第4話 好感度ポイント

 「いくら努力しても自分の能力以上には成れないのが人間にゃー」


 黒猫は俺の気持ちを見透かしたかのように言い放つ。


 「でも、昴にゃんは特別にゃー」

 「特別?」

 「そうにゃー。昴にゃんは【get a second chance】に選ばれた特別な人間にゃー。その説明をする為に昴にゃんに会いに来たにゃー」

 「俺は人とは違う能力があるのか?マンガのように異世界に転移した時に神様からチート能力を与えられるような事が俺にもあるのか?」

 「そうにゃー。昴にゃんが以前いた世界にも何でも出来る特別な人間が居たと思うニャー」

 「確かにスポーツ選手など並外れた能力を持っている人が居たと思う」

 「あれは違う時間軸の世界から招待された【get a second chance】のような特権を得て来た人間にゃー。でも、昴にゃんは100年に1度の超レアな【get a second chance】だから、得られる力は強大にゃー」

 「俺はあの有名なスポーツ選手よりもすごい人物に成れるのか?」

 「そうにゃー」

 「でも、そんなすごい能力があるようには思えない・・・」



 見た目は全く変わっていないから自分に何か変化があるのか全く分からない。



 「今の昴にゃんは15歳の春の時の昴にゃんと同じ能力にゃー。違う点と言えば50年間生きてきた知識があることくらいにゃー。でも、昴にゃんが50年間で得た知識は、別の時間軸の世界に来たからほとんど役に立たないにゃー」

 「それなら何の意味もないじゃないかぁー」



 俺は思わず大声を上げてしまう。


 

 「最後まで話を聞くにゃー。初めから優れた人間などいないにゃー。どんな天才でも努力を惜しまずに頑張ったから成功してるにゃー」



 黒猫の言う通りである。小説のように神から与えられた能力で、たいした努力もせずチートで世界を渡り歩くなんて現実世界ではありえない。



 「俺も一生懸命に勉強をしたり、スポーツを続ければ、東大に合格したりプロスポーツ選手に成れるってことなのか?」

 「それは無理にゃー」

 「え!」



 俺は目の前が真っ暗になった。



 「どんなに勉強やスポーツを頑張っても、昴にゃんの能力では絶対に無理にゃー」

 「俺をバカにしているのか!さっき俺には特別な能力があると言っただろう」

 「怒らないでちゃんと聞くにゃー。昴にゃんの能力は他の人間が持っている能力とは全然違うモノにゃー」

 「どういうことだ」

 「ステータスオープンと言ってみるにゃー」



 俺の怒りはまだ収まっていないが、とりあえず黒猫の言う通りにしてみることにした。


 

 「ステータスオープン」



 すると俺の目の前に透明のパネルが現れた。パネルにはこのように記載されていた。



 六道 昴 (15歳) IQ72(レベル1) 身長153㎝ 体重65㎏(レベル1) 顔面偏差値 レベル1 運動神経 レベル1 器用さ レベル1  スキル なし 好感度0ポイント



 「全てレベル1かよ!」



 俺は思わず自分のステータスに突っ込みを入れる。



 「そのとおりにゃん。昴にゃんは全ての項目でレベル1というとてもレアな能力の持ち主にゃん。もちろん、悪い意味でのにゃん」

 「でも、がんばればレベルは上がるのだろ?」

 「無理にゃん。レベルとは生まれながらに与えられたMAX値で変える事が出来ないにゃん。でもレベル1でも伸びしろがあり、例えば身長なら、レベル1だと150㎝~160㎝だから、カルシウムをたくさん取れば伸ばすことができるにゃん。でも、160㎝以上には絶対にならないにゃん」


 「そうだったのか・・・だから、俺は以前の世界ではどんなに頑張っても上手くならなかったのか」


 「そうにゃん。でも、無駄ではないにゃん。レベル1でも何もしなければレベル1の最低の数値のままにゃん。でも、がんばればレベル1の最高値に達する事ができるにゃん」

 「しかし、いくら努力してもレベル2の人間には勝てないのだろ?」

 「レベル2の数値の人間が努力をしなければ勝てるにゃん。でも、レベル2の人間が同じくらい努力をすれば絶対に勝てないにゃん」

 「だったらやるだけ無駄じゃないか!」

 「やらないよりかはましにゃん」



 黒猫が言うのはもっともだけど、どんなに頑張ってもレベル1から抜けれないのならやる気は出ない。



 「結局2度目の人生もレベルが1だと同じ人生を繰り返すってことだろ・・・」

 「昴にゃん!ここから本題にゃん。【get a second chance】に選ばれた人間はレベルを上げる事が出来るにゃん」

 「本当なのか。でもどうやってレベルを上げるのだ?例えば、背を高くするにはたくさん牛乳を飲めばレベルが上がるのか?」

 「違うにゃー。レベルを上げるには、人に親切な事をして好感度を上げるにゃん。好感度ポイントをレベルアップに必要な数値まで貯めると、好きな能力のレベルを上げる事が出来るにゃん。例えば、身長をレベル2にすると、身長の伸びしろが161㎝~170㎝になるにゃん。今は伸び盛りだから、牛乳をたくさん飲めば1週間もあれば10㎝ほど伸びる事ができるにゃん」

 「人に親切にして好感度ポイントを貯めて、そのポイントで自分が伸ばしたい能力のレベルを上げる。そして、能力を引き出すために努力をすれば、レベルの範囲内なら成長をするってことでいいのか?」

 「そうにゃん。でも、例外はあるにゃん、顔面偏差値だけはレベルを上げると、自然と男前になるにゃん。努力は必要ないにゃん。あと、スキルに関してはレベルを上げるのでなく、あるイベントをクリアーしたり、レベルアップの特別ボーナスとして取得することができるにゃん」

 「どんな特技があるのだ」

 「それは秘密にゃん。知らない方が面白いにゃん」

 「わかった」



 俺は以前の世界では、いくら努力をしても成長しない自分が悔しくて辛かった。でも、二度目の人生は違う。レベルを上げて努力をすれば成長するのだ。俺は一生懸命努力して、二度目の人生を悔いのないようにがんばる!と決意したのであった。


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