第2話 俺、ドラゴンキング

 俺は見渡す限りの竜に囲まれていた。


「あのさ。えーーと、ファーナさんだっけ?」


「ファーナとお呼びくださいませ。敬語は必要ありません」


 んじゃ、


「ファーナ。俺が竜王って言われてもさ。イマイチわかってないんだけど?」


「お記憶が戻っていないのは当然でございます。あなた様は王魂の生まれ代わりなのでございます」


「おうこん? 」


「王の魂。王魂でございます。先代の竜王さまは3つの魂を持ち、その魂を飛散させてこの世を去ったのでございます」


 ほぉ。


「つまり、その先代が飛ばした3つの魂のうち1つが俺ってこと?」


「そのとおりでございます」


 えええ……。

 にわかには信じ難いな。

 しかし、この竜とこの世界は本物だし。


「俺。自慢じゃないけど喧嘩とかめちゃくちゃ弱かったよ? 運動神経は悪いしさ。勉強は本気を出せばもう少し伸びるかもしんないけどさ。それでも中の上くらいじゃないかな?」


「それは力が覚醒していなかっただけでございます」


 ああ、そういうのか。

 実は小学生の頃。眠っている力を目覚めさせようと躍起になったことがあったっけ。大木に向かってさ。


『ファイヤーボール!!』


 完全に黒歴史。

 勿論、魔法は出なかったけどな。


「俺、本当に竜王の生まれ代わりなのかなぁ? 間違いとかじゃないの? まったく自信がないんだけど」


「勿論でございます。あなた様から感じる王魂の力に、私の胸はときめいております」


ボイーーン。


 うう。目の毒だ。


「ど、どうやったら力が覚醒するんだ?」


「この世界に戻ることで、力は徐々に使えるようになるかと」


「うぉお、マジか! じゃあファイヤーボールとか撃てるのかな?」


「そんなモノより、もっと強い攻撃ができます」


「へ、へぇ……」


 ファイヤーボールより凄い力が使えるのか……。


譚斗たんとさまのお額に力を集中なさってください」


 額?


「よ、よし。むーーん」

 

 すると数字が浮かび上がる。



レベル42。



「もしかしてこれが俺の強さとか?」


「そうでございます」


「強いのかな? ファーナはいくつなんだ?」


「私のレベルはこうです」



レベル368。



 うぉおおい!


「おまえのが強いじゃないか!」


「いえ。私など、大したことはありません」


「でも300以上も上だぜ?」


 やっぱり経験値を溜めてレベルを上げなきゃダメかな。


「右手の甲に精神を集中して、プラスドラゴンとお唱えください」


 よくわからんけど、言われるようにしよう。


「プラスドラゴン」


 すると俺の全身が光った。


「うぉ! 何が起こった?」


 俺の数値に変化が出る。



レベル342。



 あ、あれ?


「なんか上がった?」


 ファーナのレベルは68になっていた。


「あれ、ファーナのレベルが300減ったんじゃないか?」


「はい。これが、竜王のスキル。プラスドラゴンでございます。ドラゴンのレベルをご自身のレベルに変換することができる力でございます」


「凄ぇ! チートじゃん!!」


「ちーー、と?」


「ははは。凄い力ってことさ。これで修行とかせずに強くなれるんだな」


「はい。 譚斗たんとさまのお力はチートなのでございます」


 おおおお!

 ついに夢にまで見たチートスキルを身に着けたぞ。


 ん?

 待てよ。

 ドラゴンの力って言ったよな?

 ……てことは、


 俺は周りを見渡した。


「もしかして、こいつらのレベルも俺の力にできるのか?」


「勿論でございます」


「凄ぇええええ!!」


 1万以上はいるだろう。

 そんなドラゴンのレベルが全部俺のものに……。

 わ、わくわくが止まらん。


「では王の間に参りましょう」


「この塔って階段とかないんだけど?」


「飛んで参ります」


「あ、じゃあ頼んでもいいか?」


「申し訳ございません。レベルが100を切ると翼を出せないのでございます」


 そんな制約があるのか。


「じゃあファーナにレベル200分を戻すよ」


 これで俺はレベル142になった。


「俺もファーナみたいに翼が出せるのかな?」


「勿論でございます。肩甲骨に精神を集中させてみてください」


「うん。やってみる。むん……」


バサァァアッ!!


 それは立派な竜の翼だった。


「うぉ! 出たぁ!!」


「では参りましょう」


 俺は空を飛ぶことを楽しみながら王の間へと向かった。


 さっきまで居た塔は竜王城の一角だった。王の間は城の中にあった。


 立派な椅子が置いてある。

 

 あれが俺専用の椅子か。


 座ってみるとフカフカだ。


 王の間には、たくさんの竜と鎧を着た兵士たちが立っていた。

 みんなは俺に敬愛の視線を送る。


「えーーと、細かな疑問なんだけどさ。明らかに竜の見た目と人の格好をしたヤツがいるよな? それはなんでなんだ?」


「竜族は2種類で構成されております。 譚斗たんとさまや私は竜人族。あちらに見えます、明らかに竜の姿をした者は真竜族でございます」


「なるほど」


「先代が2種族を1つの種族へとおまとめになられたのです」


 ふむ。

 歴史は長そうだな。


「んじゃさ。俺は何をしたらいいんだ?」


「主に国の統治なのでございますが、我々は 譚斗たんとさまについて行くだけですので、ご自由になんなりとご命令ください」


「何をやっても良いってこと?」


「はい。 譚斗たんとさまの自由でございます。それに私どもにこの国の未来はわかりません。 譚斗たんとさまのお力でどうか我々をお導きください」


 おおお。

 竜の力を手に入れて何をやってもいいのか。


「んじゃさ。まずは、俺の部下の規模と何をやって暮らしていたのかを教えてくれ」


「承知しました」


 めちゃくちゃワクワクしてきたぞ。

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