第27話 担任教師


  警察に事情を説明して女子高生は被害届を出す事になる。俺も犯人の特徴などを説明しているとかなりの時間が経過していた。


 「もう、こんな時間だ」


 時計の針を確認すると10時を過ぎていた。母親にはメールを送って入学式に出れない事を説明し学校に連絡してもらうようにお願いした。母親には入学式の姿を見せてあげたかったが、警察に協力するほうが大事だと俺は思い母親も俺の意見に賛成してくれた。俺は取り調べを終えるとすぐに学校へ向かった。



 「極(きわみ)、大丈夫!」


 女子高生の母親が駅員室に入って来た。女子高生は母親の顔をみると安心したようで、母親の胸に顔をうずめてこらえていた涙を流した。母親が来るまでは気丈に振る舞っていたが、よほど怖い体験であったのであろう。

 


 俺が学校に到着したのは11時頃で入学式も終わっていた。俺は母親のメールの連絡で職員室に向かうように言われていた。3年間無遅刻無欠席で通った学校なので校内のことは全て把握している。34年も月日が経過しているので、校舎の修繕修復はおこなわれているだろうけど、職員室の位置などは変わるはずはない。俺は迷うことなく職員室に辿り着く。

 34年前と同じなら1年5組で担任は雪月花 蒼(せつげつか あお)先生である。雪月花先生は30歳で細身、黒のパンツスーツを着て、黒ぶち眼鏡をかけたクールな女性教師である。担当教科は英語であり、とても厳しい先生であったが、スタイルが良く美しい先生だったので男女共に人気があった。俺の記憶だけでも10人以上の男子生徒が告白をしていたし、バレンタインデーの日は女子生徒からたくさんのチョコレートをもらっていた。


 「失礼します」


 俺は職員室の扉をノックして大声で声を掛けて扉を開ける。


 「こんな時間に生徒が何をしているのですか?」


 中年の男性教師が俺が職員室に入るやいなや声を張り上げた。


 「今日、入学した六道昴と言います。諸事情により遅刻をしましたので、職員室に行くように連絡を受けました」


 俺はこの教師を知っている。名前は憶えていないが地理の先生であり、女子生徒にストーカー行為をおこない自宅謹慎になった先生である。いつも偉そうな態度をとっているが不良や女生徒にはやさしく、男子生徒、とくに以前のおれのような気の弱い陰キャにはあたりが強い。今の俺は高身長のイケメンなので高圧的な態度はとらない。

 

 「六道君ですか、連絡は受けています。しばらく空いている席に座って待っていてください。私が担任の雪月花先生を呼んできます」

 「わかりました」


 男性教師が職員室から出ていく。俺は空いている席に座り辺りを見渡す。職員室の中には俺以外に数名の教師がデスクに向かってキーボードをたたいている。見覚えのある教師たちなので、34年前と教師は同じである。しかし、パソコンが各々デスクには配置されていて、34年前の職員室の風景とは全く違う。


 「あなたが六道君ね!」


 職員室の扉が開き甘いローズの香りが漂ってきた。俺の目の前に姿を見せたのはタイトな黒のパンツスーツを着た、長い黒髪の黒ぶち眼鏡をかけた雪月花先生である。


 「・・・はい」


 俺はすぐに下を見る。俺は雪月花先生を女性として意識して見たことはなかった。一回りも年齢が離れていて、尚且つ先生という立場だったからである。ただ、綺麗な先生だなと思う憧れ的な感情は持っていた。しかし、今は34年前とは違う感情が芽生える。俺は転生したので高校生だが、中身は50歳のおっさんである。タイトな黒のパンツスーツは、体のラインを強調していてかなりエロい。そして、長い綺麗な黒髪と黒ぶち眼鏡がさらにエロ差を強調させ、少し低めの強く厳しめの口調が俺の心臓を撃ち抜く。この感情は恋や憧れとは違いエロい感情である。


 「すぐに教室に行くわよ」


 雪月花先生は、俺とほとんど目を合わせることなく振り返りスタスタと歩いて行く。俺はすぐに席を立ちあがり雪月花先生の後を追う。しかし、ピタッと体に密着した黒のスーツのお尻が、左右に優雅に揺れるさまを後ろから見て、俺は顔を真っ赤にして目のやり場に困るのであった。




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