第58話 余談パート2
※縄手学院での話パート4(時間軸は前後します)
「目を覚ましたのね」
笑顔で笠原さんに声を掛けてのは日車 鼓(ひぐるま つづみ)さんである。バーベキュー大会での鼓さんの担当は1年C組である。
「・・・」
鼓さんの言葉に笠原さんは何も答えずに黙っている。
「別行動はダメよ!ちゃんとみんなでバーベキューの準備をしなさい」
鼓さんは詳しい事情を羅生天から聞かされているが、実行委員長である桜花院さんにはまだ報告していない。
「絶対に許さないから・・・」
笠原さんは小声で呟いた。
「笠原さん、今回の件は全面的にあなたが悪い。二度とこのような事件を起こさないで下さい」
鼓さんの顔が豹変した。可愛らしい大きな青い瞳は、狼のような鋭い眼光にかわり、キュートな小さな口から覗かせる可愛い八重歯は鋭い牙のように見える。
「私を脅すつもりですか?」
鼓さんの鬼のような形相を前にしても笠原さんは眉1つ動かさず動じない。
「脅しじゃない警告よ。あなたは中学時代から散々悪事を働いたみたいだけど、私たちには通用しないことはあなたも知っているわよね。今回の件は桜花院 紫雨さんに報告します」
鼓さんが羅生天と笠原さんとのトラブル現場にすぐに駆け付けて来たのは、笠原さんの姿がなかったので探しに来たからである。
「おうか・・・いん・・・」
何事も微動だにしなかった笠原さんが怯えていた。
「今日のトラブルの件の処分は後日報告します」
「わかりました」
笠原さんは素直に受け入れた。
※縄手学院でのお話パート5
「以上がキャンプ場で起きた出来事です」
バーベキュー大会が終わり生徒会室に戻っていた鼓さんは、桜花院さんにキャンプ場で起きた出来事の詳細を報告する。
「笠原 愛子(かさはら あいこ)、彼女は縄手学院の風紀を乱す腐ったミカンです。このまま放置すると他の生徒達も汚染されるでしょう。彼女には罰を与えるよりも更生教育が必要です」
「笠原さんは鳳凰グループのモデル事務所に所属していて、鳳凰グループのドン羅生天 鳳凰(らしょうてん ほうおう)の長男である羅生天 雷鳴(らしょうてん らいめい)の恋人です。笠原さんは中学時代から桜が丘西中の女帝と恐れられていたのは、鳳凰グループの権力化に属し、教師、警察官など社会的権力者を虜にしていたからです。紫雨さんの前では鳳凰グループの権力も通用しませんが、笠原さんは人格破綻者なので、更生は難しいと思われます」
「更生出来ない者などいません。なぜ、笠原さんがあのような人格になったのか徹底的に調査をしなさい。そうすれば、解決方法が見つかるはずです」
「わかりました。笠原さんの件は風紀委員に任せます」
「笠原さんの件は風紀委員に任せるとして、勝手にバーベキュー大会の実行員として参加した銀(しろがね)さんをここに連れてくるようにお願いしていたはずですが、どこに居られるのでしょうか?」
「申し訳ございません。途中まで一緒でしたが逃げられました」
「銀さんは文武両道で学校に多大な貢献をしている優秀な生徒です。しかし、彼女だけを特別扱いをすれば、生徒会が不公平な扱いをしていると誤解を与えかねません。鼓さん、その点はきちんと理解してますでしょうか?」
「わかっています。今日中に連れて来ますのでもう少しだけ待ってください」
「クククククク」
生徒会室の用具入れから不気味な声が聞こえる。
「この不気味な笑い声は・・・」
鼓さんがすぐに声の主を察知する。
『バターン』
用具入れの扉が勢いよく開いたかと思うと、中から笑さんが飛び出してきた。
「めんご!めんご!めんご」
笑さんは桜花院さんの前に土下座してめんごを連発する。
「笑、こんな所に隠れていたのね」
「めんご!めんご!めんご!」
「頭を上げなさい、銀さん」
桜花院さんは突然現れた笑さんに驚く事なく冷静に対処する。
「銀さん、謝罪よりも理由を教えて下さい。なぜ?あなたは実行委員の山田君の代わりにバーベキュー大会に来たのですか?」
「山田に頼まれた」
「本当に山田君に頼まれたのですか?」
山田は今日も腹痛で休んでいるので事情聴取は出来ていない。
「これが証拠」
笑さんは白いB4サイズの用紙を桜花院さんに手渡す。それは、山田と実行委員の交代を示す誓約書であった。その白い用紙には、たくさんの文字で埋め尽くされていて最後に山田と思われる拇印が押されている。もちろん、これは笑さんが作った偽の誓約書。しかし、完成度が高いので桜花院さんは見抜けなかった。
「銀さん、先にこれを提出してくだされば何も問題はありませんでした。しかし、事後報告では困ります」
「めんご!めんご!めんご!」
「しかし、きちんとした書類があるのでしたら、今回は厳重注意にしておきましょう。次からは縄手学院のルールに沿った行動をして下さい」
「御意!」
それから一時間、笑さんは桜花院さんから縄手学院の校風(ルール)を徹底的にしこまれる。縄手学院での厳重注意とは、縄手学院の校風を一からきちんと指導することである。一時間後、全ての生気が抜け出たような顔で生徒会室から出て行く笑さんの姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます