第8話 仕方ないでしょう
「なんで断るのよ!困ってる人がいるなら助けるでしょう!」
有栖院さんは声のボリュームを落としながらも語気を強めて言ってきた。
「僕にとってメリットがないので」
厄介事になるとしか思えない。
「即答なんだね…」
舞元さんは苦笑いしている。
「せめて内容くらいは聞きなさいよ」
「えぇ~」
「嫌そうな顔をしないで」
有栖院さんや。さっきまで静かだったのに急にうるさ―――こほん、騒がしくなったな。
「奈月!説明してやって頂戴!」
「あなたの問題じゃないの!?てかずっと気になってたけど舞元さんは有栖院さんのなんなの!?」
「とりあえず二人とも落ち着こう。ね?」
どうやら今この中で一番まともなのは舞元さんらしい。
「まず私と茜は幼なじみで親友なんだよ」
「そうなんですね」
まあ有栖院さんと舞元さんは他の人たちより仲の良さは尋常がないからな。
「そういうわけでして、茜のことは守りたいわけですよ」
「舞元さんは有栖院さんの保護者ですか?」
「そうなんだよ!」
「違うわよ!」
ナイスツッコミ。てか舞元さん、そんな悲しそうな顔しないでよ。きみはいったい何がしたいんですか。
「舞元さんが有栖院さんを大切にしているのはわかりました。二人の関係も理解しました。一応聞いておきますが協力内容とは?」
「それはね、春宮くんの牽制役になってもらいたいんだよ」
それはまた結構なご提案なことで。きっと学校中の男子にとっては喉から手が出るほど欲しがる提案なのだろう。なぜなら――――
「この私と仲良くなるチャンスなのよ。これがメリットと言わずして何というの」
有栖院さんはドヤ顔して僕を見ている。自分の魅力を最大限に理解しているのだろう。
「僕はそれが困るんだけど」
「なんでよ!」
「まず初めに僕が有栖院さんに言ったことを覚えていますか?」
「もちろん!あの時の言葉は一言一句覚えているわ」
「ならわかるでしょう。僕はあなたと、有栖院さんとあまり関わりたくないんですよ」
「神川くんってどうしてそんなに茜のことを毛嫌いしてるの?」
「心を開いてない相手に対してどうやって仲良くなろうと思います?」
すると何か納得したような感じで舞元さんは頷いた。
「なるほどね。確かにその通りだよ。それで他には?」
「あとは単純に目立ちたくないだけです」
「でも茜と話す男子はいるから問題ないと思うけど?」
「確かに普通ならそうでしょう。でも相手は友達がいない『孤独くん』と言われている男子ですよ?目立たないはずがない」
「それって神川くんの自業自得じゃん」
「仕方ないでしょう」
「仕方なくないでしょう」
「どうしてそこで有栖院さんが出てくるんですか?」
「だって~」
「はあ。それにほかの男子の牽制役となると普通より深く関わることになるだろう。それが面倒と言わず何というんですか」
「そんなこと…」
自覚があるんだろうな。
「もういいですか?」
「あ、うん」
有栖院さんの呆気にとられた顔を横目見て僕はお金をおいて家路についた。
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