病者の塗油はゴマ油でもOK 『教会法で知るカトリック・ライフQ&A40』
都内で有名なキリスト教書店といえば銀座にある教文館ですが、私が現在住んでいる神奈川にもそれ系の専門書店があるというので行ってきました。
JRは京浜東北線の桜木町駅から歩いてすぐ。
見えてきたのは〈横浜キリスト教書店〉の大看板。
青地に金文字…看板直下のお店は入り口が一間くらいで、黒いサッシ戸は一見すると書店とは思えず、専門業者以外お断りの卸問屋みたいな外観。
一瞬帰ろうかと思いましたが、仮にもキリスト教と銘打っている以上、訪ねてきた
狭い店内にドアベルの金属音がやかましく鳴り渡ったものの、店の奥では書店主らしいおじいさんが居眠りをしており、思わず万引きが心配になりましたが、考えてみれば、ここに足を踏み入れようなどと思う人間が第八戒(汝、盗むなかれ)を破るとは思えず懸念は解消されました。
奥行数メートルもない本当に小さな書店でしたが、教文館へ行く時は大抵誰かと一緒だったのでゆっくり見て回れない関連書籍を、本棚の上から下までじっくり眺めることができました。
当然のことながら、絵本からクィア神学まで、どっちを向いてもキリ教関連の本ばかり。普通の大型書店でもなかなかお目にかかれない顔ぶれ。
で、純然たる素人の私が何でここに来ようと思ったかというと、別に神学の本を探しているわけではありません。すべては
もともと私はミリタリーでも何でも、兵器のスペックがどうとか、対○○戦略がどうとかいうスケールの大きな話よりも、アメリカ海軍における正しいパンツのたたみ方とか、士官食堂の人気メニューは何かとかいう日常小ネタの方が好きでして。キリ教においてもそれは同じで、見つけたのが、
『教会法で知るカトリック・ライフ Q&A40』『【続】教会法で知るカトリック・ライフ Q&A40』菅原裕二 ドン・ボスコ新書
私は中世欧州風ファンタジーが好きなので、中世ヨーロッパの歴史風俗をあさっているとたびたび出くわすのが、この「教会法」。中世の大学で法律がどうのというと、必ず「教会法」か、世俗のローマ法かのどっちかです。
ややこしいのでファンタジーでは無視してきましたが、教会法については、どこかの誰かがBOOK OFFに『カトリック新教会法典第Ⅵ集 教会における刑罰的制裁(改訂版)[羅和対訳]』(カトリック中央協議会)〔*〕を売ったのを買ったことから、俄然身近な(?)存在になりました。
ざっくり言うと、「ローマ・カトリック教徒は信仰生活の中でどんな法に従っているのか?」という話です。
「Q 教会の司祭に定年はありますか?」とか、「Q シスターは聖職者ですか? 信徒ですか?」〔**〕など、日常生活のこまごまとした疑問を教会法的に解決することができる本です。
これを入手したのは〈神慈悲〉Ⅵを書き始めた後なのですが、
「Q プロテスタントの信者はカトリック教会で聖体拝領ができますか?」〔***〕とか、そもそも、「Q 神父さんは教会法で結婚が認められていないのですか?」(常識だと思ってたから言わなかったけど、できません)とか、現在のところ作中の聖職者は日常業務において教会法を逸脱していないのが救いです…。
この中で面白いのが、タイトルにもした
「Q オリーブ油がないと「病者の塗油」はできないのですか?」で、
『現行法は、秘蹟を授与するに際して聖油を使用しなければならない場合、奉仕者はオリーブまたはほかの植物から搾油したもので、司教によって聖別または祝福された最新の油を用いなければならない〔八四七条一項〕とし、植物性の油ならどれでもよいと定めています。』とあるので、『日本であれば、ひまわり、(略)、椿、ごまから取られた油あたりでしょうか。』と結んでいます。
つい家の台所にあるごま油を想像してしまいました。おいしそうな匂いがしそうだよなあ…。弱っていても元気になれそう。
植物油なら何でもいいってことは、極論キャノーラ油(菜種油)でもいいってことだもんなあ…。
私がカトリックを題材にとっているのはこの儀式性があるからなのですが、法的に解釈すると秘蹟が一気に卑俗的な感じになりますね。
* 名前はゴツいが、薄い本並みに薄い本。[羅和対訳]とある通り、左頁にラテン語、右頁に日本語訳のレイアウト(さっぱり分からん)。
ちなみに定価が400円(税抜)。桁が違う?!のではなく、宗教関係の出版物で、信者が手に取りやすいお祈りの本などはめちゃくちゃ安いです。当たり前かもですけど。
** ほら、ここみんな知りたいでしょ!
男性向けエロカテゴリーで、「シスター/巫女」というのがあるんですが、シスターを「聖職者なのに」云々と言っている登場人物がほとんどで、萌え属性に厳密性を求める身としてはモヤモヤしていたところです。シスターがミッションスクールの教員だという設定なら、教職=聖職、ってことで、百歩譲って意味は合うけど。
*** 『「カトリックの奉仕者が適法に秘蹟を授与するのは、カトリックのキリスト信者に対してのみ」〔八四四条一項〕であるのが原則です。(中略)たとえばプロテスタント教会の信者だと、死の危険が迫っているか、教区司教か司教協議会が定めるほかの重大な必要がある場合に限られます。』と言っていて、まあ結論「むずかしい」ってことみたいです。
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