第5話 意味が分からない
昨日の放課後にあんなことがあっても今日は平日、普通に学校がある。有栖院さんと顔を合わせるのが気まずい。少し言い過ぎたかもしれないと帰ってから後悔していた。
「はぁ。こんなに学校に行くのが嫌なのは初めてだよ」
『天才姫』と呼ばれる彼女を敵に回してしまっては今後の学校生活に支障をきたしてしまう。何とかして弁明しなければならない。でもそれが簡単に出来たら苦労しないし『孤独くん』とも呼ばれていない。
重い足取りの中教室のドアを開けて席に向かう。教室のドアが開いて多くの人の視線が向けられるが僕だとわかった瞬間ほとんどの人が興味をなくしたかのように視線を逸らす。そして席に向かおうと歩き出した途端――――
「神川くんおはよう!」
「「「「っ!」」」」
クラスメイトの全員が反応した。有栖院さんの僕へのあいさつに。
ところで一つ確認しよう。僕は友達がいない。『孤独くん』と呼ばれるくらいに他人との接点がない。そんな僕に『天才姫』と呼ばれる有栖院茜が挨拶をした。意味が分からない。なるほど。意味が分からない。(二回目)
「えっと、おはよう有栖院さん」
とりあえず挨拶を返してみる。だがそんなことでこの騒動が収まるはずがない。
なんかも混乱しすぎてどうでもよくなってくる。
「ど、どういうこと!?」
「茜っていつの間に『孤独くん』と仲良しになってたの!?」
「昨日いろいろあってね」
そして意味深にこっちを見て微笑んできた。いったい何が目的だ?
有栖院さんの周りでキャーキャー騒いでいるグループがいるのだから当然ほかにも騒ぎ出す奴らもいるに決まっている。
「おい!お前、有栖院さんとどんな関係なんだよ!?」
「まさか付き合ってるんじゃないんだろうな!?」
「詳しく聞かせろよ!」
ほら来た。席に着いた途端男子どもから執拗に質問を投げられ続け、先生が注意するまでそれは続いた。
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