第九十一話 仕事人間たちの何気ない雑談【坂城厳蔵視点】
八月一日、午後十時三十五分。防衛軍特殊兵装開発部の特別研究室。
これだけのデータを前に、悠長に食事会など出来る訳ないだろうが。
あの食事会を企画したのはワシではないが、わざわざ首都まで呼び出した
表向きは部下どもと出る事にしていたので、おそらく四人では食いきれぬ料理が出されただろう。
部下たちも昼間の後始末や何やらで忙しいが……。
映像を一時的に止めてはシーンごとに
以前の映像記録などから当時纏っていた
「今の所最大値は当然
特にハーフトリガー状態の特殊小太刀が発している
数値が特定できないのは無数に漂っている光の粒子全てがその数値であり、相互に干渉し合って正確な数値が予測できない為だ。
つまり、常に恐ろしい量の
「いつからというのは分かりきっておるが、やはり決定打になったのはひと月ほど前の
昔のデータも洗ってみたが、一年くらい前から徐々に覚醒しているように見えるがな。
しかし身体能力も含めて若干常識からはみ出してはいるが、そこまで人間離れをしている域までは達しておらん。
「輝の成長は当然の事ながら
「全員呼ぶと、広島第二居住区域が何を言ってくるかわかったもんじゃない。だが……、今回は
「
「
流石は
他の奴らではこうはいかんだろう。
国家機密には抵触せんレベルの情報を流して、逃げ回っとるんだろうしな。
「石に変えられた人を見捨て、
「腐りきってやがるな。それでも今回は東京第一三三
他の
もう一ヶ所何処かで出現データが取れればそれを理由に破壊できるのだがな……。
「最終手段だが、
「流石に
「やはりそう上手くはいかんな」
「年の功の
「オマエまで年寄り扱いか……、まあいい。それで、その二つの
「第三特殊機動小隊が明日の早朝遠征先の青森から帰還するから、その後すぐに……」
ワシは構わんと思うが、その下らんメンツに拘る奴らは多い。
だからワシや
「第三特殊機動小隊であれば間違いないな」
「おそらく明日の昼過ぎには
第三特殊機動小隊は防衛軍内でも信頼されており、重要な
他の部隊が劣っている訳では無いが隊長の
最新の装備があるから最近は
「問題は、
「その時は
「民間人に助けを乞うなど、国を防衛する者としてのメンツは丸潰れだからな。かといって、防衛軍が全滅するまで無駄な突撃を繰り返す必要はない」
「上ならそんな命令を出しかねんぞ。
「ああ、当時の幕僚が総辞任したあれか……」
樹海
今から約十一年前の春、当時の特殊機動連隊、機甲連隊、偵察連隊、普通連隊をはじめとする虎の子の防衛軍五万人を全国から掻き集め、樹海に存在するレベル二十三の
現在の感覚で言えば愚かな行為と分かるが、当時はレベル二桁を超える
当然の事だが、初期型の特殊トイガンや当時の特殊弾は殆ど役には立たず、群れと成して襲ってくる
石化等により確認された未帰還兵が約三万人。
転落などの事故による負傷者数千名。
石化が確認できず帰還しなかった行方不明者数百名。
持ち出した戦車や航空機などの多くを失い、防衛力を一気に半分以下にまで下げた防衛軍史上最大の愚行だ。
もし仮にこの時多くの兵を失っていなければ、数年後に改良された特殊トイガンやグレード十の特殊弾などでより多くの国土を奪還できていただろうなどとも言われている。
「
「破壊不可能とまで言われているリングすら破壊されたって話だからな。行方不明者は全員同じ運命だろう」
作戦自体は上手くいっておるし、食糧生産能力も格段に回復しておるから間違いではないのだが、いずれワシはその事で
「今の幕僚ならば、民間人だろうが何だろうが使える者は使うだろう。現場は反発するだろうがな」
「俺達も
「確かに……。この国を守ってきたという矜持があればあるほど反発するな」
その時は大手を振って定年退職するのもいいかもしれんが。流石にそんな奴はおらんだろう。
ブラックボックスの開発が出来るのは儂らだけだ。
「それでその凰樹に明日は何をやらせるんだ?」
「新型の問題点についての実験だ。あの威力で味方を巻き込む訳にはいかんだろう?」
「新型に関しては供給先に制限を設けるべきだろう。凰樹たちのような真似ができる奴がそういるとは思えんが」
「それに関しては残念だがその通りだ。使用者全員があの半分の威力でも再現できれば、この国を取り戻せるのだが」
今人類は大きな分岐点に立っておる。
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