1章 異世界転移しても社畜だった件

第1話

 ああ……視界がボヤける……。

 携帯は……あれ、近くに無いな。アラームが鳴っている音も聞こえないし……まだ七時半になる前だっていうのか。なら、二度寝を……って、そんな余裕も無いよな。二度寝して起きられる確証なんて無いんだ。


「……はぁ?」


 えーと……ここは……見知らぬ天井、とかってレベルじゃないな。森の中……としか言えそうにない。えーと、俺は間違いなく働いていて仮眠室で横になってから……その後の記憶は無いな。


 いや、寝たんだから当たり前なんだよ。

 だけど……どこかでここについての情報がある気がして考えてしまうんだ。だってさ、それだけ今の状況は非現実的過ぎて信じられない。……いや、むしろ、ここは夢の中だと思った方がいいのかな。


 だったら……思いっきり、頬をビンタしよう。

 大丈夫、どうせ、痛くない。こんな非現実的な事を信じられるほど俺は愚かじゃないんだ。すぐに元の嫌な世界に引き戻される事が目に見えている。


「ってぇ!」


 え、痛いの? 夢じゃないの?

 いやいやいや……夢だけど痛いって言う可能性すらあるんだ。ここは一つ、アラームが鳴るのを待つ事にしよう。となれば、夢の中だろうと二度寝をして……はい、そんなメンタルはありません。


 日本……にしては聞いた事の無い鳴き声が響いているな。物によっては化け物みたいな形容のし難いもし鳴き声もあるし。いや、だからと言って、外国だとも思えやしないんだけど……じゃあ、異世界?


 うーん、異世界ならどれだけ嬉しいか。

 ただ、そこまで俺も現実と夢をごちゃ混ぜにしない。推しの結婚にブチギレるような自称ファン達とは違うからな。……でも、小さな夢だけは残しておきたいから……。


「ステータス……って、出るんだ」






 ____________________

 名前 カトウ コウタ

 種族 人族(ヒューマン)

 年齢 15歳

 レベル 1

 HP 150/150(C)

 MP 355/355(A)

 物攻 85(D)

 物防 55(E)

 魔攻 115(C)

 魔防 145(B)

 速度 115(C)

 幸運 100(S)

 固有スキル

 ・ガチャlv1

 スキル

 ・隠蔽LV1

 魔法

 ・なし


 ログ

 ・転移に成功。※※※※からの干渉を受け※※※※を開始。

 ・応答不能。再起動に入ります。

 ・再起動失敗。再構築不可能。現状の状態維持を優先化。

 ・優先化に成功。

 ____________________






 えーと……これは俺の好きだった作品の画面と同じだ。間違いない、限定公開されたアニメ版の五分間で映ったステータス画面と瓜二つ……という事は、ここは俺が好きだった作品の中だっていうのか。


 いやいやいや……そんな話があるわけない。

 だってさ、異世界に転移したってだけでも現実とかけ離れているのに、そこに俺の大好きだった作品と同じ世界っていうのも加わるなんて誰が信じられるんだ。……でも、ステータスを見た感じは似ているどころか、まるまる同じだからなぁ。


 信じるか信じないかは置いておいても……俺の知らない世界では無いというのは確実だ。いや、この世界のステータス画面だけが似ているっていうのも有り得なくないか。とりあえず、何も知らないよりは間違いなくマシだ。


 ただステータス……これにも疑問点はある。

 一番、気になるのは目立つログというものだ。確かに原作でもログがあってレベルアップだったり、倒した魔物だったりを知るための有用な存在ではあったが……ただ※※が何なのかについては分からないし……。


 これに関しては気にするだけ無駄か。

 原作に無いものを俺が考えたところで分かるわけもない。今は他の気になる点について考える事にしよう。とは言っても……気になるのはガチャと年齢くらいだけど……。


 まぁ、ステータスの数値とかに関しては原作準拠であれば高いか低いかの判別はつく。例えば横の括弧の中のアルファベットはその人の才能の値だったはずだ。FからSまでの間だったから平均より少し上って感じかな。


 年齢の疑問は兎も角として……ガチャだな。

 これはアレか、主人公と同じ固有スキル{その人の才能を具現化したスキルで持っている人は少ない(早口)}のガチャ……であっているよね。だとすれば、固有スキルの中でも大当たりのはず。


 ステータスのガチャの部分をタッチしてみる。予想は当たりだ、このスキルも俺の大好きだった作品とまるまる同じ……って事は、初回無料の十連があって……。


「おー……初回無料で一個は確実にURウルトラレアが出るガチャだ。ここまでしてくれるなんて誰か知らないけど感謝です」


 もうここまでで俺としては満足だ。

 それだけ、あの作品には入れ込んでいたし、グッズとかにも金をかけた。何だったらファンの中でアニメ化を一番、喜んでいた自信だってある。それと瓜二つってだけでもファンからしたら嬉しいどころの話じゃない。


 もしも、ここが俺の大好きだった世界と同じだったら……そう考えるだけで胸が踊るレベルで済まない程に心臓が跳ね上がってしまう。似ているだけで済む話では無いからね。


 一応、ガチャの画面から説明を見て……ふんふん、読まなくても分かっていた事だが、ドロップする物は生物、非生物を問わず排出され、レア度はコモンレアSRエスアールSSRエスエスアールURウルトラレア五つだ。それで排出率が順に六十五パーセント、二十パーセント、十パーセント、四パーセント、一パーセント……原作よりも酷くなっているな。


 ま、まぁ、いいよ。毎日、無料の常設ガチャを一回だけ回せるし、ログインボーナスだってある。今だってログインボーナスで銅貨三枚を貰ったんだ。これを金貨まで貯めれば十連を回せるさ。


 という事で……とりあえず回しましょう。

 主人公だって良い物を多く引いていたんだ。きっと俺だって良い物を引けるはず……さぁ、来てくれ。




 俺は十連ガチャのボタンを押した。

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