第七十一話 たまにはゲームで息抜きを~


 温泉施設【海泉うみさと】。


 割と大き目のこの建物の中には、メインとなるほぼ二十四時間営業の浴場と午前十一時から午後九時まで営業しているレストランがあり、夜の十一時まで営業しているゲームセンターなどもある。


 一部のメダルゲームやテーブルゲーム、軽食系の自動販売機などは浴場の待合室などにも設置されてもいるな。あのメダルゲームはホント何処でも見かける気がするぞ。


 バーベキュー前は諦めていた窪内くぼうちが烏の行水で風呂からあがり、早速霧養むかい神坂かみざかを引き連れてゲームコーナーで遊んでいる。


 俺はゆっくりと温泉につかった後で施設内を散策しているが、別にゲームコーナーが嫌いな訳じゃないぞ。


 倉庫にあるゲームコーナーでたまに遊んでいるし、窪内に勧められて携帯型のゲーム機も買ってるしな。


「流石に霧養むかいは凄いな」


「ワンコインでいつまででも遊べるっすよ」


「このシューティングゲームの二週目を、此処まで楽勝でクリアできるもんだな」


霧養むかいはんは異常やて。わてはなんであれが躱せるんか理解できんのやけど」


 いつもの先読みだろうな。


 こいつと対戦型のゲームをすると先読み合戦になるから面倒なんだ。どっちかがミスをしたら勝負がつくけど、異常に勝負が長引く事が多くて時間切れも多い。


あきらも上手いよな?」


「俺は適当に切り上げるし、あまりこの手のゲームはしないな」


あきらさんはパズルゲームをしてる事が多いっスよね」


「息抜きにちょうどいいからな。蒼雲そううんだろ?」


「銭ドブが好きなんやな」


 運や設定次第では開始数秒で天和テンホウ終了なんて事もある特殊なマージャンゲーム。


 こいつは金がない癖に何度も金を突っ込んでる事もあったよな。


「百円が一瞬で消えるあの虚しさがな……。最近はあっちだ」


「いわゆる音ゲーか。あれも霧養むかいの方が上手いだろ?」


「上手い下手じゃないのさ。ゲームはどれだけ楽しめるかで価値が決まるんだぜ!!」


「そうやな。蒼雲そううんはんはゲームの事をよくわかっとりまっせ」


 窪内もそこまで高得点をたたき出すタイプじゃないしな。


 広く浅く楽しむスタイルだったか?


 ロールプレイングゲームとか気に入ったゲームはクリアするまでやるけど、シューティングゲームやアクションゲームだと適当に切り上げてるし。


 窪内はレトロゲームに関しては結構うまいんだけど、最近出たゲームはそこまでって感じか?


「結局、温泉に来たのがわてらだけって。さみしいでんな」


宮桜姫みやざきと楠木は酔いつぶれた妹ちゃんと伊藤をコテージに寝かせたら後で来るとか言ってたが、荒城と竹中も一緒に来るって言ってたぞ」


「その二人と同じ時間に来たくなかっただろうに……」


 佳津美かつみはあれでも他の三人を心配してついて来てる可能性があるが、竹中に関しては確実に見せ付けにいってるんだろうな。


 この辺りに人気は無いし強姦が出る可能性なんかは考えられないけど、小型GEライトタイプは出る可能性がある。


 竹中も割とアルコールが入っていたし、シラフなのは多分佳津美かつみと宮桜姫だけだ。


 あの二人は社交界というか金持ちの集まりで酒を飲んだりしているから、アルコール類の飲み方やわきまえ方も覚えてるんだろうな。


「持っとっても来そうにないし、買えりまっか」


「一応待ってたのか?」


よこしまな考えやないで」


「護衛というか、GE対策だろ? そんな物まで持ってきてるんだし」


 窪内は完全防水仕様のVz61スコーピオンまで持っていている。


 いざって時にはハンドガンより心強いしな。


「たまにはこうしてみんなで遊ぶのもいいよな」


「コテージに帰って何しまっか?」


「一応携帯型のゲーム機は持ってきたぞ」


「もちろん持ってきたっス」


「全員持ってきてるし、選択肢は多いな。対戦型の麻雀か、化け物狩りにでも行くか」


 化け物狩り。


 ファンタジー世界が舞台の剣と魔法で化け物や魔物を狩るゲーム。


 AGE活動をしている人間は剣での接近戦や魔法での一層でGEと戦うストレスを発散させていると聞く。


 そんなに剣で戦いたければ特殊小太刀を使えばいいのにと思うが、ゲームの影響で本気で特殊小太刀に手を出す馬鹿一定数もいると聞いている。


「どっちも時間がかかるが、麻雀も悪くない」


「ゲームだとイカサマとか無いのがいいよな。流石にあきら霧養むかいの先読みにも限度がある」


「トランプ型の麻雀だとイカサマできるしな」


 結局、俺達が海泉うみさとからコテージに帰るまで佳津美かつみ達は来なかった。


 安全の為にもう少し酔いを醒ましてくるつもりなのかもしれないな。

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