第57話 余談パート1
バーベキュー大会も無事に終了した。御手洗のせいで出来てしまった、俺達への壁は崩れ落ちクラスは一つになっていく。帰りのバスの中では、安藤さんを筆頭に俺への質問が殺到して、それに答えるのが大変だった。安藤さん達も俺との距離が近くなった事で丸川さんと茜雲さんへの嫉妬の憎悪はなくなり一件落着となる。
俺は家に帰宅すると日課のゴミ拾いをしてから空手道場へ向かう。これからの高校生活いつ何時、木原のような暴力で訴える輩に出くわすかわからない。いつも羅生天が側に居るとは限らないので、俺は次の目標である強くなることに努力を惜しまない。
こうして、クラスメートとの交流を育みつつ、自分を鍛える努力に励み時が過ぎる。
※縄手学院の話しパート1
「笑(えみ)、昴君はこの時間帯の電車に乗っていないわ」
「グヌヌヌヌ」
銀 笑(しろがね えみ)さんと日車 鼓(ひぐるま つづみ)さんは松井山手駅で俺と同じ電車に乗る為に俺の通学時間を調べていた。
「どの時間帯のどの車両を探しても昴君はいないわ。残るは6時40分発の電車ね」
「オーノー」
笑さんの顔が真っ青になる。
「明日は今日よりも10分早く通学するわよ」
「・・・」
笑さんは朝に弱い。今日は6時50分の電車を乗るために朝5時30分に起きたのである。俺なら学校へ行く準備なら5分もあれば終わるのだが、笑さんは最低でも1時間はかかる。笑さんの自宅は松井山手駅近くの高層マンションに住んでいるので、徒歩5分で駅に着く便利な場所だ。しかし、朝が苦手な笑さんにとって、これ以上早起きをするのは自殺行為に近い苦行である。俺と一緒に通学したい煩悩のために今日も早起きをしたが、これ以上は無理だと判断した。
「笑、どうする」
「ノーノー」
笑さんは両手を上げてギブアップする。
「そう、仕方ないわよね」
こうして俺は平穏に通学できるようになった。
※縄手学院での話パート2
「弟よ!いつになったら昴君に会わせるの」
学校の図書室に呼び出された羅生天が笑さんに詰め寄られていた。悪魔のような羅生天だが、笑さんが相手だとまるで子羊のように震えながら青ざめた顔をしている。
「姉貴、待ってくれ!いずれ会わしてやるからそんなに急がないでくれ」
羅生天から俺への連絡はない。羅生天はすぐに俺を呼び出すような事はしていない。
「すぐに会わせろ」
笑さんは俺が他の女子と付き合う前にゲットしたいのである。
「もうすぐ試験だろ!試験が終わってから誘う」
縄手学園は関西一の進学校であり有名な大学に多数輩出している。なので、1年生の頃から過密なスケジュールを組まれていて、毎月の試験でクラスの変更もある。クラスはAクラスが一番優秀なクラスでありBCDとなりEが一番下のクラスになる。入学試験の点数でクラス分けが行われ羅生天はCクラスだ。
「試験余裕。私は万年Aクラス」
笑さんは余裕の笑みを浮かべる。笑さんは首席で入学し一度も1位の座を譲ったことのない天才であった。友達の鼓さん、きーちゃんも同じでAクラスの座を保ち続けている。
「姉貴は化け物だからな。俺は姉貴と違ってきちんと勉強をしないと降格してしまう。親父との約束でEクラスになってしまったら俺は実家に戻らないといけない」
「勉強は任せろ。替え玉してやる」
笑さんは真顔で答える。
「バカか姉貴は!そんなのすぐにバレて退学になるだろ」
「昴君に会えるなら問題なし!」
「俺が困るんだ。試験が終わったら会わせてやるから我慢してくれ」
「使えない弟!」
笑さんは諦めて教室に戻って行く。
※縄手学院でのお話パート3
「笑、紫雨先輩が怒っているわ」
「???」
笑さんは怒られる理由がわからない。
「笑、なぜ、バーベキュー大会途中で帰ったの?すぐに謝れば紫雨先輩も許してくれたのに」
「目的達成用はなし」
笑さんは俺と手を握った後、鼓さんに連れられて紫雨さんの所へ向かうはずだった。しかし、鼓さんを振り切ってそのまま自宅に帰ってしまった。
「今から生徒会室に行くわよ」
※桜花院 紫雨(おうかいん しぐれ)17歳 3年A組 身長168㎝ 腰まで伸びた綺麗な青い髪は人の心を穏やかにし、それとは対照的な情熱的な赤い瞳は人の心を熱くさせる。そんな彼女の容姿を目の前にした者はそのギャップに心を撃ち抜かれて虜になる。縄手学院最高峰の美貌と頭脳を持つ彼女は縄手学院の王と呼ばれている。彼女は2年生の頃から生徒会の会長を務めバーベキュー大会の実行委員長をも兼任していた。
「ノーノー」
笑さんは体を震わせていた。怖い者知らずの笑さんが唯一怖いのが紫雨さんである。
「いつまでも逃げ切れないわ。きちんと謝って許してもらうのよ」
「ノーノー」
笑さんはまたしても鼓さんの手を振り切って逃げて行った。
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