じるのは俺の考え過ぎだろうか。


「宗教って興味ないんだよな。糞神を祀って何が楽しいんだ」


「協会の中を見てるだけでも楽しくないですか? 建物の造りや信者の服装や規範となる戒律にどのような宗教的意味が込められているのか想像するだけでもワクワクしてきませんか?」


「……寄るだけだぞ。入会なんかしないからな」


「はい!」


 パタパタとおもちゃ屋に急ぐ子供のような足音を立てて協会に駆け込むホリィ。俺もそのあとをついていく。本当に何が楽しいのか全く分からないが、幸せそうなホリィを見ていると俺も幸せになるので、それだけでも協会に寄る価値はあるなと思った。




「あ、ようこそ。入信ご希望の方ですか? お勧めですよ」


 教会に入るやいなや受付の女性が聖書を手に入信を勧めてきた。俺が何かいうより前にホリィが応対した。


「いえ、今日は見学に来ました。以前からラヴィアン教の活動には興味がありまして、偶然建物の側を通りかかったものですからこれもお導きかなと思い寄らせていただきました」


「それは間違いなくラヴィアン神のお導きですよ。新たな信徒の誕生の予感がします。よろしければこの聖書を差し上げましょう。読んでください」


「はい! 是非!」


 ぐいぐいくるなこの人。そして貰うのかよホリィ。


「あ、あの、教会の中を見て回ってもいいですか? 私、気になって気になって」


「勿論です。そちらの彼氏さんもどうぞ。ごゆっくり見学なさってください。あ、ただ、地下の儀礼室にだけは踏み要らないでくださいね。まぁ警備員もいるので余計な忠告でしょうが」


「ん? ああ」


「か、彼氏……やっぱりそう見えるんですねぇ。えへへ」


「行こうか、ホリィ」


「はい!」


 俺の腕をガシッと抱いて、ルンルンと鼻唄を口ずさみながら見学を始めるホリィ。地下の儀礼室とやら以外の場所を一通り見て回ったあと教会内の談話室で俺達は椅子に腰を下ろし足を休めていた。


「凄いですねぇ。お金かかってますよこの協会。ラヴィアン神の像あったじゃないですか。あれ表面だけ金箔をまぶした廉価品じゃなく全身純金で出来てましたよ。集金が上手く行ってるんですね」


「宗教って、質素倹約を宗とするんじゃないのか?」


「甘いですね。金がなけりゃ宗教団体なんて維持できませんよ。金がそのまま勢力の大きさに直結します。だからとにくお金を稼がないと」


「ホリィがそんなこと言うなんて意外だ――いや、元から金に関してはシビアだったな」


「あ、あはは。貧乏性をこじらせちゃって……それに、神よりはお金の方が信用できますから」


「え?」


 え?


「綺麗事を言っても組織である以上所詮教会も権力構造からは逃れられない。利権にたかる油バエが信者を餌にする醜い争いを繰り広げて、それを見ても神は何もしてくれない。どんなに祈っても何一つ見返りを与えてくれない――そんな無能な神をいつまでも信仰できる訳ないじゃないですか。マルス、私はもうこれっぽっちも神様なんて信じてないんですよ」


「……薄々そんな気はしてたがな。にしてはやけに教会の中を楽しそうに見て回ってたじゃないか」


「それはそれですよ。教典の内容や施設の使われ方やグッズのバリエーションから人々の考えや想いを読み取って、考察したり共感するのは楽しいんですよ。元教会関係者だから深いところまで読み取れますから」


「なるほど。分からなくはない。俺も買いもしない武器屋の商品の物色を楽しんだりするからな」 


「そう! まさにそういうことです!」


「そういうことか」


 なるほど。完全に理解したわ。


「ただ、教会を見て回る楽しみというのは俺には金輪際味わえそうにない。正直つまらなかった」


「あ、あはは。殆どの人は私に付き合って教会を見学したあとそう言いますね。マルスならもしかしたらと思ったんですが……」


「これっぽっちも面白くなかった。いや、つまらなかった。だからずっと教会じゃなくホリィを見ていたよ。嫌いなものより好きなものを見てるほうが楽しいからな」


「す、好き……え、えへへ……」


 ふにゃあ、と相貌をだらしなく崩して破顔するホリィ。なんだその表情。可愛過ぎるんだが。


「……そういえば、この聖書。少し気になることが」


 手元の聖書をポンボンと叩いてホリィが呟く。


「気になること?」


「このラヴィアン教の教え、サフィラ教と非常に似ているんです。というか、エピソードや文章が違うだけで、ほぼ同一と言っても過言ではありません。サフィラ教をパクって作ったエセ宗教の可能性が高いです。けど、もしもですよ。サフィラ教と同じ目的で作られた宗教だとしたら……」


