第二十二話 異常発生!! 迫りくる無数のGE


拠点晶ベース傍にある道路の三百メートル先の画面が真っ赤で~す!! 環状石ゲート方面から大量の小型GEライトタイプが迫ってます……。情報を訂正、二匹中型GEミドルタイプが混ざっていると予測されま~す」


 今日も伊藤いとうはバスの中で索敵任務中だ。


 護衛として楠木くすのきを残してあるし、ここを突破されない限り万が一という事は無いだろう。


 伊藤の通信を受けて桐井は傍に用意していた超小型タブレットの画面を覗き込んだが、前方を埋め尽くす紅点の違いなどつく筈も無かった。ほとんど違いが分からないほど真っ赤だしな。


「すごいわね、あの子。この状態で紅点の見分けが付くの?」


「自慢の隊員でっせ。聖華ちゃんには何度助けられたかわかりまへんな」


 小型GEライトタイプに混ざって中型GEミドルタイプが存在するかしないかといった情報は、迎撃できる高純度の特殊弾を用意している俺達の部隊であっても死活問題だ。数が多ければ流石に被害を受ける可能性がある。


 通常の部隊ではその情報を得るか得ないかで最悪全滅する危険性まであり、伊藤いとうの異常に高い索敵能力を活用しない手なんてないからな。


「あそこの奥。MIX-Aなのは間違いないが小型GEライトタイプに混ざって以前見た鼠タイプの中型GEミドルタイプが二匹いるぞ。あの大きさだと分かりにくいんだよな……」


「あれは私が倒す。まわり、お願い」


「了解。派手にいきまっせ!!」


 窪内くぼうちはM60E3フルカスタムにグレード四の詰まったマガジンを装着し、数十メートル先の地面を覆う小型GEライトタイプ目掛けて特殊弾を撃ち始めた。小型GEライトタイプ相手にグレード四なんて使えば完全に赤字だけどな。


 窪内は一発五百円のグレード四の特殊弾が無駄弾にならない様に距離を見極め、ギリギリ効果が発揮できる距離に着弾させて十分に距離を保てる状態で小型GEライトタイプを倒し続けていた。


 いかに特殊弾とはいえ、射程距離から外れれば威力を発揮しないんだよな。しかも射程はあまりにも短い。


 窪内に続いて俺も迫りくる小型GEライトタイプに向かってトリガーを絞った。やっぱり俺がグレード四なんて使えばオーバーキルもいい所だよな。


 続いて佳津美かつみと神坂、霧養が攻撃を開始したがひとり竹中たけなかだけが冷静に中型GEミドルタイプとの距離を測り、最高純度の特殊弾が込められたPSG―1で中型GEミドルタイプの頭部に狙いを定めていた。


 俺もグレード四を使っているから中型GEミドルタイプも纏めて倒せるんだけどな。ここは竹中の実力を信じて任せてみるか。苦労して入手したの威力も知りたいしな。


「流石にあきらは同じ弾を使っても威力が段違いだな」


「グレードが高い弾やと差がエグイでんな」


「あ……あなたたち、いったいどのグレードの弾を使ってるの?」


「今日は特別にグレード四を使ってますよ。明らかにオーバーキルですがどれだけGEが押し寄せて来るか分かりませんし、一匹にかける討伐時間を可能な限り短くしたかったので」


 この様な状況だとこの僅か一秒程度のタイムロスが致命的な状況を生み出す。


 俺たち以外の部隊、隣で一緒に迎撃している桐井の部隊にももう少しグレードの高い弾を使って貰いたいところだが向こうにも予算というか懐事情があるだろうしな。


「グレード四? あの威力で?」


「ああ、おうさんの場合同じグレードでも威力がちゃいまんな」


「ブラックボックスに何か秘密があるのかな?」


 特殊トイガンの内蔵している心臓部分のブラックボックスには謎が多い。これだけは窪内ですら手出しができないと聞いているくらいだ。


 このグレードの弾を俺が使った場合、大体威力は他の奴らの二倍程度か?


 となるとアレを使った場合はもう少し威力が上がる可能性はあるな。


「そこ!!」


 竹中の使用する一発五万円するグレード十の特殊弾は一撃で中型GEミドルタイプの頭部を吹き飛ばして完全に息の根を止めた。


 流石に防衛軍が使うレベルの特殊弾は威力が段違いだ。


「ちょっと!! ……なんだ輝、今の弾は?」


「特別ルートから入手した防衛軍で使ってるグレード十の特殊弾だ。今回は中型GEミドルタイプが押し寄せる可能性もあったから用意してみた」


「流石の威力ね。中型GEミドルタイプが一撃だわ」


 竹中はもう一匹の中型GEミドルタイプも同じように一撃で倒し、群れの中に他の中型GEミドルタイプが混ざっていないか探している。


 十五発預けてあるが、あの威力に酔いしれて無駄撃ちしないのは流石だ。


「羽振りのいい部隊はやる事が派手よね……。守備隊うちの隊員が目を点にしてるわよ」


「他の弾はグレード四です。グレード三と一発辺り二百円しか変わりませんよ」


「普通学生AGEキミ達以外の部隊だとそのグレードの弾を使うって選択肢なんて無いんだけどな……。そういえばキミ達ってうちの部隊より良い装備してない? おかげで此処の防衛は上手くいきそうだけど……」


 AGE登録したての新人だと正規ルートで頼んでもグレード二の特殊弾しか売って貰えない。高いグレードの弾を無駄撃ちされると困るからだ。


 一度使用した特殊弾はブラックボックスの影響でGEにあたらずに地面に落ちてももう使う事はできないからで、悪質な業者などはそれを回収して正規の弾に混ぜて売っていたりもする。


 ほぼ無限に生産されている特殊弾とはいえ、コアの部分に魔滅晶カオスクリスタルが使ってあるのであまり無駄にしたくないという事だろう。


「やっぱりここにGEが集中していますね」


「これだけ拠点晶ベースに近い場所でこの数のGEを倒されれば可能な限りこっちに向かわせるんじゃない?」


 GEに思考能力があるかどうかは分かっていないが、ここにこんな強敵が待ち構えている事は予想外だろう。


 すでに千を軽く超える小型GEライトタイプを倒され、僅か二体とはいえ中型GEミドルタイプまで同じように倒されたんだ。


「上空から飛行タイプ多数。倒した後の魔滅晶カオスクリスタルに気を付けてください」


「当たると痛いでっせ。頭はヘルメットで護られてますし、顔はゴーグルとマスクで覆われてまっから当たると比較的痛いのは身体の方でんな」


「キミ、タクティカルベストの下に分厚い防弾チョッキ着てるよね?」


でっせ!!」


 防弾性能が一番いいボディアーマーを装備しているのは佳津美かつみだろう。筋肉質に見えるように特殊繊維で色々と細工をしているしな。


 それに飛行タイプと言ってもせいぜい二十メートルくらい上を飛んでいるだけだ。


 そこから落ちてくるオハジキ大の魔滅晶カオスクリスタルに当たってもそこまで痛くはない。


「落ちて来るこれが意外に厄介よね~」


「怪我はしませんが、他のGEを狙う時に邪魔ですね」


 GE用の特殊装備は多少の衝撃を吸収できるように作られているし、GEによる様々な攻撃に対応して破壊されにくく作られている。


 その上、タクティカルベストなどを重ねて装備している為に相当打ち所が悪くない限り怪我などする事は無かった。


 それでも邪魔な物は邪魔だが。


「見ててください、飛行タイプは得意っス!!」


 霧養は空中から襲い来る小型GEライトタイプの動きを先読みし、一匹一匹確実に撃ち落としてゆく。相変わらず見事の腕だ。


 桐井の部隊も上空のGEを狙っているが、良くて五発に一匹程度しか仕留められていない。


 あの威力って事はグレード三かな? もう少しグレードの低い特殊弾を使っていたら危ない所だ。


「霧養はんは相変わらずでんな」


「手に負えない数が来た時だけ俺たちが手伝えばいい。地面を埋め尽くすあいつらを先に何とかしなけりゃいけない」


「でも群れの後ろにいるGEの数は減ってるみたいよ」


「伊藤です~。とりあえず今見えているGEで波は引いたみたいですね~。その後ろにGEの紅点は確認できませ~ん」


 という事は今見えてるだけでGEは打ち止めか。


 三千体近くいた筈だけど、正確な数はわからないな。地面を埋め尽くしているあの大量のオハジキ代魔滅晶カオスクリスタルをどうするかって問題も大きい。


 集めるのか? 木の枝とか木の葉に混ざったあの小さい魔滅晶カオスクリスタルをひとつずつ拾い集める……。どれくらい時間がかかるか分からないが、間違いなく日が暮れそうだ。


「KKS二七六の守備隊から緊急連絡。小型GEライトタイプは尚も増加中、迎撃に向かった学生AGEの被害甚大。事態収拾の為に守備隊の決死隊による拠点晶ベース破壊を決行する。KKS二七三方面の守備隊は増援の小型GEライトタイプに注意されたし。以上!!」


「向こうが先に動いたか。でも、小型GEライトタイプに苦戦するような状況で拠点晶ベースなんて破壊できるのか?」


「先日特殊ランチャーが届いてたから破壊手段は持っている筈よ。破壊できるかどうかまでは保証出来ないけど」


「特殊ランチャーを持っているだけで簡単に拠点晶ベースが破壊できるんだったら、拠点晶ベースなんて残ってないだろうな」


 拠点晶ベースの破壊で一番苦労するのは周りに存在するGEの排除だ。


 うちの部隊だとその日のうちに拠点晶ベースまで辿り着けるが、並の部隊だとひと月くらいかけて周りにいるGEを排除する事も珍しくない。


 その為に他の部隊が周りにいるGEを削った拠点晶ベースを狙って破壊を企てる奴らも存在する位だ。誰だって余計なリスクを冒したくないからな。


「こっちの拠点晶ベースだけでも確実に破壊していた方がマシか。その後向こうが苦戦しているようだったら応援に向かってもいい」


「そうした方がいいと思うけど、拠点晶ベースの破壊に関してはうちの部隊はあまり役に立たないからどうするかよね」


「それに拠点晶ベース破壊用の特殊ランチャーが無い。そっちにある分を使う場合は、本気でうちの部隊はお荷物だ」


「無いんですか?」


「ないのよ。守備隊相手でもそう簡単に幾つも申請が通る訳じゃないから」


 拠点晶ベースの破壊実績があると割と申請は通りやすいって聞くけど、それでも守備隊の支部一ヶ所に月に二発程度しか申請は通らないって聞いている。


 同じ部隊にあまり無理をさせたくないって事と、特殊ランチャーも改良を重ねているから最新型を使ってほしいって理由らしい。


 だから幾つか特殊ランチャーを在庫として保管している部隊もあるらしいが、あまり溜め込み過ぎると各所からお叱りを受けるそうだ。それともう一つ、横流しも疑われる。


「うちはおうさんがおるから必要あらへんけど、他の部隊は大変でんな」


「必要ない?」


「ああ、俺は特殊小太刀これ拠点晶ベースを破壊できますから」


「……ランカーってのは、いろいろおかしい連中しかいないのか?」


 失礼な。


 特殊小太刀で拠点晶ベースの破壊くらい……、俺にしかできないか。


 他のランカーにも特殊技能持ちはいるけど、割と派手な技を使えるのは数人だけって聞いているしな。


毛利川もりかわ~、ランカー相手に失礼な事は言うなよ。知り合いとはいえ、その気になったら守備隊の支部程度潰せるだけの権力はあるぞ」


「し……、失礼しました!!」


「ランカーにおかしい連中が多いのは承知の上ですよ。逆におかしくなければランカーなんかになれませんし」


 雑談をしているうちにこの防衛拠点に押し寄せて来たGEの群は壊滅した。


 さて、問題は拠点晶ベースの破壊なんだが。


「三百メートルくらいですからこのまま歩きますか」


「そうね……。私たちは役に立たないからここに居ましょうか? 共闘になるとポイントを分けないといけないでしょ?」


「同じ拠点で迎撃してる訳ですし、ここに居ても共闘ポイントは入ると思いますよ。残る問題はこの場にあるアレですが……」


 少し先の道路やその周囲に無数に散らばる大量のオハジキ大魔滅晶カオスクリスタル


 正直うちの部隊としては拠点晶ベース破壊報酬とそこで手に入る希少魔滅晶レアカオスクリスタルだけで十分に採算が取れるからアレはそこまで必要じゃないんだけど……。


「大量に転がっとる魔滅晶アレはどうしまっか?」


「うちが持って来てる野外用の大型掃除機で掻き集めましょう。塵も積もればじゃないけど、うちの部隊なんかだとアレも貴重な収入源なのよ……」


「俺にだって貴重なポイントの種だよ。人数割りでいいからこっちにも寄越せよ」


「人数割りって、いいの?」


 実家が金持ちで資金には困っていないだろうが、潤沢な資金をポイントに換算出来る訳では無いから佳津美かつみは難色を示しているみたいだな。


 此処で撃破した小型GEライトタイプの大半は俺達の部隊の戦果であり、更に言えば二匹存在した中型GEミドルタイプも竹中が撃破したという事実がある。撃破ポイントは個人に振り分けられるとはいえ、人数割りにするには桐井達の部隊の戦果が少なすぎる上に使った費用が桁違いだ。


 ただ、向こうもグレード三を使ってあれだけ無駄撃ちしてれば、結果的にこっちとたいしてかかった経費は変わらないだろうけどね。


「そちらがそれで良ければ問題無いですよ。数が数ですから、掻き集めるのも大変でしょうけど」


拠点晶ベース破壊後に集めればいいから大丈夫よ。ホント羽振りのいい部隊はその辺が適当よね~。キミ、少し年上の彼女なんて欲しくない?」


「隊長!! 純朴な学生をからかわんでください。すまんな、うちの隊長はいい人なんだがそろそろ婚期が……」


毛利川もりかわ~、後で此処の魔滅晶カオスクリスタルを全部集める様に。ひとりでな~」


「……了解です」


「「「馬鹿が……」」」


 周りの守備隊員は全員、迂闊な発言をした毛利川に冷たい視線を向けていた……。


 女性に年齢や婚期の話は禁句だろうに。


「ん? 伊藤から通信? このタイミングでか」


「輝さん!! 拠点晶ベースの後方に大型の紅点が出現しました!! 大型GEヘビータイプと予測されます!!」


「突然? ……いや、活動を半停止状態にしてたんだろう。滅多には居ない筈だけど過去にそういったタイプがいたと確認されている」


 大型GEヘビータイプを示す紅点を伊藤が見落としたという事はまずない。


 という事は地中深くにに潜るタイプか、岩なんかに擬態して仮死状態になるGEのどちらかって事だろう。


 こいつらはレーダーで見つけにくいんだよな……。というか、こっちのゴーグルに内蔵したレーダーだとまだ捕捉できないんだけど……。


「こっちの超小型タブレットだと分からないんだけど、本当に大型GEヘビータイプなんているの?」


「うちの伊藤がいると断言した以上、確実にいるんでしょうね。……多分コレですよ」


「コレ? このよく見ないと分からない位に薄っすら反応してるコレで大型GEヘビータイプってわかるの?」


 超小型タブレットでも本当に赤い染み程度の紅点が映っているだけで、装備しているゴーグルではその違いすら分からない。


 知らずに拠点晶ベースまで行っていたら危ない所だった。


「自慢の隊員でっせ。聖華ちゃんには何度助けられたかわかりまへんな」


「それ聞くの二度目だけどあの子が凄いのはわかったわ」


 拠点晶ベースの近くで待ち構えていたのは十メートル程のヒキガエルの身体を持ち、頭部から蟷螂の上半身を生やしたMIX-Aの大型GEヘビータイプ


 幾ら姿がカエルでも、あの大きさだと怪獣の様にしか見えないな。


 ヒキガエルの本体はなにかを威嚇するように素早く舌を出し入れし、頭から生える蟷螂の上半身も鎌を振り上げて戦闘態勢をとっていた。


大型GEヘビータイプはうちの装備だと歯が立たないわ。悪いけど撤退するわよ!!」


「待ってくださいここまで来たんです。大型GEヘビータイプも誰かが何とかしないと何処かで被害がでますし」


「そんな事は分かってるけど……」


 大型GEヘビータイプって事になると、グレード四の特殊弾でもダメージが入るかどうか微妙なレベルだしな。


 竹中に持たせているグレード十だったら確実にダメージが入るけど、十三発しか残っていないからあれでトドメを刺すのは無理だ。


 防衛軍はそのグレード十を大型GEヘビータイプが活動を停止するまで撃ちまくるらしい。それが任務だろうしね。


「此処まで近付いたいまなら、あいつを倒すいい機会です。たつ、グレード四の特殊弾で大型GEヘビータイプを三秒ほど攻撃してくれ。碌にダメージは入らないだろうけどそれで十分だ」


をやるきでっか? 了解でっせ」


 最大の速度であのヒキガエルの胸元まで突っ込んで、特殊小太刀で斬りつければいい。


 流石に何もしていなければ迎撃されるだろうが、反対側から銃弾を浴びせ続ければ数秒程度の時間は稼げる。


「頼んだ」 


「任されたで!!」


 拠点晶ベースを破壊する時と同じ様に特殊小太刀を握りしめて人差し指で柄の部分にあるトリガーを押しながら精神を集中させる。


 蜘蛛型リビングアーマーの時と同じだ。大型GEヘビータイプと言えども一定レベルを超えるダメージを受ければ活動を停止するからな。


「そこだ!!」


 俺はヒキガエル姿の大型GEヘビータイプのやや後方から突進して身体の中央部分に斬撃を叩き込み、その部分からヒキガエル姿の身体を真っ二つに斬り裂いた。


 多分こっちが本体だと思うが念の為に頭部に生えていた蟷螂の上半身も真っ二つに斬り捨てる。……その瞬間大型GEヘビータイプは分解を始めたので、どうやら蟷螂の方が本体だったみたいだな。


「嘘!! なんであんな真似が出来るの!?」


「あんな真似が出来るのは、世界広しといえどおうさん位でっしゃろ」


「ついでに拠点晶ベースに一撃入れて破壊したっスね。これでこの辺りに増援の小型GEライトタイプはもうこないっス」


 使った生命力はライフゲージは合計二十。このまま向こうの応援に行くのは流石にきついな。


 俺が少しくらい強くても生命力はライフゲージの制限がある以上はそこまで連戦が出来ない。現状だとこの辺りが個人の限界だと思う。


拠点晶ベースが消滅したからこの辺りは解放されたはず。隠れていた小型GEライトタイプはいずれ自壊して消えるでしょう」


「お疲れ。流石にあきらは凄いな」


「ありがとう。普段はソロでAGE活動をしている佳津美かつみも相当に凄いさ」


 ソロ活動をしているAGE最大の問題はやはり生命力はライフゲージだろう。


 ダメージを食らって動きが悪くなれば撤退する事も難しいし、その場で戦闘を続ける事はもっと難しい。


 一人だとそういった時に誰かの援護も期待できないし、少しでも油断すれば即石像だろう。


「お疲れ様。ホント凄いのね」


「いえ、一人だと流石に無理ですし、誰かの援護射撃が無いとヒキガエルの懐まで突っ込めませんから」


「いま、たぶん百メートル九秒くらいで走ってたよな?」


「あの装備を背負ったままな。アレなしだとどのくらい早いんだ?」


 グレード四の特殊弾を撃ちまくっている時も守備隊員達は俺達を何か別の生き物か何かの様に見ていたが、ヒキガエル姿の大型GEヘビータイプを倒した後は何となく怯えている気さえする。


 いや、流石に俺もあんな真似は立て続けには出来ないから。


「なあ。ランカーの率いる部隊って皆あんな化け物揃いなのか?」


「あの霧養って隊員は俺達と同じレベルだと思ったけど、飛行タイプをああも簡単に撃ち落してたからな……。人は見かけにゃよらないな」


「あの紅点を見分ける索敵担当とかカスタマートイガンスミス窪内に、スナイパーも……。極め付けが大型GEヘビータイプを特殊小太刀で斬り殺すして拠点晶ベースを破壊する隊長の凰樹か……」


「俺達普通のAGEじゃ、ああはできゃしないよ」


 駐車場に戻る間、守備隊員たちは声を潜めて色々と話してたみたいだけど聞こえてるからな。


 俺が仲間に恵まれているのは否定しないけど、うちの隊員は別に化け物じゃない。


 守備隊員は地面に点在する魔滅晶カオスクリスタルの回収を申し出て、戦闘で消耗した俺達には先にマイクロバスに戻って休んくれといってきた。ありがたい、これでその時間を使ってセミランカー用の回復剤でこの位のダメージだったら何とか回復できる。


 最初の拠点周辺では余計な事を口にした守備隊員の毛利川もりかわが半泣き状態で一生懸命野外用の大型掃除機を使って、オハジキ大の魔滅晶カオスクリスタルを一生懸命に回収し続けていたけど……。

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