姉の美術館
【京都人】内田ミヤコ
第1話
お姉ちゃんは私の事が大好きです。私がいないと何も出来ないお姉ちゃん。ダメ人間です。
私のスマホには私の位置情報をお姉ちゃんのスマホに送信し続けるアプリが入ってます。私がどこにいるかは全てお姉ちゃんに知られてる。お姉ちゃんはこっそりインストールしたつもりだけど、私はちゃんと気づいてます。気づきながら、気づかないフリをしてあげてるんです。馬鹿なお姉ちゃん。
嘘嘘、冗談。お姉ちゃんの事、私も大好きだもん。
けど、時々、ホントに馬鹿だな、と思うことがあります。
ある日、なかなか寝付けない日がありました。そんな日は友達とダラダラとLINEをして時間を潰します。けど、友達からも返事がなくなりました。先に寝たな…。
なんとなーく、おすすめされる動画を見てみると、ふと不思議な動画を見つけました。
ある現代アートについてまとめられた動画で、そのアートは死体の標本をモチーフにした作品でした。へーっと思ってみてたのですが、動画ではフリー素材のイラストで説明されててよく分かりませんでした。
私は一体どんな作品なんだろう、と段々興味が湧いてきて。えへ。なんだか怖いもの見たさで私はその作品を検索してみました。
すると、死体美術館、というホームページにたどり着きました。
色んな動物の死体の写真がありました。水中の魚の死体、森の中の牛の死体、虫の集った獣の死体…どれもおぞましいのですが、目が離せません。私は息をするのも忘れて食い入るように見ていました。
あっ…。私はある写真で、思わず声が漏れました。と、同時にゾワゾワした、怖いような…少し、気持ちいいような感覚が体から胸に向かって走りました。
人の、女性の、姉に似た死体の写真がありました。死体は体の一部がスッパリときれていて、断面図もはっきり見えました……きらきらしてて、とても、綺麗です。
ど、どうやって撮ったんだろう?こんな綺麗な人の死体。というか、お姉ちゃんの体、こんな綺麗なんだ。
…みんなは見た事ある?ないよね!ね!とても綺麗なんだよ。
私は色々なアングルから撮られた写真を、何枚も何枚も見ました。どうやって撮ったんだろう…。
気がつくと、私は寝ていました。
翌日、夜になると例のホームページを探しました。……が、検索しても見つかません。紹介していた動画と消えてました。けど、私の頭には、瞼の裏にはあの美しい断面図がすぐに浮かんできました。もっとみたい。あのアングルはどうなってるんだろう。そんな事を考えながら、私はベットの上で顔を両手で多い、物思いに耽っていました。すると。
どうしたの?まだ起きてるの?姉が部屋に入ってきました。ノックしないのはいつもの事。無頓智で馬鹿なお姉ちゃん。私はいつもなら悪態を着くところですが、姉の、姉を見てぎょっとしました。
ホームページでみた、あの白い腕が目の前にあるのです。姉は私を撫でようと手を伸ばしました。私はその腕にじゃれるふりをしてこっそり、歯を立てました。
ふふっ何?とくすぐったがる姉。
私は昨日の死体の写真を思い出しながら、目の前の腕が愛おしくてたまらなくなり、更に顎に。ぐっ。と力を入れて。しまいました。
すると、ぷっと白い肌が切れて私の口に血が入りました。
はっと姉から離れ、ごめんなさいと私は謝りました!
その時みた姉の表情が私は忘れられません。
姉はふふっと笑っていました。怒るどころが、恍惚として、少し嬉しそうで。
馬鹿なお姉ちゃん……ほんと、何考えてるか分からない。
私のスマホには私の位置が姉にバレるアプリが入ってます。私がいつ、どこにいるか全部お姉ちゃんは知っている。私がどんなホームページを観てるかも知ってるのかな。私は気づかないフリをします。
姉の美術館 【京都人】内田ミヤコ @uttixi
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