第13話 レベル上げ

 2週間で施設でのボランティアを辞めざる得なくなったのだが、この2週間で俺は好感度ポイントを600も得る事が出来た。最初の1週間は220ポイントで、2週間目は380ポイントも得る事が出来たのは非常に嬉しい事である。2週間目になってからは顔がイケメンになったので、女性職員、女性の入居者さんだけでなく、一部の男性を除いては、男性からも好感を得ていた。外見が良い人は、男女問わずに好印象を持たれるのは、当然の流れなのであろうと実感した。

 外見は非常に大事だとわかった俺は、顔面偏差値をレベル4にしたかったのだが、レベル4にするには好感度ポイントが1500必要である【レベルを上げるにつれて必要なポイントは増大していく】。レベル3までは簡単に上げる事ができたが、レベル4にするには一筋縄ではいかないのであった。だから俺は、他のレベルを上げてみようかと考えた。しかし、ここでレベル上げが簡単でない事を知る。それは、自分のある能力のレベルを上げれば上げるほど、他の能力レベルを上げる必要ポイントが増える事である。例えば、顔面偏差値をレベル2にするには10ポイント必要、運動神経をレベル2にするには10ポイント必要とする。先に顔面偏差値をレベル2に上げると、運動神経をレベル2にするには50ポイント必要になる。そして、顔面偏差値をレベル3にあげると、運動神経レベルを2にするには300ポイント必要になる。

 なぜ、このようなシステムになっているのか俺は黒猫に尋ねてみた。


 「人生はそんなに甘くないにゃ~」が答えだった。


 俺は素直に納得した。


 「入学式までに残り1110ポイントかぁ~。残り1週間ではきついかも」


 俺は他の能力のレベルを上げるよりも顔面偏差値をレベル4にすることにした。しかし、残り1週間で1110ポイントを貯めるのはかなり難しい。施設でのボランティアは出来なくなり、明日からはポイントを貯めるあてもない。俺はどうすればいいのか部屋で寝転んで考えていた。


 「また、駅でゴミ拾いでもしようかな」


 前回は失敗した駅でのゴミ拾いを再度挑戦することにした。それは、俺なりの1つの挑戦であり実験でもあった。2週間前はぶさいくだった俺だが、今は、イケメンだと言われる容姿を手に入れた。イケメンが駅でゴミ拾いをすればどうなるのか試してみたいと思ったのである。


 「やっぱり身長も伸ばした方がいいのかなぁ~」


 俺は顔面偏差値をレベル4に上げるつもりだった。しかし、身長を高くするのも大事なのかもしれないと感じた。背の高いイケメンと背の低いイケメンだとインパクトが全然違う。高身長イケメンのインパクトは、みんなの心を深くえぐるほど衝撃的な破壊力があり、誰もが振り返る羨望的な象徴である。しかし、スタイルの良い高身長が理想的だ。高校生なのでビルダーのようなガチムチな筋肉はいらなし、格闘家のような鋼のような筋肉もいらない。スリムで健康的な体で問題ないだろう。体重に関してはダイエットをしていたので、65㎏から60㎏まで減らしデブからは脱出してちょいプニ程度である。まだまだ体重を落とす必要はあるが、入学式までに間に合えば問題はないだろう。俺は迷ったすえ300ポイントを使って身長レベルを2に上げてから、眠りに就くことにした。



 身長 レベル1 150~160 レベル2 161~170 レベル3 171~178 レベル4 179~185 レベル5 186以上になる。身長の場合は急激に伸びる事もあるが、牛乳などのカルシウムを摂取することによって促進される。俺の現在の身長は153㎝であった。



 翌朝、俺はボランティアをしていた時と同じように7時30分に目を覚ました。


 「朝からゴミ拾いをがんばってみるか!」


 特にやる事もないし好感度ポイントも稼ぎたいので、朝からゴミ拾いをする事にした。


 「昴、もう起きたの?」

 「うん」

 

 俺は素っ気なく返事をする。


 「あら?昴、あんた背が伸びたんじゃない?」

 「え・・・」


 俺は寝て起きたら身長をレベル2にしたことを忘れていた。


 「す・・・少しくらい伸びたかも」


 俺はレベルを上げた事を思い出し、慌てて返事をする。実際にどれくらい伸びたのかは検討もつかない。


 「今は伸び盛りだから当然ね。なんか、春休みになってからあんた変わったわね」


 母親はとても嬉しそうに笑った。


 「そんなことないよ」


 なんだか照れ臭かったので否定をした。


 「ボランティア、ごめんね。せっかく昴がやる気を出してくれたのに。他で、ボランティアが出来ないか調べてみるわ」

 「いいよ。今日から駅のゴミ拾いをするよ」

 「大丈夫なの」


 不安げな目で俺を見る。


 「大丈夫。また警察官に声をかけられたらちゃんと説明する」

 「そうね。昴は善い事をしてるんだから自信をもっていいのよ」

 「わかった」


 俺は顔面偏差値を上げてすこしは自分に自信が持てるようにはなっていた。まだまだ小さな自信だが、以前の卑屈な性格に比べれば数段マシになったと言えるだろう。


 俺は朝食を食べ終えると松井山手駅に向かった。




 

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