第九十二話 フレンドリーファイア対策
八月二日、午前八時三十二分。
東京第三居住区域の郊外に移動した俺たちはいつもの装備に着替えて、そこで待機させられていた。
実験内容があまりにも物騒なので、他のみんなは緊張しているかと思ったんだけど意外にそんな事は無かった。というか、むしろおかしすぎるテンションなんだけど。
「千寿~、今夜もしない?」
「那絵海、こんな時間からいけないおねだり? 人前なんだから、しっかりしなさい」
あの二人、普段は下の名前で呼び合ってるか?
というか、周りにハートでも飛んでそうな雰囲気なんだけど……。そこには突っ込まないでおこう。
この場所は郊外という事なので一応危険区域というか戦闘区域だ。
広島第二居住区域の様に内部まですべての区域が安全な場所などはほとんどなく、大体虫食いの様に安全区域内にいくつも
俺の故郷もそんな飛び地のひとつだったんだけど、運悪く滅んじまったんだよな……。
「待たせてすまんな。データ収集の準備に戸惑ったんだ」
「アレが全部その機械なんですか?」
「向こうのバス三台には分析用の機材が乗っておるな。カメラやセンサーは向こうの車で運んできておる」
全部バスじゃん。
いや、準備が大変だとか言ってたが、あんな規模の装置が必要なの?
実験する場所には犬や猫まで用意されているし訳が分かんないんだけど。
「あの犬とか猫も必要なんですか?」
「まさか人で実験する訳にはいかんだろう。モルモットでは小さすぎるし、仕方が無い事なんじゃ」
何するつもりなんだよ!!
俺は実験でもあの犬や猫を殺す真似なんてしないぞ。
「俺たちに何をさせるつもりですか?」
「そんな顔で言わんでも分かっておる。最初からあの犬や猫を使いはせんよ」
「本当なのよね?」
「嘘だったら動物愛護協会に訴えられますよ」
今から何をするのかは知らないが、この爺さんだったら犬猫どころか人でも同じ事をしそうだからな。
「最初はそこの卵が実験台だ。
「できますよ。十メートルくらい先でも余裕です」
「……出来る訳ないでしょ」
「
シールドの技術に関しては俺も他の人より上だと思ってるぞ。
普通は形や距離もそこまで変えられないからな。
「
「わたくしはそこまで得意ではありませんが、目の前に壁くらいは作り出せますわ」
「それで十分だ。距離は一メートルくらい離せるか?」
「ギリギリですわね」
なるほど。この実験をするためにシールド能力が必須だった訳だ。
流石に
で、何をさせるつもりだ?
「
「何をしたいか分かった。シールドでフレンドリーファイヤーを防げるかという実験か」
「その通り。最初は
撃ち合っても平気かどうかって事だな。
ただ、流石に
「それでは始めるか。……よし、始めるぞ」
「あの状態でやるのか」
「すごいカメラやセンサーの数……」
卵の周りには凄まじい数のセンサーが設置されているし、周りにもカメラがずらっと並んでいる。
というか、シールドを突破されたらそれ全部ぶっ壊れるんだけど……。
「失敗しても卵とセンサー類が犠牲になるだけだ。気にせずに撃て」
「わかりましたわ……。それっ!!」
光に包まれた特殊弾は俺の展開したシールドに弾かれて止まった。
実弾でも弾き返せるし、こうなるのは当然なんじゃないのか?
「やはり
「矛盾の話の実験ですか?」
「いや、突破できるかどうかを知りたいだけだ。同じ人間から供給された
「確かにその考えはありませんでした。これ以上の高威力で至近距離の敵を攻撃した時の為の実験ですね」
「その通りだ。自滅などされてはたまらんからな」
なるほど。あの光の弾の直径が三メートルとして、一メートルの場所に攻撃したら俺にも余波が来る。その時の為の実験なんだ。
「それじゃ始めます……。そこっ!!」
「ほう、卵は無事だな。周りは凄い状態だが……」
「地面がえぐり取られてるわよ。地形とかは考えなさい」
「そうですね。それは今思いました」
あまり地面の脆い場所でこんな攻撃をすれば自滅しかねない。
それに俺は無事でも、他の仲間を巻き込みかねないな。
「おい、今のデータを見せてくれ」
「はい。こちらです」
頭のネジが何本もぶっ飛んでる人だけど、あの量のデータをあんな短時間で何とかできる化け物なんだよな……。
「ここまでは予測通りだ。次は少々危険な実験だが」
「いよいよあの猫たちですか?」
「いや、卵が猫に変わっても変わらん。今問題になっておるのは、普通のシールドで
「……まさか!!」
「荒城君のシールドに向かっての攻撃だ。心配せんでも保険はかける。
なるほど、実験を理解した。
万が一に
それでさっきの実験をしたってのもあるんだろうな。
食えない爺さんだ。
「
「万が一の時でも大丈夫だ。絶対に守って見せるからな」
「……あの二人
「それはどうですかね」
気になる会話が聞こえたけど、今はシールドに集中しよう。
シールドの展開先は
「それでは始めてくれ」
「わかりました。そこだ!!」
光の粒子とかした特殊弾は
どっちだ!! 結果次第だと、俺はそのあたりも注意しなけりゃいけない。
「予測通りです。シールドに当たるとあの光弾や破壊の光球の威力は届きません」
「とりあえずこれで無意識にシールドを張れる者同士の部隊ではフレンドリーファイアの心配をしなくて済むな」
「それでもそれ以外の物。周りの状況には注意が必要です」
「市街地では天井が崩れてきたり床を抜いたりね。山間部だと木が倒れてきたりしかねないわ」
「そこだな。それは慣れて貰うしかないだろう」
威力がありすぎるってのも問題だ。
使い所を間違えると大惨事に発展しかねない。
「もしかして俺の特殊小太刀もシールドで防がれますか?」
「それも試してみよう。
「わかりました。行くぞ!!」
って、遠慮なくいったら今度はセンサーごと卵も真っ二つだよ!!
同じ
「突破しましたわね」
「という事はあの光の螺旋も味方を巻き込むという事だな。特殊小太刀を使う時は、周りに気を付けるんだな」
「何が違うんだろう?」
「そのあたりは今のデータから解析する。とりあえず今回のシールド実験は終わりだ。ひとまず休憩にするか」
暫くメイン武器は特殊トイガンにするか。
流石にこの特殊小太刀でないと倒せないような相手なんてW・T・Fくらいだしな……。
今だったらレベル二
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