第六十七話 到着!! コテージのある海水浴場
午前十時二十五分、
幾つかのハプニングがあったが、俺たちはようやく目的地のキャンプ場がある海水浴場へ辿り着いたぞ!!
いや、俺も楽しみにしてたんだ。子供の頃は鬼の様な親父や母さんは海水浴どころかプールにだって連れて行ってくれなかったし、十歳で独り暮らしをするようになってからもそんな余裕なんてなかったからな。
箕那の一件があったから予定よりも一時間ほど余分にかかったけど、道路状況次第ではこの位の誤差は発生する事もあるし十分に許容範囲の出来事だ。
「駐車場はあっちだな」
「いらっしゃいませ、予約はされていますか?」
駐車場の受付でほとんどこっちを見ないで予約表に視線を向ける女性。
そこには何か気になる事でも書いてあるのか?
「コテージの予約をしている
「え? よくぞいらっしゃいました!! 駐車場は海岸に一番近い場所を確保しています。何か必要な物があれば遠慮なくお申し付けください!!」
指定されていた駐車場に車を停める。駐車場の監視員に予約していた車両である事を確認してもらってタッチパネルの管理表にナンバーや車種などを入力していった。
この辺りは車の盗難や着替えの盗撮などを防止する為だそうで、流石に有名な海水浴場だけあって他には殆ど人が居ないにも拘らずその辺りは徹底されているようだ。
俺達はコテージを予約しているが、この駐車場で着替える人もいるらしい。海岸側にはシャワールームも用意してあるみたいだな。
というか、向こうの車はいつものSPじゃないか? こんなところまでついて来たのか?
そんな事よりも……。
「海だ~!! 着いたぞっ!!」
「コテージのある場所から、結構離れてるんですのね?」
「ちょっと遠いんじゃない?」
「あそこだとまずかったの?」
海水浴場に近いコテージもあるが、
遠いといってもそこまで歩く訳じゃないし、向こうの方が色々と都合がよかったのさ。
「温泉!!」
女性陣の声が見事にハモったな。
俺達は事前に全部知ってたから驚きはしないぞ。
「残念ながら混浴じゃないが、美容とかにもいいらしい。昼は海水浴、夜はバーベキューを楽しんだ後で温泉でくつろいでコテージで一泊って予定だ」
温泉施設自体は観光客目当てで数年前に掘ったらしく、少し離れた場所には旅館も存在している。
旅館の宿泊料金は素泊まり一泊五万から最高三十万円までで旅館の中にも温泉が引き込まれおり、海の幸と居住区域の牧場で飼われている貴重な牛肉を使ったすき焼きなどが名物という話だ。
温泉旅館の方にしてもよかったんだが、どうせだったらキャンプもしたかったしな。
「
「海水浴の後にバーベキューをしてキャンプをできるだけじゃなく、
「俺達が計画したサプライズなのさ。どうだ、驚いただろ?」
サプライズ、温泉のある海水浴場。
遊ぶときは遊ぶ!! 予算に上限が無かったから最高の条件が揃った場所を探し出して予約を取ったのさ。
温泉施設の使用予約も事前に入れているので、利用を断られるという事は無いぞ。
「よし、コテージに荷物を移動させた後で着替えて浜に集合だ!!」
「飲み物とかはこっちで用意するから、気にしないで良いぞ~」
「は~い!!」
コテージや温泉施設が海水浴場から少し離れているといっても大通りの道路を隔てている訳じゃ無くて、ほんの少し整備されている歩道を歩いてくるだけだ。
歩道沿いや駐車場周辺には【GE出没注意!!】と書かれた看板が何ヶ所も立っており、まるで熊の目撃情報がありますといった感じで注意喚起がされていた。
「近くに
「それは地元の部隊に任せまへんか? ま、放置しとる辺り離れた場所にあるんとちゃいます?」
「それもそうだな。ところで、
「銛っスよ。ヤス用の」
素潜りをして魚を銛で突く【スピアフィッシング】と呼ばれるレジャーがあり、今現在ではこの辺りでも禁止されていない事は確認している。
魚はだいたいどれを取ってもOKで、特に量や種類が制限されることは無いそうだ。
漁港が壊滅していた十年近くの期間が禁漁状態だった為に海産資源が異常に増えたのが理由だけど、漁船は昔ながらの燃料式なのでそこまで船を出す訳にはいかない。
その為に海岸沿いの居住区域では手軽にさなかなどを捕まえる事が出来るらしいが、場所によってはGEに襲われるので注意が必要という話だ。
「この辺りは鮫もあまりいないし、丁度いいかもしれんが」
「海水浴に来て銛突きとはいい趣味でんな」
「輝さんたちと張り合えるとは思ってないっスよ……」
皆で遊んでいる時に一人で海に潜って銛突きなどしていたら、楽しめる時でも楽しめないだろうに。
あれか? その成果をバーベキューの時に披露して注目されようって考えか?