「……危険だな。悪の気配がする。調査をし――」


 その時、地面が大きく揺れ、巨大な魔力波が世界を駆け抜けた。




「今の魔力反応――下だ! 教会の下から吹き上がってきた! 行くぞ!」


「はいっ!」


 俺とホリィは教会の地下――受付の信者に踏み入るなと言われた儀礼室へと向かう。儀礼室に続く階段の手前までは来た俺達はそこでありえない光景を目撃した。


「あ、あががが、痛い、痛いよおおおおおおおおおお!」


「グギャッ! ギャギャギャギャ!」


 階段を守るはずの警備員が、巨大な豚の魔物――オークに生きたまま食われていた。腰を巨大な手で鷲掴みにされて、右腕が根本からちぎれている。千切れた右腕はオークの口の中。ボリボリと骨を噛み砕く音が酷く耳障りだった。


「だから死ねぇ!」


「ブギャアッ!?」


 俺は魔剣アベルでオークの頭を耳から耳へと切り裂いた。輪切りになって吹っ飛んだオークの頭部の上半分が天井に激突し、べちゃぁ、と盛大に血を擦り付けてから床に転がり落ちた。


「クレッセントヒール!」


 俺がオークを殺している間に警備員に駆け寄ったホリィが最上級治癒魔法を発動する。

 警備員の失われた右腕がドュルン!と付け根から生える。驚異の即効性と効能。セイントヒールに比べたら私なんて……としょっちゅうぼやいているホリィだが、聖剣や聖杖なしにそれに準じる治癒魔法を使えるお前も大概チートだよ……。魔王討伐隊に選ばれた人類最高峰の聖術の使い手なだけはある。


「な……魔物に食われた私の腕が一瞬で!? しかも、ジェネラルオークをたった一太刀で屠るとは! あなたたちはもしや私を救うために神が遣わした天からの遣いですか?」


 ジェネラルオーク……? よくいる雑魚オークだったが。いや、民間人から見たら普通のオークでも充分に恐ろしいからな。知識だけでオークを大したことのない魔物と判断していざ見たらびびって過大評価をしてしまったってパターンだろう。余程恐ろしかったんだろうな。


「もう大丈夫だ。雑魚オークは俺が殺した。あと俺たちはただの通りすがりの冒険者だ」


「いや、どう考えてもただのって形容詞で足るレベルの冒険者では」


「ただの冒険者だ」


「いや、でも」


「おっと。どうやらお喋りをしてる暇はないようだぜ。増援のお出ましだ」


「ひっ!」


 地下室からぞろぞろと魔物の群れが階段を上がってくる。俺は群れることしか能のない雑魚共を全員ぶち殺してホリィと共に地下室へと踏み入った。


「これは……転移魔法陣か」


「かなり巧緻な魔法陣ですよこれ。少なくとも、1日2日で構築出来る代物ではありません。これを正確に描くとしたら1ヶ月はかかるのではないでしょうか!」


「そんなにか。長期的な計画のもと作られた魔法陣ってことだな。おっと、パワーオブプロヴィデンス」


 魔法陣が発光する。転移の前兆。俺は魔物が新たに転移されて来る前に魔剣アベルの能力で魔法陣を破壊した。そこそこ手応えがあった。どうやら相当な実力者によって構築された魔法陣のようだ。ただ、この魔力反応に似た魔力を最近どこかで感じたような……いや、今はそんなことはどうでもいい。


「……あの大規模な魔力波は同時に幾つもの地点から発生したように感じました。もしかしたら、他の教会にも同様の転移魔法陣があるのではないでしょうか」


「ああ。俺もその可能性を考えてた。おい、警備員。この儀礼室とやらは他の教会にも存在するのか」


 階段の上からこちらの様子を伺っていた警備員に尋ねる。


「は、はい! どこのラヴィアン教会にも必ず儀礼室は存在します!」


「ちっ! 最悪だな。急ぐぞホリィ! 全ての転移魔法陣を潰して回る!」


「はい!」


 俺達は教会を飛び出した。




「うわああああああああ魔物だああああああああ!」


「ぎゃあああああああああああ!」


「糞っ! 数が多すぎる……」


「誰か助けてえええええええええええ!」


「……地獄だな」


「ええ……」


 俺達が即効で転移魔法陣を潰したラヴィアン教会第13支部の周辺は何事もなかったが、他の教会に近づくにつれて、人々の悲鳴と、魔物の怒号が増えてゆく。完全にモンスターパニックだ。冒険者や騎士や衛兵が戦っているが、とにかく魔物の数が多い。その場その場の対処で精一杯で元凶の解決なんて考える余裕すらないって感じだ。だが、幸い転移魔法陣の構造上一度に出てくる魔物の量に限りがあるお陰で、防衛線が崩れることなく対処は出来ている。


