大丈夫、あなたはひとりじゃない――文章読本さんより
『工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素』(ラリー・ブルックス著 フィルムアート社)という本があります。
〈きちんと学びたい人のための小説の書き方講座〉https://kakuyomu.jp/works/1177354055193794270 でも紹介されています。
私は結構こういう文章読本――それこそ『ライトノベル新人賞の獲り方』から『大学教授のように小説を読む方法』まで――を読む方なのですが、正直、この本については初めて「サンクコスト…〔*〕」という言葉が脳裏をよぎりました(笑)。
この本が初めて読んだ文章読本で、この本がすごく役に立った! という方がいたらごめんなさい。
私にとっては、他の本に書いてあることとほとんど変わらない上、抽象的でよくわからず、おまけに(ここが一番重要なところだったりするのですが・笑)語り口が面白くなかったもので。
でもそう考えると、何冊も文章読本を読む必要はないってことになりますよね。物語の創り方、みたいな本がどれか一冊あれば十分…。
それでもこの手の本を読むのは――もちろん、技術面の向上という目的があるのは否定しませんが――第一に、“自分はひとりではない”ということを常に確認したいからかもしれません。
登場人物が似たり寄ったりであることに悩み、ストーリーが思うように進まないことに苦しみ、あまりの下手さに現実から目を背けて部屋の掃除に走り、かと思えば「割といい出来だと思うんだけど読まれないのは何故…?」などと自己否定と肯定をジェットコースターのように繰り返している書き手が自分一人ではないということを知って心強く思うために〔**〕。
実際、サンクコストの囁きを無視して最後まで読んでよかったなと思えたのが、巻末の「なぜ僕らは書くのか」でした。
『僕らはラッキーだ。とても。僕らは作家だ。
祝福より呪いだと感じる時もあるだろう。人に馬鹿にされる時もあるだろう。書かない人にとって僕らは趣味人、はかない夢追い人に見えるだろう。
だとしたら、彼らの目は節穴だ。本当に書いているなら夢はもう叶っている。書籍化や映画化はされていなくても、書くことで得られる真の報酬は自分の内側にある。
(中略)
あなたは作家だ。知識を得た作家だ。それをまず祝おう。そして書こう。あとはなるようになる。
人生こそ心の糧だ。作家は人間の体験を書き綴る。そのためには深く見て感じなくてはならない。作家が人間として優れているわけではないことは、文豪たちの伝記を読めば明らかだ。だが、他の人々とは違った感性で生きている。意味を考え、言葉の裏を考える。人が気づかないことに気づく。
(中略)
何を書こうと、僕らは世界に向かって手を伸ばす。一人じゃないんだ、分かち合うことがあるんだ、伝えたいことがあるんだ、と宣言する。書いたものが誰にも読まれなくても文章は残る。自分が思う真実を書いたのだから。確かにそれは大切なことだったのだから。』
『工学的~』も、売れる物語を云々と言っている割に、最後の最後にこういう話をもってくるあたり、“書く”ことが“売れる”ことだけを目的にしているのではなく、売れようが売れまいが書くことは苦悩でもあるけれど喜びでもあり、その両方を経験し、さらなる高み(もしくは深み)を目指す人がここにもいるんだ、ということを言わずにはいられなかったんだろうと思います。それでこそ、“書く”意味があるのだ、あなたもそのひとりなのだ、と。
* sunk cost.「埋没費用」と訳される経済学用語。
経済行為に投じた固定費のうち、その行為を途中で中止しても回収できない費用をいう。回収できないにも関わらず、人は元をとろうとして経済行為を中止できない傾向があるため、ずるずるとその行為を続けてしまう。
ここでいう行為とは“読書”のことで、サンクコストはそれに要した“時間”及び“本を購入した費用”。面白くないと思って読むのをやめても、浪費した時間やすでに支払ってしまったお金は取り戻せないが、「ここまできたんだから…」とダラダラ読み続けること。
** ホントのところ、読まれないだの下手だのと外野を気にしたり気分が落ち込むのは書けていない時だけで、書いている時は薬でもキマっているのか、投稿サイトにアップすることなど微塵も考えず、もちろんPVだの★だのコメントだののことも全く念頭になく、ただ楽しいだけなので、これが永遠に続けばいいのにと思ってしまうが、本当に続いたらマジでヤバい人になってしまうし、昂揚感が切れた後の落ち込みもまたツラいので…ええ、誓って薬はやっていません。
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