第60話 マンション
御手洗と木原が転校しクラスに平穏が訪れて3週間が過ぎた。今日はGWの初日で俺は松井山手駅で羅生天と待ち合わせをしていた。GW前に羅生天からメールが届き、GWは全て開けておいて欲しいと頼まれていた。俺は羅生天には大きな貸しがあるので断る事は出来なかった。
羅生天のおかげで平穏な学生生活を過ごせている。俺の力だけでは平穏を保つことは出来なかった。GWはバイトをしてお金を稼ぐつもりだったが断念した。GWが開ければバイトを始めて少しでも生活資金の足しにする予定だ。
松井山手駅に着くとひと際目立つ背の高い不気味なオーラを発する男が居る。もちろん羅生天である。彼の纏う悪魔のような不気味なオーラに、行きかう人々は避けるように通るので羅生天の周りには誰もいない。羅生天はイケメンだが誰もが目を奪われるさわやかなイケメンでなく、関わってはいけないダークなイケメンであった。
「おはよう!」
俺は笑顔で声を掛ける。すると周りの人々が驚いたような顔をして俺達に視線を向ける。俺は身長が伸びて身長レベル3のマックス値の178㎝になり、顔も顔面偏差値レベル4の誰もが目が釘付けになるイケメン。周囲の人々には、ファンタジー世界のイケメン勇者とイケメン魔王のツーショット画像のように映ってしまい、みんな驚きを隠せない。
「おはよう」
俺を見るとすぐに羅生天の不気味なオーラが消え去り天使のような笑みを浮かべる。その瞬間周りの注目は羅生天に一気に集まる。イケメン度は俺のが上だが、ギャップによる演出により羅生天のイケメンがバエる。
「六道君、急ごう」
羅生天はすぐに走り出し、その場から立ち去るので俺は慌てて羅生天を追いかける。
「君と居ると目立ってしょうがない」
羅生天はぼそりと呟くがそれは俺のセリフだ。悪魔の羅生天は人を怖がらせ、天使の羅生天は人を魅了する。どちらも人を惑わすのは一緒であり人から注目を浴びてしまう。
「すまない。でも、お前も一緒だろ」
俺は我慢できずにツッコミを入れる。その姿に羅生天は笑みを浮かべる。羅生天も少しは自覚はあるのだろう。
「今日は来てくれてありがとう。このマンションの最上階に姉貴が住んでいる」
松井山手駅近くの20階建てのマンションに笑さんは住んでいる。俺達はマンションのエントランスに向かった。エントランスの前にはインターホンがあり、羅生天が笑さんに連絡を取りエントランスに入るカギを解除してもらう。エントランスは豪華なソファーやテーブルがあり、ここで会話を楽しむこともできるし、住人を待つレストスペースになっている。
しばらくすると小柄の可愛い女性がエレベーターから姿を見せる。
「昴君、おひさしぶり!」
可愛い女性の正体は日車 鼓(ひぐるま つづみ)さんである。鼓さんは白の短パンに赤のキャミソールを着ている。制服姿やジャージ姿では気づかなかったが、小柄な体とは対照的な大きな胸に俺は目のやり場に困る。
「あれ~昴君。背伸びた?」
鼓さんは微妙な変化にも気づく観察眼の優れた女子である。
「はい。少し伸びました」
「さらにイケメン度が増したね」
微笑みながら褒めてくれる笑さんの愛嬌はハンパなく可愛い。俺は思わず見惚れてしまう。
「笑の部屋に案内するわ」
鼓さんは恋人のように俺の腕にしがみつく。柔らかいふくよかな胸が俺の体に触れ、俺の顔は薔薇のように真っ赤になる。不屈の心(銅)のスキルを持つ俺でも、おっぱいの感触の前では役に立たない。俺の意識は胸に集中してしまい、笑さんの部屋に来るまでの記憶は全ておっぱいの感触になっていた。
俺がふしだらな気分に酔いしれている間に、羅生天は逃げるようにマンションから出て行った。
「笑、昴君を連れてきたわ」
鼓さんの声に反応するかのように扉が開く。しかし、笑さんの姿は見えない。鼓さんが俺を引きずるように部屋の中へ案内する。
笑さんが住む部屋の間取りは3LDKである。俺は大きなリビングに連れて行かれてフカフカの豪華なソファーに座る。
「あなた、お食事にする。それとも・・・私」
ソファーに座った俺に対して、キッチンから可愛い声が聞こえた。
「笑、何をしてるのよ!」
キッチンに立っていたのはピンクのエプロンを着た笑さんである。このシュチュエーションがしたくて、笑さんはキッチンで待っていた。
「笑、料理が作れるの?作れるなら作ってみてよ!」
笑さんの食事は全て鼓さんが作っている。
「どや」
笑さんはキッチンの上にカップ麺を並べた。笑さんが作れる?料理はカップ麺だけだが、ドヤ顔とドヤ声でイキる。
「カレー麺でお願いします」
俺はこの異様な空気を収めるためにカレー麺を選択する。
「うむ」
笑さんは満足げな笑みを浮かべてカレー麺にお湯を注ぐ。
「後は任せた」
笑さんはお湯を注ぐとエプロンを脱ぎ捨てて俺の横のソファーにちょこんと座る。笑さんは鼓さんと同じ白の短パンに白のキャミソールを着ていた。鼓さんとは対照的に胸は小ぶりだが、細くて白い肌に銀色の髪が調和していて、幻想的な美しさを感じる。まるで、ファンタジーゲームのヒロインのような美貌だ。
妖艶な銀色の瞳で見つめられた俺は、金縛りにあったかのように身動きが取れなくなる。
「あなた、食事の前に私を食べて」
笑さんはゆっくりと俺に近づいてくる。笑さんから漂う甘い香り、全身から溢れ出す妖艶な仕草、俺は争う理由はない。俺は笑さんに全てを預け、なるようになるしかないと決意した。
「馬鹿タレ」
笑さんの頭を鼓さんが叩く。
「ごめんね昴君。カレー麺が出来たから食べる?」
鼓さんが笑さんの魔の手?から救ってくれた。
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