第百十話 首都で何があったんだ?【神坂蒼雲視点】
八月五日、午後八時三十分。
ホテル最上階のラウンジで祝勝会が行われる事となった。
今はその祝勝会も終わって大広間に作られた臨時のカフェでくつろいでいる。
このカフェには様々な飲み物も用意されているし、お菓子や果物それにアイスなどが大量に用意されていた。
今回は
いつも
どうやらこの最上階は俺達専用に年間契約で借り上げているらしいので、今回の件に参加していない
「やっぱりこうなるっちゅう訳でんな」
「今回は輝がいないからこんな状態の大広間まで解放されてる分マシだろ。とりあえず明日の登校日は中止にならないそうだが、俺達はまた数日ここで軟禁らしい」
今日の雰囲気は緩いんだが、これが殺気に満ちているというか警備員の緊張具合が凄いんだよな。
本気であいつの部屋に繋がるあの廊下に一歩でも踏み込めば何をされるか分かったもんじゃない。
宿泊が決まった際には徹底的に部屋とかを調べられるそうだしな。
年間借り上げをする前には、あの部屋の中で盗聴器や隠しカメラが見つかった事もあったとか。
「仕方ないっスね。でも今回の報酬で増えたポイント見たら輝さんも驚くと……」
もう既にあまり意味の無いレジェンドランカーページのポイントを確認していた霧養は、其処に表示されている情報を見て思わず声を失っていた。
いくら増えても別に意味は無いし、今のポイントだって使いきれる訳じゃないからな。
で、なんで固まってるんだ?
「どうした? 今回の報酬は俺とお前が十億ポイントほど多いだけだろ? 順位に変化は……、って。なんだこれ?」
俺も思わず其処に表示されていた
「総獲得ポイント六百五十六億やて? 凰さん向こうでなにやらかしたんや?」
「何か情報は……、これっスね」
防衛軍との共同作戦による
共闘って言ってもあのW・T・Fは防衛軍の装備でもどうにもならないだろ?
今日俺達が使った装備があっても無理だし、実際は
「口止め料って訳やな」
「それしか考えられないだろうな。別に
「謙虚っスね」
「謙虚とはちゃいまんな。凰さんの場合は、どうでもええっちゅうんやで」
「正解だ。あいつは本気で興味が無いだけなのさ」
報酬の交渉すらしたかすら怪しい所だ。
こんなポイントは明日から使えませんとか言われてもおかしくない物だし、価値なんて見出してないだろうし。
俺もそうだが
「AGEに助けを求めた上に単独撃破されましたじゃ防衛軍の沽券に係わりまくるからな。防衛軍は日本全土で頑張ってるから別にW・T・Fを処理できなくても無理はないんだろうが」
「まあアメリカでも何万人も正規軍を石像に変えて暴れまくってるって話っスからね。他にも国を滅ぼしまくってる移動災害っス」
「凰さんは援護射撃も碌に無しにW・T・Fを撃破したんやろか?」
「流石に
「ゆかりんか
今の俺や霧養の攻撃力だったら再生力を無視して撃ち続ければ反撃の隙など与える事はないが、逆に
それに今のM4A1改弐であれば暴発の危険性はないが、改良されていない状態だと爆発するかもしれないしな。
「何見てるの? ……なにこれ?」
「凰樹君、向こうでも何か仕出かしたみたいですね」
部屋でくつろいでいた宮桜姫達も手にそれぞれジュースなどを持って大広間に集まり、表示されているポイントを見て苦笑していた。
苦笑でとどめてる辺り宮桜姫も俺達に染まってきてるよな。
「向こうの居住区もあきらがいた事は不幸中の幸いと思ってるのは間違いないだろうけど、あっちの防衛軍のえらい人とかがあきらを引き留めたりしないかな?」
「可能性はゼロやおまへんが、流石に戦力惜しさに学生AGEを首都に留めたら防衛軍の面目丸潰れやしありえまへんな。協力要請とかで手を打つんちゃいます?」
そんなところか?
毎月何百億も支払うのか?
「そういえばさ、今回はホテルの周りに報道陣がほとんどいないね」
「いるのは地元の地方新聞が数社と、AGE系雑誌の記者が数人やな」
「この短期間に三例目だし、流石に興味なんて薄れるだろ? それより首都で二体のW・T・Fを撃破した
「あれ? 出現したW・T・Fの数が一体になってるね」
「さっきは確かに二体……。いつの間にか
二体同時出撃した時に防衛軍が役に立たなかったから一体は
かなり無理があるとは思うが。
「そこまでするもんっスか?」
「くだらないメンツの為さ。相手が
「そうですね。普通の人だったら大変でしょう」
「あきらがそんな性格だったら、とっくの昔にわたしに手を出してると思うよ」
そりゃあ、据え膳じゃないが竹中にあそこまでされて我慢してる
荒城が同じ事をしても多分手を出さないだろうしな。
俺は付き合いが長いからあいつの悩みくらいは分かる。
あの力の正体は
その秘密が何なのかは多分故郷で石像になってるあいつの母親だけが知っている。
その秘密を聞き出すまで、あいつは無責任に誰かに手出しする奴じゃないさ。
「明日の登校日はまたしても公休だね」
「仕方がないですよね。おそらく十日くらいまではここでしょうし」
「今回は
待てよ、それだと俺は明日のガンナーガールズのライブに行けないじゃないか!!
せっかく隣の公民館に来るんだ、行かなきゃファン失格だろ!!
という訳で俺は明日の為にどうやってここを抜け出すか考えている。
あのライブには絶対に参加するからな!!
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