紳士淑女は“薄い胸”がお好き?!

 ブツの呼び方から敬称まで様々なモノが気になってしまう今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 さて、今回気になった(ひっかかった)モノは……

「薄い胸(板)」です。


 国産BLを読んでいて、別々の作品でこの表現が出てきたもので、「…ん?」と目が留まりました。

 いずれも、描写の対象はウケ。それも20代だけでなく、40代でも見た。

 …とはいえ、後者は“外見上は40代に見える吸血鬼”だったんですけどね。おまけに“小柄”な。


 いずれ遍歴でも書こうかなーと夢想しているものの(実際そんなに書くことネタない)、私はBLに出戻ってから日が浅く、昨今の流行というものに全然乗り切れていない。

 受が小柄なのはまあ昔からの伝統デフォルトのようなものなのでいいとして…「薄い胸(板)」というのは…? これも何かのお約束…?? “胸板が薄い”ことが、チャームポイントやセックスアピールになる…のか…???


「好きな芸能人は誰か?」の問いに「阿部寛アベヒロシ室伏広治ムロフシコウジ」と即答し(室伏広治は芸能人ではないが…)、「薄い胸(板)」が“貧相”としか結びつかない書き手ワタシには、一瞬何を言われているのかわからなかったのですが、その他の外見が魅力的と形容されている受の肉体を描くのに、「鼻毛が出ている」とか「脚が短い」とかいうのと同レベルでこの特徴をあげているとは思えない。


「胸板が薄い」と書かれた時点でこちらの欲望のボルテージが急降下してしまったおかげで、逆にじっくり考えてみる余裕ができました。

 作者さんは魅力的と思ったから書いているのか、肉体的特徴としては許容範囲なのか、あるいは他に何か伝えたいことがある…?


「胸板が薄い」ことにどんなサブリミナルメッセージが込められているんだよ、と思われるでしょうが、小説の表現というのはすべからくそういうものでは…? 小説そのものが何かを伝えるために書かれているわけで、のんべんだらりと文章を綴っているわけではない。そこには何らかの意図があるわけで、少なくとも私の場合はそうです。

 力士かボディビルダーでもない限り、男の胸が衆目を集めるなんてのは普通ないところ、わざわざ“薄い胸”と書くからには、何を表現しようとしているのか――?


 たとえば、

 家庭環境の影響。貧しい、虐待されていたなどの理由で十分な栄養がとれず、運動経験もなかった等で胸郭及び胸筋が発達しなかった=成育歴を暗示。

 成人後も、胸部の筋肉を増強させるような肉体労働には従事していない=職歴(ホワイトカラー?)を暗示。

 ウケ本人も筋トレに興味がないか、必ずしも男性美=筋肉、とはされていない文化圏に属していると推測される=所属する世界観・価値観を暗示。


 …うーん、それとももっと中立的な表現で、セメとの差別化…?

 全部が全部そうとは言いませんが、大抵の場合、攻の方が背が高くて筋肉質とされていますよね。いわゆる、“男らしい”とされてきた特徴です。

 しかし、いくら「厚い」の対義語が「薄い」だからって、比較対象に何故胸板を選ぶ…? 他のどこだってよくないか? “小柄ながらキュッと締まった尻”とか。“ごつくはないが、しなやかさを感じさせる体躯”とか。いくらでも考えつくじゃん?


 そうすると、あと考えられるのは…

 筋肉量が(それほど)無い男=男性優位主義者マッチョじゃない、と、作者含め読者層の女性が思っている可能性。


 攻の方はしっかり筋肉がついている描写をされているので、筋肉自体が忌避されているわけではないと思われます。一方で、愛されるウケの側に感情移入したいと女性読者が考えているのであれば、脳ミソまで筋肉みたいで、肉体的には何ら共通点のないゴリマッチョよりも、中性的、時には女性的ともされがちな外見(肉体)の受の方が適任…。

 まあ現実は、肉体が貧弱なくせにモラハラする男とか山ほどいますけども。


 とするとこれは、男性向けエロカテゴリーにおける“貧乳”と同じような扱いなのか?!

 つまり、女性の中には一定数、“胸板の薄い男”が好きな人の需要が存在する、と…。

 まあそういうことなら…(何が)。


 私だって「ふーん、今はこんな性癖が流行ってるのかあ♪」くらいはチェックしますし、一般的な世間様の好みというのも一応考慮はする。

 考慮は…しますが…しながらも、結局、悲惨な少年時代を示唆したり、小児性愛者のキャラを悦ばせる目的以外で、私が、受の“胸が薄い”という肉体描写をすることはおそらくないだろうと思うんですよね…。

 もし描写することがあったとすれば、その時は、ここに挙げた以上の“薄い胸”の魅力を発見したのだ、ということになるでしょう。






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