「マルス。私達は転移魔法陣の破壊に注力しましょう! 今、その役目を担えるのは私達だけです!」


「ああ! 迅速に無効化するぞ!」


 辿り着いたラヴィアン教会第12支部の扉を蹴り上げながら俺は同意した。



 第12支部を片付けてからは俺一人で街を走り回った。理由は単純明快。そちらの方が圧倒的に速いからだ。第12支部の魔法陣を破壊したあとホリィに指摘された。中々気まずい沈黙だった。


 聖剣の力は発動しなかった。どうやら魔王軍が関わっているらしい。だから俺はインベントリから迅雷魔剣レヴィンを取り出し装備した。

 迅雷魔剣レヴィンの効果はシンプル。すなわち――滅茶苦茶早く動ける。

 無論デメリットも存在する。早くなるのは体だけで思考速度はそのまんまなのだ。つまり下手にレヴィンを装備して走ると、文字通り壁の染みになる。それも、血の染みだ。


 俺も使いこなすまでには時間がかかった。最終的に超集中のスキルを獲得するに至り、何とか制御化に置くことができた。一見メリットしかないように見えてもやはり魔剣。ぶっちゃけ数ある魔剣の中でもトップクラスに危険な剣だ。俺も訓練中に何度死にかけたか分からない。というかホリィが回復魔法の用意をして常時スタンバってくれてなければ100%死んでいた。


「ここで最後か」


 俺は迅雷剣レヴィンをインベントリに戻し魔剣アベルを腰の鞘から抜く。アベルは俺にとって特別で一番使用頻度の高い剣だから鞘に収めて常に抜剣出来る状態にしている。聖剣? あんなの強力だから使ってるだけで憎しみしかありませんが?


「アベルゥ……お前が俺の一番だぜェ……」


 剣身に舌を這わせながら俺はラヴィアン教会本部へと足を踏み入れる。


「禍々しい気配が地下の方から漂ってくるな。臭い臭い。神聖なる教会にあるべきじゃないぜこんな邪悪な魔力は。俺が滅してやる」


 俺は肩を震わしながらずんずんと儀礼室へと向かう。無論、怒りに肩を震わしているのだ。断じて喜悦に震えているわけではない。


 寄ってくるモンスターどもを全て一撃のもとに切伏せ死体の山を築きながら俺は儀礼室の前へとやってきた。扉は既に壊れている。モンスターがぶっ壊したんだろう。

 堂々と儀礼室に足を踏み入れる。枯れ枝のような体躯のちっちゃな老人が魔法陣の前でぶつぶつと何事かを呟いていた。切りたい背中。衝動のままに俺は老人の背中を斬りつけた。どうせ、こんな禍々しい魔力を放つ人間が善性の人間の訳がない。抵抗できなくしてから話を聞けばいい。


「がぁああああああああああああ! はっ! な、何者だ貴様! 儀式中に人に入られないようにこの周辺には特に強力な魔物を配置して人払いもしておいた! それに嗅ぎつけられるにしても早過ぎる! 貴様、一体何者だ!」


「なるほど。貴様が元凶か。遠慮はいらなそうだ。全て吐くまで切り続けてやろう――こいつでな」


 俺はインベントリから新たな剣――劇毒剣ヴァルゴを取り出す。剣身かw紫色の泡と煙をブクブクと吐き出すヴァルゴを見て老人の顔が恐怖に歪む。


「ま、まさかそれは劇毒剣ヴァルゴ! 巨人さえ1滴で殺す程強力な毒から、死なないが死ぬより痛い苦痛のみを与える毒まで自在に毒を操る魔剣! なぜ、こんなところに――!」


「なんだ。ヴァルゴを知ってるのか。博識だな。じゃあ今から俺がどんな毒を調合するか当ててみろ。当てたら、殺してやるよ」


「ほ、本当か!」


「ああ」


「し、死なない毒だ! 死ぬより苦しいが決して死なない毒を使うつもりだろう!」


 外れても最悪の苦しみは免れる。当てたらやっぱり最悪の苦しみを免れる。どちらにしても最悪の苦しみを免れることは確定。だから想像しうる最悪の苦しみを与える毒を答えた。そんなところだろう。

