顔を見たことのない同志へ

〈鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎〉がヒットしているのを見て、甦った思い出が。


 もう10年近く前になりますか、NHKで、何かに熱中している小学生を取り上げた番組があり、その中で「妖怪がいると信じている女の子」がいました。クラスメイトに「妖怪なんていないよ」と言われても、必ずいると信じていて、民間伝承などの本を読み、否定に対してはきちっと自分の思いを説明する姿がとても印象的でした。


 彼女の姿に子供の頃の自分を思い出して、番組の製作サイドを通じて励ましのメッセージを送りました。

 たしか、実際に存在していようがいなかろうが、妖怪はいると信じるその姿勢が大切だと思うよ、みたいな内容だった記憶が。


 製作スタッフから、彼女が返事を書きたいと言っているので連絡先を教えて、と言われて伝えましたが、結局返事は来ず…。親に止められたのかな。


 でも、彼女があの情熱を今も持ち続けているのだとすれば、今頃は民俗学を学ぶ学生か、ひょっとしたら小説投稿サイトであやかし小説を書いていたりするかもしれないな、と思ったりもするのです。それこそ、ここカクヨムとかで(笑)。


 …まあ、メッセージを送った私は、今は西洋妖怪の方にシフトしちゃってるんですけどね(笑)。ゲゲゲの鬼太郎も、ガープス『妖魔夜行』も昔から好きですけど、ここ数年は完全に〈エクソシスト〉だもんなぁ…。


 彼女がどこかで創作活動をしていたら、その作品にでもまた偶然出逢えないかな、と思っています。

 その時は日本妖怪だけでなくて西洋妖怪もネタにしてくれると嬉しいんだけどなぁ…、というのが、あの時応援した、顔も知らないお姉さんの願いです。そのお姉さんも子供の頃からの興味関心が高じて、あんなものやこんなものを書いているんですから(笑)。

 学者が必ずしも面白い小説を書けるわけではないのですが、ほんとに、あの熱意を創作上の考証にも向けていたら、かなり本格的なオカルトファンタジーが書けると思うんです。


 かと思えば、古本屋で買った本や図書館で借りた本の間に、誰かの創作メモや落描きが挟まっていたことも。


 『西洋魔物図鑑』(江口之隆)を買った時は、テスト勉強の予定を記したスケジュール帳の裏に、まさに買った本の内容を元にした少年少女の冒険譚の冒頭部分のあらすじが書き込まれていたり、『同性愛の社会史 イギリス・ルネサンス』(アラン・ブレイ)を借りた時のしおりが鉛筆描きのキャライラストだったり。


 『西洋魔物図鑑』の間にメモを忘れてしまった彼/彼女は、「前方詞 英テスト」などと書いている点と、字の感じから、小学生高学年か中学生くらいなのでしょう(前方詞って、前置詞のことか?)。

 もし、(宇宙人と遭遇するくらいの確率で)今この話を読んでいたなら…あなたの厨二病の記録は私が墓場まで持って…というか私の他の原稿(チラシの裏)と一緒に遺族が古紙回収に出してしまうでしょうから心配しないで下さい。

 あと、私の、自分でもほとんど判読できないような字に比べると、あなたの字はとても綺麗です。だからこそ、赤の他人に創作メモを読まれるような事態に陥っているのですが…。


 私の前に『同性愛の社会史』を借りた人は、落書きの余白に「384.7 4F 愛と性の文化史」とメモしているので、何かを真面目に調べている人なのだろうとは思われるものの、かくいう私も、イギリス歴史風俗の本を読み漁ってあんなものを書いているのだからして、同じ穴のムジナである可能性も否定できず…ワクワクしますね。

 まあ、そんな本を借りているからといって、バストアップのイラストを見る限りでは、男性というよりは女の子のキャラでしたが、逆に男性キャラのヌードとか出てきてもそれはそれでビックリというか、さもありなんといったところですが。


 しかしこの本、5行に1つの頻度で註が入るという、えらく読みにくい上にその註釈の内容も面白くもおかしくもなく、あってもなくてもいいというシロモノで、何があったか知りませんがよくまあこんな本を借りて読もうと思いましたねと、顔も知らない描き手に同情してしまいました。これを読んで何を書(描)こうと考えたんだろう…ぜひ知りたいところです。

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