第九話 ホームルームでわりとある事~


 たとえどんなにGEの脅威があろうとも学生の本文は勉強である。校長や理事長辺りはそう熱弁するんだろうが、週末にAGE活動をしていると火曜日辺りまでは半分死んでいるような生徒も割と見かける。


 直接GEと戦闘したり戦闘区域まで移動して魔滅晶カオスクリスタルの回収にいそしむ生徒も各クラスに十人位いるんだが、AGE登録者全員に万が一GEが永遠見台高校に接近もしくは進入した場合にGEの殲滅に向かう事を義務付けられているんだよな。


 他にも、HRや様々な機会でGEの対処や種類等の説明会などを行い、GEに対する知識を永遠見台高校の生徒全員に広める役割もあったりする。


 苦労事ばかりが多く人気が無さそうに見えるこのGE系の部に所属する者は、【赤点の免除最低点の補償】【学食の割引】【重要作戦行動に限り公休が使いたい放題】等多くの特典があり、食糧事情改善の為にB定食の特別食券B定特券の入手機会なども多いので苦労に見合うだけの見返りも用意されているけどさ。


 GE系部活動は直接戦闘を行うような部の他に、環状石ゲートに関するあらゆる情報を収集分析している【ゲート研究部】や、特殊トイガンなどの改良などを目的とした【武器技術研究部】等の支援系の部まで存在しているくらいだ。


 また、GE対策部などが保有する車両などの整備を担当している自動車部なども支援系の部の一つとして認識され、車両整備などの口実で公休を使う事も可能だ。整備費や管理費などは当然GE対策部の活動資金から支払われ、お互いに持ちつもたれるのいい関係であると俺は思っているんだが実施の所はどうなんだろうな?


「……今日は全員いるな、回復休暇と称してサボる奴も多い。生命力ライフゲージが減れば回復させなけりゃいけないのはわかるが、減ってもいない生命力ライフゲージを言い訳にしてズル休みは禁止だ!!」


 担任の山形やまがたが出席を取った後でそんな事をい出した。


 英語や数学の小テストがある時に限って回復休暇を申請する生徒が多いからだが、回復休暇の申請で休んだ場合はテストの成績はとりあえず合格点での通過になる。後で同じテストをした場合、同じ問題だと試験内容を調べられて満点で切り抜けられ、違う問題を出した場合は公正さに欠けるという話になったそうだが別に違う問題でも問題ない気はするんだけどな。


「……もしかして英語か数学の抜き打ち小テストがある?」


「さて、どうだろうな。AGE活動は居住区域を守る立派な活動だが、学生の本文である学業も疎かにしないように」


「げ~っ!! 絶対抜き打ちテストがあるよ!! ……出題範囲はこの辺かな」


「やばっ。次に赤点取ったらやばいんだけど……。今から回復休暇の申請してもいいかな……」


「リングの表示は緑だろうが!! どこに回復させる必要がある!!」


「ちぇ~っ、バレたか」


 割と真面目にAGE活動をしているたちばなが担任の山形先生といつものやり取りをしていた。赤点の免除に関しては申請する必要があるし、全部の試験を免除して貰おうと思えばセミランカー程度にはポイントを稼いでいないと無理だ。


