読むものがなさすぎて、古典に走る。

 徒歩&定期券内の距離にBOOK OFFがありすぎてクーポンが貯まったので、前からちょっと気になっていたBL小説を安く買おうかどうしようか考えながら商品棚を見に行って…『カラマーゾフの兄弟』①②巻を手にして帰ってきました。


 …またこのパターンかよ!

 ちなみに今回買おうかどうしようか迷っていたBL小説はイギリス製。国が変わっただけか。


 しかし、よりによってあの『カラマーゾフの兄弟』とは…。

 だって…ねえ。な古典じゃないですか。

 世紀の大文豪ドストエフスキー御大! 誰でも名前だけは知ってるけど読んだことはないあの超大作! 敷居が高いことこの上ない、というか、格調高すぎて(あくまでイメージ。なにせ読んだことがないから)、見せパンならぬ、持ってるだけで「僕チャン、インテリでしょ?」っていう臭いがプンプンしそうで…。


 通勤電車の中で他人が読んでいる本が気になる私も、目の前の相手が『カラマーゾフの兄弟』を読んでいたら、

(…ロシア文学専攻の学生かな? それとも真面目な文学青年かな…いずれにしてもあまりお近づきにはなりたくない相手だな…)

 と思ってそっと窓の外を眺める、てなイメージです。


 他の人が書かれている好きな作家さんとか、読書記録を読むのも好きなのですが、私個人は王道を辿ってきたことも無いし、文学少女でもないんですよねえ…。文学部出身でもないし。

 作家志望者なら読んでてトーゼン!と言われるような必読書リストを制覇したことも無い。たぶんドストエフスキーは入っていると思うけど。


 大体、小説読んでないですからね!(胸張って言うことか) 作家買いもしない。手持ちの小説本が100~120冊ぐらいあるんですが、半分がミリタリー小説で2割がファンタジー、残りの10%程度が古典か奇書かポルノ、BLなんて片手で余るくらい。


 それなのに何でそんな古典を買おうと思ったのかというと、あまりにも読むものがなかったから。

 毎月、星の数ほど新刊が出版されていて、web小説も天文学的な域に達し、古書店には小説が溢れているというのに、どうして私は好みのBL小説ひとつ見つけられずにいるのか…?


 お前のストライクゾーンが狭すぎんだろ、というツッコミは無しですよ。

 そのへんにあるものを手当たり次第に口に入れて読んでいたのは小学生までで、以降は性癖好みがある程度固まってきたというか…残された人生時間は短いんですから、偏食読まず嫌いを直すためだけにSFやミステリー(例)に手を出しているヒマは無い。


 そこで半ばヤケクソにひらめいたのが、

「いわゆる古典と言われるくらい昔から出版され続けてきた本なら、どこかに万人ウケする面白さがあるんだろうし、ひょっとしたらそのうちの何冊かぐらいは好みに合うものが見つかるのではないか…?」


 幸いにして私は海外文学カタカナ人名にはそれほど抵抗は無いし…。「名前が難解」と言われる『カラマーゾフの兄弟』も、ロシア人名命名の法則を知った今なら、少なくとも誰が誰か区別はつくのでは…?

 それに、(ここが最も不純な動機なのですが)あれだけ古今東西の古典から引用しているあのキャラが、これを読んでいないなんてことはありえない。せめて手に取るくらいはしないと示しがつかない(どこに?)。

 ということで、サテ一体どんな話なのかなー、と②巻をパラパラめくってみて…〔*〕


 次男イワン・フョードロヴィチ・カラマーゾフが延々と自説を語る「大審問官」にやられました〔**〕。


 いや、これは…。買って帰って読もう。ついでに①巻も。クーポンあるし。


 この時点で私は『カラマーゾフの兄弟』が5巻まであるらしいことにいささかの恐怖を覚えつつ、BOOK OFFをあとにしたのでした。


 重厚で、数多の読者を挫折させてきたという『カラマーゾフの兄弟』。

 たとえ全巻読破できなくてもいいや。だってドストエフスキー先生自身がしょっぱなからこう書いてるんだもんね、


『むろんだれにも、なんの義理もないのだから、最初の短い話の二ページ目で本を投げだし、二度と開かなくたってかまわない。しかし世の中には、公平な判断を誤らないため、何がなんでも終わりまで読み通そうとするデリケートな読者もいる。(中略)

 というわけで、そういう読者が相手だと、こちらとしてもじつにやりやすい。だが彼らの律義さや誠実さをありがたく受け止めるにしても、わたしとしてはやはり小説の最初のエピソードでこの話を放り出してもよいよう、ごくごく正当な口実を提供しておく。』



 * 普通の人なら書き出しと1巻目を読んで買うかどうか決めると思うのですが、私の場合、シリーズもの、というか2巻以上ある作品について1巻目で判断することはないので、2巻目を立ち読みしています。

 だって、途中から失速するの嫌だし、最初1巻目が面白くなくても2巻目以降から面白くなる場合だってあるでしょ? web小説もだけど。


 ** 「大審問官」の名称で気付かないがおかしいのですが、帰ってから本の折り返しをよくよく見てみたら、ガチでキリスト教(あちらはロシア正教)的な話でした。世界で最も有名な古典(聖書)に手を出してしまった今だからこそそれほど抵抗感なく入っていけたのかもしれませんが…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る