第三章 楽しいサマーキャンプ編
第五十六話 試験結果発表
七月十九日の火曜日、午前九時十七分。
戻ってきたテストは国語総合、世界史、日本史、政治・経済、数学、化学基礎、英語の八教科。
選択科目に関してはテストは半年に一回だし、こんなに大きな扱いになる事は無い。
一応卒業すれば
各学年ごとに各教科の上位三人及び総合の上位十名には特別食券が進呈されるから、自信がある生徒は期待に胸を膨らませながら上から自分の名前を探したりもするらしい。
「こうして登校してきたけど、二学期までまともな授業はないけどな」
「俺たちのせいでもあるんじゃないのか?」
先日の
各学校でその生徒たちの受け入れをしているらしいが、石化していた期間によって学習内容にかなり差があるしそれぞれがどのくらいの学力を有しているのかまでは流石に把握しきれない。
そこで全員に志望先の学校を幾つか指定させて、八月二十日までにそれぞれの学校の教育基準に合わせた課題を提出させる事となった。
最後に基本八教科のテストを行い、合格点に達した生徒だけが希望した学校に編入されるという事だ。
それでもかなりの数の生徒が編入できそうにないので、奪還した区域にある学校の幾つかを夏休み中に整備して臨時の学校として活用するらしい。
「助けた後は知りませんじゃないが、そこは流石に国の仕事だ。余計な犠牲者が出なかっただけでも十分だろ」
「そのあたりも過去の実績で報告されてたけどな」
石化から戻った人には無敵時間というか命に別状がないか判別する力が一時的に備わるみたいで、石化した身体が水没していたりすると何故か安全な場所まで瞬間移動したりするらしい。水の中に居ても溺れもしなければ水が灰にはいる事もないって話だ。
こういった救済手段が仕込まれているから、本気でGE側は陣取りの様なこの戦いをゲームとして楽しんでいるんじゃないかと思う事もあるが、こちらにとって不利益がある訳じゃないから追及する事は無いだろう。
「そのおかげで解放区域の探索なんて仕事があるんだけどな」
「この国の場合、左手首のリングで捜索可能だ。救助するのは人海戦術だけど」
解放区域内には
捜索任務にあたっていたAGE部隊の多くは救助活動を優先させていたものの、流石に目の前に転がる
百万円の札束が転がっているようなものだし、その行動を責める者は何処にも存在しないさ。
「そんな事より、アレを確認しに行こうぜ」
「なんだ
「馬鹿言うな。戻ってきた
合計幾つかなんてのは、朝の時点で分かっているからな。
別にテストを見せあった訳じゃないが、上位にいるのは俺や窪内くらいか?
「赤点を回避できただけでも十分っス」
「竹中も赤点を回避できてたみたいだしな。アレは伊藤のお陰だろうが……」
「緊急のテスト対策をしたんだったか。竹中の場合は仕方がないだろう」
赤点を回避できただけでも凄い事だ。
本当に心が死んでいたみたいだし、あの状況で勉強なんて手につく訳が無い。
「う……、嘘でしょ」
「アレは生徒会副会長の
「学年が違うのに何で一年の結果なんて見ているんだ?」
「わてらの点数でもみとったんやろ」
一年総合一位
おおっ、GE対策部のメンバーが上位三位までを独占して、上位十位までに四人も入っているのか。
「アレ? 生徒会のやつら、上位にいないじゃん」
「一番上で十三位だってよ。気楽でいいよな」
生徒会から目の敵にされる事の多いAGE系の部のメンツはワザと聞える様に話しながら、喜多川の前を通り過ぎたりもしていた。
いろんな形で金食い虫なAGE系の部は予算が多いし、GE対策部の予算は生徒会の予算よりも多かったりする。
これには訳があり、この学校から出る予算の外に対GE民間防衛組織からも寄付という形で結構な額があてられているからだ。
その為に毎回他の部から予算分配の件で生徒会に苦情が寄せられ、それを処理する喜多川なんかは迷惑だって話だな。
まあ、AGE系の部が目の敵にされているのは予算の件だけじゃなく、今まで散々学生寮や校内で問題行動を繰り返しているからだが……。
◇◇◇
七月十九日の火曜日、午後二時三十二分。
先日の
「部員全員が揃ってトップランカーってのも凄いですよね……」
「いや、もうトップランカーって呼び方もどうなんだろうな。正確には明日から変わるらしいが」
今回の
「七月二十日以降、十億ポイントを超えたランカーは全員レジェンド枠として通常のランキングからは除外する。なおレジェンド枠に移行後もポイントの加算などは今迄通り行われる……。か」
