第28話 班わけ


 ビックリしたわ!何このイケメンの新入生は!!しかも高身長だし!!!私の教師生活8年でこんな完璧なイケメンは見たことはないわ!!!!いえ、私の30年の人生で最高峰のイケメンだと言っても過言ではないわ!!!!

 私は教師よ、そして、あの子は入学したての15歳の高校生・・・手をだせば新聞沙汰のスキャンダルになり私の教師生活も終わってしまう。いえ、終わってもいいから仲良くなりたい・・・


 私は雪月花 蒼(せつげっか あお)30歳独身高校の教師をしている。教師と生徒の立場をわきまえており、数々のイケメン生徒から愛の告白を受けてきたが全て断ってきた。もちろん、生徒だけでなく同僚教師、他校の教師など、職場関係の男性からも日常茶飯事のように告白をされてきたが、それも全て断って来た。私は30年間一度も付き合ったことはない・・・なんてことはない。中学2年生の時に先輩の3年生と付き合い、高校を卒業するまでの5年間、その男性とお付き合いをした。しかし、私が大学に進学するために大阪に来たと同時に別れる事になる。大学時代は合コンで知り合った医者の男性と付き合う事になり、25歳の時、浮気をされてすぐに別れることになる。別れてすぐに友達の紹介でイケメン弁護士と付き合う事になるが、去年、またしても浮気をされて別れる事となった。

 外見も地位も名誉もお金もある男性二人とお付き合いをしてわかった事は、男性は浮気を平然とする生き物であるということであった。私は絶対に浮気を許す事はできない。お付き合いをすることは良い事も悪い事も一蓮托生するパートナー契約であり、欲望のまま突き進む理性のない動物との繁殖契約ではない。浮気をするような欲望のまま自己愛だけに特化した異性とは結婚はできないし、二度と信用するに値しないと考えている。

 今年で30歳になる私には新たなパートナーを見つけるチャンスは少なくなるだろう。しかし、私は信念を押し曲げてまで結婚をするつもりはない。自分の信念を捨ててお付き合いをして結婚をしても、そこに幸せは存在しないのだから・・・



 「やっぱり怒っているのかな・・・」


 俺は大事な入学式を遅刻した。母親からはきちんと学校に説明をしてくれているはずだが、雪月花先生は職員室から一度も振り向かずに教室に向かっていく。何か声を掛けてくれても良さそうなのに、声も掛けてもらえないので俺は怯えていた。

 教室は職員室がある校舎とは別にあり、西館と呼ばれる校舎の1階が1年生の教室になっている。俺はビクビクと怯えながらも雪月花先生のセクシーなお尻をチラチラと目をやりながら付いて行く。


 『ガラガラ ガラガラ』


 雪月花先生は教室の扉を開く。


 「みなさん!一旦席に座って静かにして下さい」


 教室内には30人ほどの生徒が席を立って話しをしていた。雪月花先生の言葉を聞いて生徒たちは即座に席に座る。


 「六道君の席は窓際の一番後ろの空いてる席です」

 「わかりました」


 席は名前の順なので『ろ』で始まる俺の名前は最後になりやすい。俺は窓際の後ろの空いている席に向かうが教室内の違和感を感じた。それは、全身を突き刺すような鋭い視線である。それも一つではなく無数の視線である。俺は何となくあたりを見渡した。

 俺が周りを見た時、全ての生徒が俺を見ていた。しかも口を少し開けながら何かとんでもない光景を見たかのように驚愕している。すると1人の男子生徒がぼそりと呟いた。


 「アイツ・・・モデルか!」

 「ヤバ!あんなイケメン見た事ないわ」

 「おいおい、ヤバすぎだろ」


 1人の男子生徒が一言を発したのを皮切りに次々に男子生徒が口を開く。


「お前どこ中なん?めっちゃモテるやろ」

「ライン教えてくれ!友達になろう」

「静かにしなさい!」


 雪月花先生の不気味な低い声が教室に響く。教室はすぐに静かになる。


 「六道君、早く席に着きなさい」

 「すみません」


 俺は慌てて席に座る。


 「六道君が来たので再度説明します。1週間後の月曜日にクラスメートとの交流を深める為に、くろんど池自然公園でバーベキューを行います。その班分けを今行っていましたが、班分けは出来たようね」


 黒板にはABCと三つの班が記載されていて、班ごとに名前が記入されている。男女5人ずつで合計10人の班が三つ作られる。


 「後は六道君と茜雲さんね。C班は8人だから2人にはC班に入ってもらうわ」

 「はい」

 「茜雲さんは体調不良で今日はお休みだから、明日先生から伝えておきます。班割りが決まったので、班のリーダーなど役割分担を決めたいと思います。窓側からA班、B班、C班と別れて集まってください」


 生徒たちは班ごとに分かれる。


 「俺は上園だ。六道よろしくな」

 「よろしく」

 

 背が高く体格の良い坊主頭の男性が俺に声をかけてきた。


 「僕は塩野です。上園君とは同じ中学の出身です」


 塩野は小柄のふとっちょである。顔も丸々としていて雪だるまみたいだ。


 「僕は川原です。上園君に班に誘ってもらいました」

 「僕は川原と同じ中学だった相川です」


 川原はどこにでもいるフツメンの優しそうな男だ。相川は小柄のぽっちゃり体系のおとなしそうな男だった。この班は男女ともにイケてない売れ残ったメンバーの集まりである。俺はそんなイケてない集団のグループに入れてホッとした。外見はレベルアップをして校内トップと断言してもいいくらいのイケメンを手にしたが、中身は何も変わっていない。いきなりクラスのイケてるグループに入るのは正直キツイと思っていたからである。



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