 ――甘い。


「外れだ」


「ほ、本当か!?」


 笑顔まで浮かべて喜んじゃってまぁ。


「答えは、魂を溶解させる毒だ」


 老人の表情が笑顔のまま固まる。そして、俺の言葉を理解するにつれて、その表情は恐怖に歪み顔色を失い、身体がガタガタと震えだした。想像してしまったのだろう。魂が溶解される感覚を。


「や、やめろ。やめろ。それは人のすることではない。いや、生き物のすることではない。魂を、溶解させるだと。そんなことされるくらいなら永劫に苦しみながら生きた方がマシじゃないか! お願いです! やめてください! それだけはやめてください! そんな、痛みを味わったら、し、死ぬ。いや、死ぬじゃない。とにかくやめてください! お願いします! 何でもしますから! 魔王様を裏切りますから! それだけは勘弁してください!!!!!」


 ――俺がリュートから折檻を受けたとき、一度だけ、ほんの一瞬だけ魂を滅ぼされる痛みを味わったことがある。はっきり言ってこの世に存在していい痛みではなかった。あのリュートが、「む、い、いかん。間違えた!」と慌てて折檻を中止して俺に謝ったくらいだ。どうやらあの痛みは神にとっても設計ミスだったらしく人が輪廻転生するのは死しても魂が滅ばないようにするためらしい。その話を聞いて俺はただただ納得した。人が死ぬ才にあのような痛みという表現さえ生温い地獄の感覚を味わうのならば、この世のすべての人の死に顔はおぞましい形相になることだろう。いや、間違いなくなる。この俺の心さえ折ったのだ。あの痛みを味わった直後、俺に対する折檻は終了した。俺の心が折れたことを確認できたかららしい。


 なぜかこの爺さんは魂がを溶解させられる痛みを知っているようだ。知識としてのみなのか実体験として知ってるのかは分からないが、この異常な反応、何かしらリアルな体験をしたことがあるのは間違いあるまい。

 気になるからちょっと聞いてみた。


「なぁ、魂を溶かされる痛みを何故知っている?」


「我が友が3年前、神の逆鱗に触れ魂破砕の憂き目にあったのだ。あの時のバルバの声と形相、今でも夢に見る。あんなに恐ろしい光景はこの魔王軍幹部ヴェノミアの手練手管を尽くしても永劫に生み出せない。それほどの苦しみ様だった……」


「……」


 3年前?


「3年と、3ヶ月くらい前か?」


「何故、それを、知っておる。まさか、貴様、いや、貴方様は神の手先なのですか?」


「……」


 俺が受けた痛みってどう考えてもこいつの友人の巻き添え……。


「ふん!」


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぎぃゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 なんか無償に腹が立って少しだけオリジナル毒【魂喰い】を使ってしまった。魂が少し溶けただけなのに、こちらが引くくらいの苦しみようだった。さすがの俺も少しだけ罪悪感を感じた。


「お、おい。大丈夫か。」


「あ゛ーつ、ぁー、おはは、ぱーっ! ぶぉーぁっ! ぴぁぴぁびぁぴゅびゅ、が、がびゅ。俺の心が。俺びゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅください、ゆーあ――あぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃ」


「……壊、れた」


 ……まさか、壊れるとは思わなかった。リュートがよく壊れなかったと俺を褒めていたが、なるほど、下手すれば俺もこうなる可能性があった訳か……怖いな。


「この毒はもう使わないでおこう」


 流石に、これは惨すぎる。永久封印指定だ。例え相手が悪人だろうとこれは使ってはいけない代物だ。いや、余程の悪人でない限り使ってはいけない。


「……よく考えたらこいつ余程の悪人じゃん。じゃあ、まぁいいか。でも、もう十分報いは受けたよな。……楽にしてやろう」


 俺はヴァルゴをインベントリに仕舞い、魔剣アベルで老人の首を切り飛ばした。ようやく狂った笑い声がやんで、俺はちょっとホッとした。


「というかこいつ一体何者だったんだろう」


 言葉の節々から魔王軍の幹部っぽい存在であることは分かったが、逆に言えばそれくらいのことしか分からなかった。


「まぁいいか。悪は滅びたり」


 俺は魔法陣をアベルで破壊してその場から去った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る