第3話 竜の国と竜王の力

 俺は部下のファーナから色々なことを聞いた。


 俺たちがいてる場所は竜の国ドロゴモニアスというらしい。

 空中に浮かぶ巨大な浮遊大地なんだとか。

 地平線が見えるくらいに広いから、宙に浮いていると言われてもピンとこないけどな。

 とにかく浮いてるそうだ。


 現在の部下は2万人程度。みんながドロゴモニアスで平和に暮らしている。

 地上では戦争が激しいみたいなんだけど、竜族にとって地上のことはどうでもいいらしい。


 俺は部下から慕われていて、みんなは新しい王の誕生祭をしてくれた。

 豪華な料理と竜人族の娘の踊り。

 異文化すぎてついていけないけど、まぁ、慕われてるので良しとしよう。


 至れり尽せりだったのだけど、問題はあった。


 料理が不味い。


 味は薄いし、肉の臭みは強い。

 これが竜の好きな食事なのか……。


 日本の料理が美味すぎたんだな。

 カップラーメンが恋しいや。


 ここは改善点だな。


 ファーナは竜王城の案内もしてくれた。


「こちらが 譚斗たんとさまの寝室でございます」


 そこには豪華なベッドが置かれていた


「うは。寝心地最高じゃん」


「添い寝オプションがございます」


「なにそれ?」


「気に入った竜人の娘を呼んで一緒に寝てもらうのです」


「はいいい?」


「先ほど、舞を踊っていた娘たちでございますよ」


 いや、しかし……。


「ドラゴモニアスの女ならば全員が 譚斗たんとさまと一夜を過ごしたいと思っております」


「そ、そういわれてもだな」


「ご指名は、このファーナが良いかと」


「え?」


じぃーーーーーーー。


「ご指名……。待っております」


じぃーーーーーーー。


 なんか怖ぇ。

 てか、そういうのは刺激が強すぎるな。

 添い寝オプションは聞いてなかったことにしよう。


 俺はフカフカのベッドでぐっすり寝た。


 朝。


 朝食は果物をメインで済ます。

 スープは相変わらず味が薄いしな。


「あのさ。ふと思ったんだが、日本……。俺が元いた世界ではどうなってんのかな? 俺がいなくなってさ。家族が心配してないかな?」


「はい。行方不明になっていますからね。心配しているのではないでしょうか」


「いや。それはまずいだろ。連絡しなくちゃ!」


 と、スマホを立ち上げてみる。


 圏外。


「だよなぁ……」


 通じるわけないか。


「向こうの世界に戻る方法はあるのかな?」


「戻りたいのですか?」


「そういうわけじゃないけどさ。家族が心配するのは気になるよ。せめて元気でやってることくらいは知らせてやりたいしさ」


「でしたら、転移の書が必要になりますね。私が 譚斗たんとさまの世界に行ったのはこのアイテムの効果なのでございます」


「ああ、じゃあ戻れんだな。早速用意してよ」


「それが……。転移の書は1度使うと灰になって消滅するのでございます。新しい転移の書を見つけませんと」


「どこにあるんだ?」


「下界。つまり地上でございます」


 俺は転移の書を探すことにした。

 でも、場所がさっぱりわからない。

 まずは地上で情報収集だな。


 王の間には大きな水晶があってそこに地上の映像が映し出される。

 

 蛙の顔をした種族が人間を鞭で打っていた。


『働け働くんだゲローー!!』


 酷ぇな。


「蛙人族でございます。人族を奴隷にしているのでございます」


 蛙王国シタガエール。

 蛙人族が収める国。

 蛙王ゲロゲーが人族を捕まえて奴隷にしている。


「よし。助けよう」


「え!? た、助ける?? どっちをでございますか?」


「人族かな」


「えええええ!? そんなことをしてどうするのでございますか? あの者らは卑しい地上の下等種です。我ら天界の高貴な種族が手を下すまでもありません!」


「んーー。高貴とか下等とかよくわからんけどさ」


 奴隷は気になるな。


 城内は騒ついていた。

 地上に干渉することが相当に珍しいことらしい。


 竜人族の兵士が声を上げた。


僭越せんえつながら進言させていただきます。人族も蛙人族も奴隷にして我らの国に従えさせるのはどうでしょうか?」


 なるほど。

 所謂、侵略か。

 強大な力で相手を屈服させる。

 俺が両国を治めた方が平和になるかもしれない。


「うん。気に入った! 人族と蛙人族を竜族の支配下にしよう!」


「「「 うぉおおおお!! 」」」


 なんか城内は盛り上がっていた。


 よし。

 じゃあ、その前に力の再確認といこうか。


 俺は屈強な竜族の男たちを連れて広場へとやってきた。

 