 成績はそこまで悪くなのにこうして教師をからかう事の多いたちばなだが、あのやり取りはいろいろとわかって繰り広げられているんだろうな。


 次に赤点を取ったらやばいのはあいつじゃないし……。


あきら、問題の予測とかできないか?」


「例の紙は出回ってないっスか? 小テスト程度だと無理かな……」


 神坂と霧養むかいは相当にヤバいらしく、俺に予想を聞いてきたり少しヤバ目の裏情報に頼ろうとしてした。


 例の紙とは定期試験ごとに裏で流れる試験問題の情報の事で、生徒会と風紀委員が総出で犯人を探しているにもかかわらずいまだに尻尾すらつかめていない。


 ……あいつはそんなヘマする奴じゃないしな。


「今から範囲の丸暗記でもした方が勝率は高いぞ」


「お前じゃあるまいし出来るか!!」


「……今回は諦めるとするっス」


「そうだな……」


 諦めが早すぎるだろ!! 数学は四時間目、英語に至っては昼休憩後の五時間目だ。今から対策しても十分に間に合うだろうに……。


 周りでは怪しい動きをする奴らも増えて来た。……カンニングは見つかった時のリスクが高すぎるぞ。


「小テストとはいえ今回赤点取ったら追試じゃないのか?」


「そうなんだけどよ。人間あきらめが肝心だろ?」


「そうっスよ。いつも余裕なあきらさんとは違うんスから」


「教科書の数ページ程度の範囲だぞ。ここから出る問題なんて限られているだろう?」


 というよりは、この範囲で作れる小テストには限りがある。


 小テストは時間も短く大体十点満点だから、そのあたりを考えれば問題位予測できるだろうに。


「……その顔は完全に試験内容を予測してやがるな」


あきらさん、後で相談があるっス」


 追試に時間を取られるのも馬鹿馬鹿しいし、後で少しだけアドバイスをしてやるか。


 ん? 周りからも複数の視線が……。


凰樹おうき、例の犯人お前じゃないんだろうな?」


「例の紙でしたら俺の入学前から出回ってるって話ですよ」


「そうだったな。一番あやしい奴は毎回逃げ切りやがる……」


 一番怪しいと噂になっているのは永遠見台高校とわみだいこうこう最強の変人にして奇人の情報技術部部長瀬野せの右三郎うさぶろうだ。


 永遠見台高校とわみだいこうこう新聞部の部長でもあり、毎月発行される永遠見台新聞とわみだいしんぶんでは面白おかしい記事で生徒達に様々な話題を提供してもいる。


 天才的なハッカーであると同時に体術も忍者を思わせる程の身の熟しを身に着けており、その高い身体能力を発揮して様々な場所から無駄知識も含めた様々な情報を蒐集する校内でも有名な変人だ。


 この男が入学した年から永遠見台高校とわみだいこうこうで試験問題の予測問題テスト用紙がばら撒かれ始めた事もあり、試験問題窃盗容疑の最重要容疑者でありながら今までただの一度もシッポを掴まれた事の無い高い諜報能力を有している。


 瀬野せのはAGE登録もしているので付き合いが長く、俺も何度か共闘した経験があるがこいつがセミランカーにすら届いていないのは何か理由があるんじゃないかと睨んでいる。


「小テスト程度であの紙が出回りはしないでしょう」


「そうだな。今から試験対策は感心だが、カンニングはするなよ!!」


 最後に釘を刺して山形先生は教室を後にした。アレでも生徒思いのいい先生なんだがな……。


 ん? 神坂と霧養むかいが全力疾走してきたんだが……。


あきら!! 予想くらいあるんだろ?」


あきらさん。助けると思って……」


 いや、今回の範囲だと仮に小テストをするとしても完全な形で予測はできるが……。


 仕方がない。こいつらがここまで言うんだったら、それぞれ予想問題をメモに書いてやるか。


「……英語がこれで、数学がこれだ。小テストがあるかどうかは分からないけどな」


「助かる!! どっちか片方は仕方ない。まず数学を覚えて、小テストが無けりゃ英語だろう」


「そうっスね。数学が無い場合は英語で確定っスよ」


 ……そうだといいがな。


 俺の予想は大穴で今日は小テストが無いと踏んでるんだが、良い機会だしこいつらには少し復習としてあの辺りの勉強をして貰うのもいいだろう。


 窪内くぼうちはおそらく俺と同じ予測で、二人の様子を見て笑っていたりする。


 中間テストや期末テストの時でもほぼ勉強しない二人には良い機会だろう。俺も部隊長としてこいつらに少しくらいは勉強させる責任があるしな。


 なお、俺と窪内くぼうちの予想通りこの日の授業で小テストが行われる事は無く、放課後に神坂と霧養むかいの絶叫が響いたという……。

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