俺、ドラゴンキングで異世界最強〜竜の力で異世界征服。俺が世界の王になる!〜

神伊 咲児

第1話 異世界転移

 はぁーーーーーー。


 マジかよぉ?


 見渡す限り……竜。


 俺は高い塔の天辺に立っていた。


 俺の周囲を囲んでさ。

 何万匹いるんだろう?


 こいつら、竜……だよな?


 恐竜みたいなヤツもいるけどさ。

 ゲームで出てくるような竜。

 翼の生えたヤツもいる。色も様々でさ。


 そんなヤツらが俺に向かってひれ伏してるんだ……。

 地面に頭をつけてさ。

 敬愛を感じる。従順な感じ……。


 竜がいるってことはさ。

 間違いない。


 ここは異世界だ……。






 ──俺の名前は鳴風  譚斗たんと

 ごく普通のさ。何者でもない14歳の中学2年生だ。


 本当に普通すぎてさ。泣けてくるぜ。


 人生ってのは不公平だ。

 

 生まれた時からある程度、自分の位置が決まってんだからな。


 俺の身長は161センチ。

 背の順で言えば真ん中から後ろくらいだけどさ。

 一番後ろのヤツなんか170センチを越えてんだ。バスケ部でさ。大活躍だよ。

 スポーツだったら圧倒的に有利だよな。まぁ、俺は帰宅部だけどさ。


 勉強は中の下くらいの位置付け。

 もっと本気で勉強すればさ、もう少し上位は取れるのかもしれないけどさ。

 努力と対価が見合ってねぇっての。

 つまんねぇ勉強してもさ。将来の役でどれくらい立つんだろうな?


 自慢できるのはゲームの腕くらいかな。

 ネットゲームは最高に努力してる。

 無課金でもさ、ランキング153位まで行ったんだからな。

 でもさ。これが限界なんだ。

 俺より上位陣は圧倒的に課金してる。

 んな連中に勝てるわけもなく。

 俺は絶対に1位にはなれない存在なんだ。


 俺ん家がもっと大金持ちだったらなぁ。

 バンバンお小遣いを課金してさ。1位になってやるのにさ。

 そうなったらさぞや気持ちいいだろうなぁ……。


 でもさ。

 俺ん家は公営団地でさ。

 親父は平社員って位置付けで、母さんはパートで働いてんだ。

 毎月もらえる500円の小遣いがな。俺の唯一の収入源さ。


 そんな貴重な金をゲームの課金に使えっか?

 どう考えたって無理だろうよ。


 だからさ。

 好きな漫画やラノベをさ。

 古本屋で買うのが関の山なんだ。


 今だってさ。

 異世界に転移した主人公が大活躍するラノベを買って来たところだ。


「あーーあ。異世界っていいよなぁ……。チートの力でさぁ。最強になれんだからなぁ」


 可愛い女の子も仲間にしてさぁ……。


 あーー。

 更に残念な情報だが、俺に女友達はいねぇ。

 女子ってアクションゲームをあんまりやんねぇかんな。

 何話していいかわっかんねぇんだわ。


 加えて、俺は喧嘩が弱い。

 この前なんか酷かった。

 俺が買った漫画をさ、不良グループに盗られたんだ。


 俺は口だけは立つ方だからな。

 しっかりと言ってやったさ。


「ざけんな! 俺の漫画返せよ!!」


 それはもう堂々とな。

 人の物を奪うなんて犯罪だっての。


 するとな。



バン!



 強烈な一撃が俺の顔面に命中したんだ。

 鉄みたいな臭いが鼻の中に充満してさ。顔の中央が熱くなる。

 俺は鼻血を出してぶっ倒れた。


 しかもそれだけじゃない。


 周囲のヤツらは、そんな姿を見て笑ってんだぜ?


「ククク。バカなヤツ。弱いのにさ」

「弱いのにイキがるからそうなる」

「ああ、鳴風って痛いよなぁ」


 はぁああ?

 俺が漫画を盗られたんだぞ?

 俺は自分の漫画を返せって言っただけだぞ?


 俺の方が悪いのか??


 喧嘩に弱い俺が悪い?

 喧嘩に強い不良が正義なのか?


 なんだこの世の中?


 なにもかもが不公平だ。

 

 喧嘩は弱い。

 勉強はダメ。

 金もない。

 女の子にもモテない。

 一番頑張ってるゲームだって上位陣には勝てないんだ。

 

 何をやっても中途半端。

 絶対に1位にはなれない。

 

 なんなんだよ。俺の人生はよぉおおお!


 俺はそんなむしゃくしゃした気持ちを晴らすように古本屋に行った。


 うう。

 チートで最強になるヤツぅうう。

 

 俺はラノベを1冊だけ買って帰ることにした。

 異世界に行った主人公が最強に無双できるストーリーだ。


 公園の中を通ったその時だ。

 草むらから女の子が声を掛けてきた。


譚斗たんとさま。 譚斗たんとさま」


 はい?