トップランカーを目指して頑張ろうにも、上位九位までが実質塞がっている状態ではセミランカー以下のAGEのやる気が削がれるという事だろう。
今までのトップランカーが三億ポイントだった事を考えれば、基準値の十億ポイントが誰を対象にしているか一目瞭然だが。
「あとは撃破ボーナスと部隊ボーナスだね。攻略のメイン部隊とサブの部隊の細かい規定。共闘申請された部隊に対するポイントの変更……」
「ま、予算も無限やありゃしませんからな。
そんな大量のポイントは直ぐに使いきれないとしても対GE民間防衛組織にはそこまで無尽蔵な予算が有る筈も無く、
元々AGEが単独で
二度あることは三度あるというし、ここらで調整をしておこうって事だろう。
改定後の基準としては、個人の撃破ボーナスなどは今迄通りに支払われ、作戦行動に参加したメイン部隊には五十億ポイント、共闘などで参加したサブ部隊には二十五億ポイントが支払われる。
共闘したサブ部隊が幾つあって何人いても最高で支払われるポイントは二十五億ポイントで、それを各部隊で分割して受け取る形だ。
「
「部隊運営費は十分ありますし、無茶をしなければ当分予算に困る事はありませんわ」
「流石にこれ以上
「先日の件も俺が頼んだせいだしな。流石にあそこ以外はもう考えていないのか」
故郷のレベル四。
孤立化もAGEのみでの
はっきり言えば、今は特殊トイガンなどの性能が向上するのを待って、それを使って攻略するのが一番の近道だと思っている。
チャージ機能が搭載された試作型次世代トイガンも悪くないんだが、アレの試作の文字が取れてもう一段階くらい性能が上がれば俺達だけでもあのレベル四の
「今すぐって事だったら流石に無いぞ。だから規定の改定をされても別に関係ないさ」
「真似をして
「そいつらは自分の身を以て代償を支払うだろうよ。もう二段階くらい特殊トイガンとかの性能が上がれば、レベル一
そもそも
「とりあえず、あと数日で突入する夏休みの事で話をしたいんだが」
「夏休み……」
「基本的に活動は週一か週二で行えばいいと思っている。今まで結構な頻度で
「えっと部活の日は
「天候と状況次第だが、夏休み期間中は特に
これには訳があり、前回のKKSとKKIの二ヶ所の廃棄地区の奪還によって近場の危険地区がかなり限定された事が大きい。
その為に次に攻略する
「という事で前回話に出ていたキャンプの事だ」
「国道は再整備及び主要道路奪還作戦で通れる場所も多いし、日本海側でいい場所を見つけて来たぞ。隣の県だけどな」
再整備及び主要道路奪還作戦……。
日本列島を縦断する国道のうち、低レベルの
ただし道路から僅か百メートル程度の位置に高レベルの
「コテージ予約可能、シャワー設備完備、BBQ用品の貸出あり、高速道路があるからマイクロバスを使えば片道三時間程度の場所だな……」
「そこにしようよ!! せっかくのキャンプなのに、近場のキャンプ場なんて味気ないし」
「その通りですわ!! テントでは無くて、コテージというのも最高ですの♪」
こいつもピクニックやキャンプが大好きそうだしな……。
「では此処に予約するとして、日程はどうする?」
「天気予報の台風情報だと暫く大丈夫っぽいな。二十四日あたりはどうだ?」
「予約が取れるのでしたら、その日にしませんか?」
「それじゃあ二十四日の予約で動くぞ」
どこの海水浴場やキャンプ場もだいたい
また、夏休みに海水浴場でキャンプができるような部隊なんて限られているし、予約が取れない所なんて滅多には無かった。
近くに住んでいる奴は日帰りで泳いで帰るらしいしな。
「食べ物に飲み物。それに海に行くなら……、水着?」
「凰樹君、今日の部活って何時までするの?」
「特に問題が無ければこの話し合いが終わった後に解散したいと思う。明日は一学期の終業式だし部活も休みでいいだろう」
各所にはその日程で移動申請を出したし、宿泊先の連絡先まで申告させられたからな。
どうせ連絡は個人用の小型タブレットの方に来るだろうに。
「明後日は夏休み初日だし、皆で買い物に行かない?」
「いいですわね。以前の再開発で作られたショッピングモールに行けば、色々揃いますわ♪」
「何時に集合しますか~? せっかくですから、おしゃれなカフェでお昼も食べたいですし~」
「行くのはいいけど、ちゃんと変装していけよ」
「分かっていますわ」
変装しないと店に辿り着く前に人に囲まれて動けなくなったりするしな。
俺達にお礼を言いたいって人がものすごい数いるそうだし、仕方が無い事かもしれないけどさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます