第二十二話 異常発生!! 迫りくる無数のGE
「
今日も
護衛として
伊藤の通信を受けて桐井は傍に用意していた超小型タブレットの画面を覗き込んだが、前方を埋め尽くす紅点の違いなどつく筈も無かった。ほとんど違いが分からないほど真っ赤だしな。
「すごいわね、あの子。この状態で紅点の見分けが付くの?」
「自慢の隊員でっせ。聖華ちゃんには何度助けられたかわかりまへんな」
通常の部隊ではその情報を得るか得ないかで最悪全滅する危険性まであり、
「あそこの奥。MIX-Aなのは間違いないが
「あれは私が倒す。まわり、お願い」
「了解。派手にいきまっせ!!」
窪内は一発五百円のグレード四の特殊弾が無駄弾にならない様に距離を見極め、ギリギリ効果が発揮できる距離に着弾させて十分に距離を保てる状態で
いかに特殊弾とはいえ、射程距離から外れれば威力を発揮しないんだよな。しかも射程はあまりにも短い。
窪内に続いて俺も迫りくる
続いて
俺もグレード四を使っているから
「流石に
「グレードが高い弾やと差がエグイでんな」
「あ……あなたたち、いったいどのグレードの弾を使ってるの?」
「今日は特別にグレード四を使ってますよ。明らかにオーバーキルですがどれだけGEが押し寄せて来るか分かりませんし、一匹にかける討伐時間を可能な限り短くしたかったので」
この様な状況だとこの僅か一秒程度のタイムロスが致命的な状況を生み出す。
俺たち以外の部隊、隣で一緒に迎撃している桐井の部隊にももう少しグレードの高い弾を使って貰いたいところだが向こうにも予算というか懐事情があるだろうしな。
「グレード四? あの威力で?」
「ああ、
「ブラックボックスに何か秘密があるのかな?」
特殊トイガンの内蔵している心臓部分のブラックボックスには謎が多い。これだけは窪内ですら手出しができないと聞いているくらいだ。
このグレードの弾を俺が使った場合、大体威力は他の奴らの二倍程度か?
となるとアレを使った場合はもう少し威力が上がる可能性はあるな。
「そこ!!」
竹中の使用する一発五万円するグレード十の特殊弾は一撃で
流石に防衛軍が使うレベルの特殊弾は威力が段違いだ。
「ちょっと!! ……なんだ輝、今の弾は?」
「特別ルートから入手した防衛軍で使ってるグレード十の特殊弾だ。今回は
「流石の威力ね。
竹中はもう一匹の
十五発預けてあるが、あの威力に酔いしれて無駄撃ちしないのは流石だ。
「羽振りのいい部隊はやる事が派手よね……。
「他の弾はグレード四です。グレード三と一発辺り二百円しか変わりませんよ」
「普通
AGE登録したての新人だと正規ルートで頼んでもグレード二の特殊弾しか売って貰えない。高いグレードの弾を無駄撃ちされると困るからだ。
一度使用した特殊弾はブラックボックスの影響でGEにあたらずに地面に落ちてももう使う事はできないからで、悪質な業者などはそれを回収して正規の弾に混ぜて売っていたりもする。
ほぼ無限に生産されている特殊弾とはいえ、コアの部分に
「やっぱりここにGEが集中していますね」
「これだけ
GEに思考能力があるかどうかは分かっていないが、ここにこんな強敵が待ち構えている事は予想外だろう。
すでに千を軽く超える
「上空から飛行タイプ多数。倒した後の
「当たると痛いでっせ。頭はヘルメットで護られてますし、顔はゴーグルとマスクで覆われてまっから当たると比較的痛いのは身体の方でんな」
「キミ、タクティカルベストの下に分厚い防弾チョッキ着てるよね?」
「
防弾性能が一番いいボディアーマーを装備しているのは
それに飛行タイプと言ってもせいぜい二十メートルくらい上を飛んでいるだけだ。
そこから落ちてくるオハジキ大の
「落ちて来るこれが意外に厄介よね~」
「怪我はしませんが、他のGEを狙う時に邪魔ですね」
GE用の特殊装備は多少の衝撃を吸収できるように作られているし、GEによる様々な攻撃に対応して破壊されにくく作られている。
その上、タクティカルベストなどを重ねて装備している為に相当打ち所が悪くない限り怪我などする事は無かった。
それでも邪魔な物は邪魔だが。
「見ててください、飛行タイプは得意っス!!」
霧養は空中から襲い来る
桐井の部隊も上空のGEを狙っているが、良くて五発に一匹程度しか仕留められていない。
あの威力って事はグレード三かな? もう少しグレードの低い特殊弾を使っていたら危ない所だ。
「霧養はんは相変わらずでんな」
「手に負えない数が来た時だけ俺たちが手伝えばいい。地面を埋め尽くすあいつらを先に何とかしなけりゃいけない」
「でも群れの後ろにいるGEの数は減ってるみたいよ」
「伊藤です~。とりあえず今見えているGEで波は引いたみたいですね~。その後ろにGEの紅点は確認できませ~ん」
という事は今見えてるだけでGEは打ち止めか。
三千体近くいた筈だけど、正確な数はわからないな。地面を埋め尽くしているあの大量のオハジキ代
集めるのか? 木の枝とか木の葉に混ざったあの小さい
「KKS二七六の守備隊から緊急連絡。
「向こうが先に動いたか。でも、
「先日特殊ランチャーが届いてたから破壊手段は持っている筈よ。破壊できるかどうかまでは保証出来ないけど」
「特殊ランチャーを持っているだけで簡単に
うちの部隊だとその日のうちに
その為に他の部隊が周りにいるGEを削った
「こっちの
「そうした方がいいと思うけど、
「それに
「無いんですか?」
「ないのよ。守備隊相手でもそう簡単に幾つも申請が通る訳じゃないから」
同じ部隊にあまり無理をさせたくないって事と、特殊ランチャーも改良を重ねているから最新型を使ってほしいって理由らしい。
だから幾つか特殊ランチャーを在庫として保管している部隊もあるらしいが、あまり溜め込み過ぎると各所からお叱りを受けるそうだ。それともう一つ、横流しも疑われる。
「うちは
「必要ない?」
「ああ、俺は
「……ランカーってのは、いろいろおかしい連中しかいないのか?」
失礼な。
特殊小太刀で
他のランカーにも特殊技能持ちはいるけど、割と派手な技を使えるのは数人だけって聞いているしな。
「
「し……、失礼しました!!」
「ランカーにおかしい連中が多いのは承知の上ですよ。逆におかしくなければランカーなんかになれませんし」
雑談をしているうちにこの防衛拠点に押し寄せて来たGEの群は壊滅した。
さて、問題は
「三百メートルくらいですからこのまま歩きますか」
「そうね……。私たちは役に立たないからここに居ましょうか? 共闘になるとポイントを分けないといけないでしょ?」
「同じ拠点で迎撃してる訳ですし、ここに居ても共闘ポイントは入ると思いますよ。残る問題はこの場にあるアレですが……」
少し先の道路やその周囲に無数に散らばる大量のオハジキ大
正直うちの部隊としては
「大量に転がっとる
「うちが持って来てる野外用の大型掃除機で掻き集めましょう。塵も積もればじゃないけど、うちの部隊なんかだとアレも貴重な収入源なのよ……」
「俺にだって貴重なポイントの種だよ。人数割りでいいからこっちにも寄越せよ」
「人数割りって、いいの?」
実家が金持ちで資金には困っていないだろうが、潤沢な資金をポイントに換算出来る訳では無いから
此処で撃破した
ただ、向こうもグレード三を使ってあれだけ無駄撃ちしてれば、結果的にこっちとたいしてかかった経費は変わらないだろうけどね。
「そちらがそれで良ければ問題無いですよ。数が数ですから、掻き集めるのも大変でしょうけど」
「
「隊長!! 純朴な学生をからかわんでください。すまんな、うちの隊長はいい人なんだがそろそろ婚期が……」
「
「……了解です」
「「「馬鹿が……」」」
周りの守備隊員は全員、迂闊な発言をした毛利川に冷たい視線を向けていた……。
女性に年齢や婚期の話は禁句だろうに。
「ん? 伊藤から通信? このタイミングでか」
「輝さん!!
「突然? ……いや、活動を半停止状態にしてたんだろう。滅多には居ない筈だけど過去にそういったタイプがいたと確認されている」
という事は地中深くにに潜るタイプか、岩なんかに擬態して仮死状態になるGEのどちらかって事だろう。
こいつらはレーダーで見つけにくいんだよな……。というか、こっちのゴーグルに内蔵したレーダーだとまだ捕捉できないんだけど……。
「こっちの超小型タブレットだと分からないんだけど、本当に
「うちの伊藤がいると断言した以上、確実にいるんでしょうね。……多分コレですよ」
「コレ? このよく見ないと分からない位に薄っすら反応してるコレで
超小型タブレットでも本当に赤い染み程度の紅点が映っているだけで、装備しているゴーグルではその違いすら分からない。
知らずに
「自慢の隊員でっせ。聖華ちゃんには何度助けられたかわかりまへんな」
「それ聞くの二度目だけどあの子が凄いのはわかったわ」
幾ら姿がカエルでも、あの大きさだと怪獣の様にしか見えないな。
ヒキガエルの本体はなにかを威嚇するように素早く舌を出し入れし、頭から生える蟷螂の上半身も鎌を振り上げて戦闘態勢をとっていた。
「
「待ってくださいここまで来たんです。
「そんな事は分かってるけど……」
竹中に持たせているグレード十だったら確実にダメージが入るけど、十三発しか残っていないからあれでトドメを刺すのは無理だ。
防衛軍はそのグレード十を
「此処まで近付いたいまなら、あいつを倒すいい機会です。
「
最大の速度であのヒキガエルの胸元まで突っ込んで、特殊小太刀で斬りつければいい。
流石に何もしていなければ迎撃されるだろうが、反対側から銃弾を浴びせ続ければ数秒程度の時間は稼げる。
「頼んだ」
「任されたで!!」
蜘蛛型リビングアーマーの時と同じだ。
「そこだ!!」
俺はヒキガエル姿の
多分こっちが本体だと思うが念の為に頭部に生えていた蟷螂の上半身も真っ二つに斬り捨てる。……その瞬間
「嘘!! なんであんな真似が出来るの!?」
「あんな真似が出来るのは、世界広しといえど
「ついでに
使った
俺が少しくらい強くても
「
「お疲れ。流石に
「ありがとう。普段はソロでAGE活動をしている
ソロ活動をしているAGE最大の問題はやはり
ダメージを食らって動きが悪くなれば撤退する事も難しいし、その場で戦闘を続ける事はもっと難しい。
一人だとそういった時に誰かの援護も期待できないし、少しでも油断すれば即石像だろう。
「お疲れ様。ホント凄いのね」
「いえ、一人だと流石に無理ですし、誰かの援護射撃が無いとヒキガエルの懐まで突っ込めませんから」
「いま、たぶん百メートル九秒くらいで走ってたよな?」
「あの装備を背負ったままな。アレなしだとどのくらい早いんだ?」
グレード四の特殊弾を撃ちまくっている時も守備隊員達は俺達を何か別の生き物か何かの様に見ていたが、ヒキガエル姿の
いや、流石に俺もあんな真似は立て続けには出来ないから。
「なあ。ランカーの率いる部隊って皆あんな化け物揃いなのか?」
「あの霧養って隊員は俺達と同じレベルだと思ったけど、飛行タイプをああも簡単に撃ち落してたからな……。人は見かけにゃよらないな」
「あの紅点を見分ける索敵担当とか
「俺達普通のAGEじゃ、ああはできゃしないよ」
駐車場に戻る間、守備隊員たちは声を潜めて色々と話してたみたいだけど聞こえてるからな。
俺が仲間に恵まれているのは否定しないけど、うちの隊員は別に化け物じゃない。
守備隊員は地面に点在する
最初の拠点周辺では余計な事を口にした守備隊員の
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