邂逅
青いバック
邂逅
貴方は不器用な人間でしたね。何か一つをするにも他を疎かにして、その一つに集中して最初にしていたことはすっかり忘れてしまうのだから。
愛情表現もまともに出来ないで、好きと一言言うだけなのに耳を真っ赤にして、お湯が湧くのじゃないかと勘違いしてしまうほどに顔も熱くなってうぶな人でしたね。私がイタズラげにカウンターで言い返すと、もっと顔を隠してそれは赤い薔薇のようで美しくてそんな日々がいつまでも続けばいいと思っていました。
貴方は優しい人でした。私が突然シュークリームが食べたいと深夜に言い出しても笑って「じゃあ買いに行こうか」と優しい口調でやることなすことを笑って肯定してくれて、貴方が怒ったところを見たことないなって今になって気付きました。
私は甘えていたのかもしれません、貴方のその優しさに。どんなことを言っても、私の小さな世界に灯りをもたらしてくれて、些細な喜びを分け合って、小指の先ぐらいの小ささでも二人いれば地球を包み込める程の幸せだと言わんばかりの顔をして本当に本当に優しい人でした。
私達は思いがけずに出会って、まるで重力に引っ張られたようでこういうのを赤い運命の糸というのでしょうか。もし、本当にそうなら私は来世までこの糸を切らしたくありません。突然、私の目の前から消えてしまった貴方に一言怒りたいからこの糸は途切れさせることなく、ずっと未来へ繋いで生きたいです。
例え、この世界に貴方が居なくなってしまったとしても、この糸が二人で過ごした思い出の詰まった部屋が寂しさを紛らわせてくれます。
だから、どうか安らかに眠ってください。私は元気で生きてゆきます、貴方の笑顔を心に閉まって。
邂逅 青いバック @aoibakku
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