第7話 断ります

 一週間が経ちようやくあの『天才姫事件』(学校内の中での話)も終息を見せていた。あの事件以来クラスメイトや同級生、はてはすれ違った先輩にも質問をされ続けたが最近になってようやく落ち着いてきた。これも僕の賢明な弁明と有栖院さん、舞元さんの噂の否定によるもの。てか元凶は有栖院さんなんだから火消しは当然のことです。



「さて今日も何事もなく平穏だったな」

 帰りのHRも終わってあとは帰宅するだけ。帰宅部とは楽でいいですね。

 いそいそと帰り支度をしていると僕に近づく二つの影が。

「ちょっと付き合いなさいよ」

「神川くん、はろはろ~」

 有栖院さんと舞元さん。どうやら今日は何かあるらしいですね。



 二人に連れてこられたのは少し洒落た喫茶店。ぱっと見は女子高生が多い気がする。

「時間をもらっちゃて悪かったね」

 そう申し訳なさ気な顔をするのは舞元さん。

「意外だね。まさか用事があるのが舞元さんだったなんて」

「そうなんだよ~。ちょっと困ったことがあるんだよ!」

「奈月は落ち着きなさいよ」

「いやいや茜関係だからね!」

「何があったんですか?」

 有栖院さん関係なんてめんどくさいことに違いない。



 舞元さんは本題をぶっこんできた。

「神川くんは春宮哲也はるみやてつやって知ってる?」

「名前だけなら」

 春宮哲也。彼は僕たちの同級生で有栖院さんと並ぶ有名人だ。

「『サッカー王子』。新入生でありながらサッカー部のエースとなりU18の日本代表にも選ばれている。プロ間違いなしと言われながら進学校である新星高校に入学している。さらにイケメンときた。これだけの情報があれば知らない方がおかしいですよ」

 ネットでも彼の名前を検索すれば普通に情報が出てくる。

「そうそう、その春宮くんだよ」

「で、その春宮くんがどうかしたの?」

「実は彼が茜に惚れているという情報が手に入りまして」

「はあ?」

 それが何だというのだろうか?結局日本規模の有名人でさえ有栖院さんの魅力には無力だったということだろう。



「それが何か?」

「よく考えてみなよ。春宮くんはとても人気者。そんな彼の告白を断ったとしたら茜の立つ瀬がないのだよ!」

「それは、そうですね」

 春宮くんは学校で絶大な人気を誇っている。そんな彼の告白を断ればあいつ何様だといった有栖院さんに対するマイナス感情は大きくなるだろう。

「だから茜のために私たちに協力してよ」

「断ります」

「はあ!?」

 有栖院さんの驚く顔と絶叫が響き渡った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る