 俺を様付けで呼ぶってどういうことだ?


 草むらから顔出しているのは俺よりも年上の人だった。


 目の前に行ってみる。


 彼女は深々と頭を下げた。


「ご無沙汰しております」


 初対面だが?


 17歳くらいかな?

 多分、高校生だ。


 でも服装が特殊。

 なんていうか、ファンタジー世界の服装みたいだな。


 えーーと。

 こういうのなんていうんだっけ?


「あ、コスプレだ。お姉さんはコスプレイヤーなの?」


「はい?」


 と小首を傾げる。


 大きな緑の瞳はクルっと丸くて愛らしい。

 艶やかな緑の長髪。真っ白い肌。

 アイドルグループの一員かと見まごうくらいの容姿。

 そしてなにより、胸の露出が……。


プルン……。


 随分デカいな。

 うう。

 14歳の俺には刺激が強すぎるぜ。

 

譚斗たんとさま。竜の国に戻っていただけないでしょうか?」


 はい?


「りゅうのくにって?」


「ご自身の王国です」


 俺の国?


「あなた様は竜族を束ねる竜王なのです」


「はぁあああ?」


 ラノベは好きだが、面と向かってそういうこと言われるとちょっと引くな。

 でも、このお姉さんの服装はちょっとテンションが上がる。


「えーーと。これ何? ドッキリ企画? 何かの配信すか?」


「なにを言っておられるのでしょうか? 申し訳ございません。私はこの世界のことは 譚斗たんとさまのこと以外わからないのです」


「は、ははは。……じゃあ、お姉さんは異世界から来たってこと?」


「異世界……。違う世界という意味でございますね! そうです異世界です」


「良い!!」


 最高のリアクション!

 何かのイベントかぁ?


 でも、このお姉さんの演技は最高に上手いな。

 まるで本当に異世界から来た住民って感じだ。


「では、戻って来ていただけますか?」


 えーーと。

 これって勧誘だよな?


「もしかして新たなメイドカフェとか?」


「メイド? ではございません。私はファーナ。 譚斗たんとさまの忠実な部下でございます」


 おおおおおお……。

 良い。

 物凄く良い。


 このお姉さんのイベントに付き合ってあげたい。

 しかし、


「悪いんだけどさ。俺、金持ってないんですよ」


「お金なんて必要ありませんわ」


「え? でも……。じゃあなんでそんなことしてるの?」


譚斗たんとさまに戻っていただきたいだけでございます」


「ははは。なんかよくわかんないけどさ。面白いのは面白いよ。俺の名前もよく調べたよね」


「ありがとうございます。では、戻っていただけますね?」


 えーーと……。


「異世界ってヤツ?」


「はい」


「ははは」


 冗談って分かってるけどさ。

 

「よし。んじゃ行ってやろう」


 なんちゃって。

 ははは。


「では、この中に入ってください」


 はい……?


 それは光の物体だった。

 人1人が入れる入り口のように見えるけど……。


 ここ公園だぞ?

 どこが光源になってんだ??

 ライトは見えない。

 違和感しかないぞ?

 

「では」


 と、俺の手を握る。


 う……柔らかい。


 彼女に引っ張られるままに俺はその光の中に入った。


 途端に下から噴き上げる強風。


 な、なんだ!?

 凄い風だ!?


 周囲に見えるのは霧……。いや雲だ。

 それに、下には山々。


 明らかに上空。

 地上から何千メートルもあるぞ。


 しかも、これ、


「落ちてるよねぇえええええ!?」

 

 死ぬぅううううううう!!


 その瞬間。


プニィイイイイイ……。


 柔らかい物に包まれる。

 

 こ、この感覚は!?


譚斗たんとさま。ご安心を」


 さっきのお姉さんだ。


 彼女が俺を抱きかかえている。


「パ、パラシュートはないの?」


「そんな物はございません」


「終わったぁああああ!!」


 刹那。

 凄まじい上昇気流が巻き起こる。


バサァァアッ!!


 それは彼女の背中から生えている翼が起こしたものだった。


 はいいいい!?


「つ、つ、翼があるぅう!?」


「はい。私は竜人族なのです」


 彼女は自由に空を飛んだ。


 ははは……。

 もしかして、本当にここは異世界なのか?


 着地したのは塔の天辺だった。


 お姉さんは大きな声を張り上げ、


譚斗たんとさまのご帰還である!!」


 そして、深々と頭を下げて片膝を床に付けた。


 はい?


 彼女の声に呼応したのは周囲を囲む無数の竜である。


「竜王さまがご帰還されたーー!」

「竜王さまーーーー!!」

「竜王、 譚斗たんとさまーー!!」


 竜たちは深々と頭を下げる。


 マジかよ?

 どうなってんだこれ!?

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