第九十六話 天を貫く光の螺旋
午前十一時二十分。
俺と
あれだけ高出力の
東京第三六六
偶然なんだろうけど、運がいいよな。
現在この東京第三六六
そこは
どこが所有しているのかは知らないけど、安全区域になったらこの工場を潰してここに工場を移転するのかな?
ここは安全区域内にある飛び地の危険地域だし、
「さて、今現在の我々にどんな攻撃が可能かって事だ」
「武器に関してだが、実験にも使った
「フルチャージしたら反動で壊れますしね。何かいい方法があればいいんですが」
「
「確かにあの時
ただ、威力はかなり落ちる。
アレだとどこまでダメージを与えられるかが問題だ。
「持ってきてはいるが、
「威力がかなり落ちますか」
「もう少しだけ
「内部構造では難しいな。それに大掛かりな改修が必要だ。完成までに何日掛かるかわからん」
「それまであの
飛ばれたらおしまいだからな。
今は工場の屋根に止まって休んでるみたいだけど、あそこから飛び立たれると厄介処の話じゃない。
普通の
「威力の調整か。ん? 使用する特殊弾をグレード一にしたら少しだけ威力の調整が出来ませんか?」
「特殊弾のグレードを落とすのか!! 防衛軍ではグレード十の特殊弾しか使わんから、そこには気が付かなかった」
「資金に余裕のないAGE部隊と逆の考えよね」
「どうやって威力をあげるかで、グレードを上げてる訳だし」
そこだよな。
俺達はGEとの戦いで特殊弾のグレードを変えたりするけど、防衛軍は基本的にグレード十の特殊弾しか使わないからその必要はない。
予算と装備が整っているからこそ、特殊弾のグレードには考えが及ばなかったんだろう。
「今すぐグレード一の特殊弾を此処に運び込んでくれ」
「近くの対GE民間防衛組織から運び込ませます。……十五分で届けるそうです」
「急がせろ!! 奴が飛んでからでは遅いからな」
とりあえずこれで当面の攻撃手段は揃った。
後は何処から攻めるかだが……。
「屋根の上にいるあの
「屋根の上を歩いていくのは危険だ。先ほど想定した足場の脆い場所での戦闘その物だろう」
「確かに。若干威力が弱いとはいえ、天井が穴だらけになるのは時間の問題ですね」
そして俺は機動力を失い、あの
そうなるともう戦うどころの話じゃない。
「その事を理解してあそこにいるのかもしれんな」
「いや、単に烏の習性があるだけかもしれん」
「大きさが段違いですけど、よく見かける光景ですしね」
「工場の屋根の上にいる烏か。確かによく見る光景だ」
大きさと存在感が段違いだけどな。
よく工場の屋根が抜けないもんだ。
屋根の上で戦うのは無理だけど、あいつを工場内に落とせば何とかならないか?
「あの
「あの屋根の下は薄いコンクリートだな。鉄筋は張り巡らされているが」
「いや、ちょうどあの
「烏だけに頭は良いですね。……このルートだったら比較的に安全に行けませんか? 羽根を奪えれば勝算はかなり上がりますよ」
工場の内部だけあって、中にはいろんな機械が残されていた。
その機械を点検する為の足場も残されているので、そこを通ればなんとかあの
そこからせめて羽根だけでも破壊できればしばらくは飛ばれなくても済む。
勝算は低いが、地上でのたうち回ってくれればチャンスがあるかもしれない。
「バレないか?」
「ギリギリ視界からは外れると思うが、賭けであるのは間違いない」
「バレたらこっちのルートで撤退します。此処も使えるんですよね?」
「足場は全部残っているからな。それでいくしかないか」
どっちにしろ、元々一か八かの賭けに過ぎないんだ。
飛ばれればもう俺たちにできる手段なんてないし、どうにかしてあの羽根を破壊しなけりゃいけない。
一撃で運良く倒せれば問題ないけど……。
「何度も任せてすまない。
「失敗しても仕方がないが、最悪の時は無事に逃げ出せよ」
「そうですわ。生きていればまたチャンスはあります。どうかご無事で」
「お守りを渡しましょうか?」
「帰ったらパーティですね」
「緊張を解そうとしてるのは分かりますが、わざとフラグっぽい会話をするのってどうなんですか?」
しかもかなりノリノリだ。
そのお守り、何処から出したんですかね?
「冗談はこの位にしておくか。頼んだぞ」
「では、行ってきますね」
あの工場の敷地内に侵入する地下通路の入口へ向かった。
◇◇◇
この辺りまでは明かりが使えるけど、工場内で下手に照明なんて使ったらあいつに気付かれそうだな。
廃墟と化して長い工場だが、運よくそこそこの強度は残ってくれている。
足場も丈夫だし、落下の危険は少なそうだ。
「チャンスは一度、ここに伊藤がいてくれれば……」
問題は
羽根を狙わずに一撃でトドメがさせるんだったらその方がいいし、羽根を奪った後でもどこに
もし仮に伊藤がこの場所にいれば屋根の上にいる
あくまで可能性だが、伊藤だったらその位はやってみせるだろう。
「いない伊藤に期待しても仕方がないか。ゴーグルの反応と最後に確認した姿を頼りに攻撃を仕掛けるほかないな」
ゆっくりと確実に
足場意外にもこんな便利な物が残っていたなんてな。
「だけどここから羽根を狙うのは不可能だ。内部からだから分かるけど、あの位置にいる
ああ見えて相当に狡猾な敵なのかもしれない。
あの位置にいるのも、この武器だと致命傷にならないのを理解しているからなのか?
確かに光弾した特殊弾は障害物にあたれば光球を発生させて止まる。
実銃より威力はあるかもしれないけど、貫通力って面に関してははるかに劣るんだよな。
「特殊トイガンだと威力が足りない。これでやるしかないな」
M4A1改をいつも通りに腰のホルダーに固定して、代わりに特殊小太刀を鞘から引き抜いてチャージボタンを押した。
特殊小太刀に
流石にここからじゃ斬り付けられないって理解してあざ笑ってるのかもしれないな。
昨日、パンチングマシーンの実験の時になんとなくあの技が頭に浮かんだ。
そしてあの日の夜、脳裏に一つの光景が浮かんだんだ。
この技の本当の名前も、その時に分かった。
チャンスは一回。今の俺に使える最大出力でこの技を放つ!!
「
突き出した特殊小太刀から
油断していたのか
屋根にも大穴があき、そこから青い空が覗いていた。
自分で使っておいてなんだけど、恐ろしい威力の技だよな……。
今の一撃でチャージしていた
「
いざって時の切り札だけど、戦闘中にはそう簡単には全力で使えない。
これからも使う時には慎重にいかないといけないな。
「あ、
運よく俺の手元に落ちて来た。
これはあの状況でも破壊できないんだな……。謎の多い物質だよ。
作戦終了!! さて、いったん戻るかな。
ただ、今日の実験は全部後日にして貰いたい。
身体が重くて仕方がないしね。
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