 眼前の竜たちはレベルが軒並み千を超えている。


「ふはーー。すげぇレベルだな」


 俺のスキルでこいつらのレベルを貰うことができるんだよな。


「ちょっと貰って良いか?」


「「「 ご自由にお使いください 」」」


「よし。んじゃ。プラスドラゴン」


 俺は周囲にいるドラゴンのレベルを少しずつ分けてもらった。

 全部吸い取ると弱体化しちゃうからな。

 みんなから満遍なくが理想だろう。



レベル1300。



 うん。強くなったぞ。


 それでも眼前の竜たちの方がまだレベルが上だった。


「このレベルの恩恵がどれほどのものか確かめたいよな」


 1人の男が志願する。


「私はレベルが800です。攻撃してみますから防御してみてください」


 ぼ、防御?

 いきなり言われても、運動神経ゼロなんだってば!


 男は蹴りを放つ。

 その速度は凄まじい。

 豪風を起こし空を切った。


ブォオオオオン!!


 こんな蹴りを受けたら、たちまち体は粉砕して再起不能になるのではないだろうか?

 それでも、俺には蹴りの軌道が見えていて、片手を添えるように上げるだけで簡単に防ぐことができた。


ガシィイイイインッ!!


 余裕だな。


「流石は 譚斗たんとさまです」


 なるほど。

 これってもしかして……。


「レベルが低い者の攻撃は高い者に通らないってことか?」


「そのとおりでございます」


 じゃあ、


「そこのおまえ。俺に攻撃してくれ」


「わ、私ですか?」


 それは竜の姿をした男だった。オスと言った方が的確のような気もするが。

 言葉を喋る竜。真竜族である。

 体高10メートルはあるだろう。

 レベルは1900。

 俺より600も上だ。


 竜は大きな尻尾で俺の体を叩いた。



バグゥウウン!!



 うぉおお!!

 痛い!!


 俺は20メートル吹っ飛んだ。


「「「  譚斗たんとさまーー!! 」」」


 みんなが心配して駆け寄る。


「痛ててて……」


 右腕はグシャグシャになっていた。

 肉は抉れ、骨が飛び出す。

 しかし、白い煙と共に少しづつ回復していた。


「自己回復能力か……」


「レベル千を超える竜族は誰もが使える能力でございます」


 なるほど。便利だな。


 フォーナは汗を飛散させた。


「無茶しすぎです。レベルの差は命取りになるのですよ!」


「ははは。みたいだな」


 戦う時は相手より高いレベルであること。

 これが必須条件のようだ。


「俺って部下のレベルを貰えるんだよな?」


「はい。このドラゴモニアスに住む竜族なら全員のレベルを使うことができます」


「上限はあるのかな?」


「はい。現在の 譚斗たんとさまのプラスドラゴンはステージは1でございます。上限は10万レベルとなっていますね」


 10万か。

 部下のドラゴンで1番強いヤツでも2万程度だからな。


「十分強いな」


「ステージの開放条件は謎でございます。先代さまもステージの開放はせずにこの世を去りましたからね」


 まだ上がる余地があるのかよ。

 まぁ、使うことはなさそうだがな。


「よし。腕が治ったぞ。今度は攻撃をみてみよう」


 部下の男が巨大な岩を放り投げる。

 20メートル以上はある巨岩だ。


 本来ならぺちゃんこだが……。


バグゥウウウウウウンッ!!


 拳の一突き。一撃で粉砕だ。

 

 うん。1300でも十分に強いな。


「よし。腕試しがてら、地上に降りてみよう」


 竜王の力、楽しみだ。

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