「あ、いたいた。凰樹さ~ん。神坂さ~ん。霧養さ~ん。
着替え終えた後で浜に向かって一番にかけてきたのは鈴音だった。
着ている水着は殆ど白に近い位に薄いピンク色のワンピースで、腰の所に可愛いフリルが付いている。
「なんでわてだけあだ名やねん」
「懐かれてるんじゃないっスか? へ~、結構似合ってるっスね」
「霧養さん、ありがとうございますっ!! お姉ちゃんから水着を買い物に行くって話を聞き出した後、急いで用意したから似合ってるかしんぱいだったんだ~♪」
なるほど、その日からついてくることを計画していたのか。
相変わらず行動力があるというか、凄い子だよな。
「輝さん、お待たせいたしました」
「みなさ~ん、おまたせしました~♪」
「鈴音っ、ちょっと待ちなさい!! あ、凰樹君、ごめんなさい妹が……」
「輝、おまたせっ!!」
頭には日焼けの防止の為なのか小さ目でデザイン重視の麦わら帽子をかぶり、右手首と左足首にはハイビスカスをイメージした形の色とりどりのシュシュを付けていた。
左手首のリングは完全防水なので海水に付けても平気だ。ホント謎な機械だよな……。
伊藤は濃い目の青を基調にしそこにカラフルなビーンズ柄の迷彩が散されたビキニタイプの水着で、上下共に控えめなフリルがワンポイントとして飾られている。
楠木は赤を基調としたワンピースタイプで胸元と腰にレース状のフリルが幾重にも施されている。背中には羽を模したレース状のフリルが飾られ、日焼け防止に白を基調とした小さめの帽子をかぶってるみたいだ。
「へえ、似合ってるじゃないか」
「私はどう?」
「良く似合ってるな。後は竹中が集まれば……って」
竹中の水着は中央を紐で止めているタイプのビキニで、おおきな魅惑の果実を包み込んだライトブルーの下地にラメ入りのバタフライが数匹散りばめられていた。
下も同じ様なデザインだが、あまり見えない様にパステルグリーンを基調としたレースのパレオを撒いている。
「凄いっスね」
「ああ、アレはもはや凶器だ。流石の
「
「騙されました。あの時買っていたのは、もっとおとなしめで可愛いデザインの水着の筈ですわ」
朴念仁だと言われているが俺だって不感症でも何でもないんだ、
走る度に大きな果実が上下に激しく揺れていたが、直視するのは危険だと本能で察した男性陣は全員そっと視線を逸らした。
真夏の輝く太陽の下で、氷点下かと思われるような無数の視線が突き刺さる事に耐えられなかったからだが。
「あ~き~らっ♡ どう? 似合うかな?」
「あ……ああ、良く似合ってるよ」
「ありがとう、凄く……嬉しいよ♪」
「あれ? その手に持ってるのなに?」
楠木は霧養が手にするスピアフィッシング用の銛を見て首を傾げていた。
海水浴場で遊ぶ為に必要とは思えない物だしな。
「え? ああ、これはGE用の特殊銛っス」
「水生タイプはいないのに? 用心深いんですね」
どこの世界にGE用の銛があるんだよ!!
こいつ、一瞬で手のひらを返しやがったな。
「銛突きはどないしたんや?」
「魚なんて買えばいいんスよ」
俺もその意見に賛成だし、せっかくだから全員で楽しみたいからな。
せっかく海水浴に来たんだ。存分に楽しもうぜ!!
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