第2話
演出は特に無く、目の前に十個の玉が現れる。それが一つずつ割れていき、道具が出てくる……まぁ、原作準拠(n度目)なガチャ画面だ。
それで出てきたのがURが二個、SSRが一個、SRが一個、Rが三個、Cが三個か。……URが二個って事は一個は自引きしたって事かな。運が高かったから割と引きやすいのかもしれない。
一先ず、ガチャ画面から出てきたアイテムを取り出してみる。ここら辺は原作知識があるからこそ、迷わずにできた行動だ。誰もガチャと倉庫が一緒になっているとは思わないよね。倉庫兼鑑定可能な空間ともなれば誰だって喉から手が出るほど欲しいはずだ。
これは……うーん、良いのか悪いのかが分からない結果だなぁ……。例えばURと思わしき物がローブと魔法拳銃、それと腰掛けポーチのどれか二つと見た。
ローブは物理魔法の両方に大きな耐性をもたらすのと自分の意思で気配を消せる能力があって、魔法拳銃は魔力を消費して銃弾を撃ち込むといった代物だ。そして、最後の腰掛けポーチが無限(総重量一トンまで)に物が入るアイテムらしいね。
これの次くらいに使えそうなのが水筒かな。多分だけどこの水筒がSR……っぽいね。魔力を注ぎさえすれば幾らでも水が飲めるサバイバルアイテムとしては最高の物だ。……って事で、ここは一つ。
「かぁー、美味い!」
お風呂上がりのキンキンに冷えたビール。
それ並に今の涸れた喉にこの水はきくな。欲を言えば水以外も飲めると嬉しかったが……まぁ、そこは仕方が無いか。仮にジュースしか出なかったとしたら料理とかには使えなくなっていたし。
それで残りが片手剣、赤い石、銀貨が五枚、水晶玉みたいなものが二つ……か。
片手剣が鋼の片手剣というもので価値は少し高いけど重い分だけ使用者を選ぶものらしい。まぁ、持って見た感じ俺には使えないかな。
そして赤い石、これは火の魔石と呼ばれるもので内蔵されている魔力分だけ炎を作り出せるアイテムだ。今はまだ魔法とかは使えないから当分はこれを使って食事を作る必要があるかな。
そして銀貨は……まぁ、言わずもがな、この世界での通貨だ。五枚なのは恐らく二枚と三枚とかで出てきたからだと思う。……せめて金貨ならガチャの資金にできたというのに。
最後に水晶玉……これは恐らくレア度の割には価値が高いものだと思う。というのも、この二つはスキル玉と呼ばれるもので割った人がスキル玉に入っているスキルを獲得できるって言う……物によっては小国の国家予算並みに高値で売れるアイテムだからね。
ただし、中に入っているスキルは薬術と鍛治術という戦闘に関わらないスキル。まぁ、それらに精通していなくても作れるようになれるっていうだけで価値はあるが……遠回しに非戦闘員として頑張れって言われているようでムカつくんだよなぁ。
折角、異世界に来たのに社畜になるのはゴメンだからね。あの主人公のようにカッコよく戦って、沢山の女の子を娶って、そして幸せに生きていくんだ。……っていうのは建前で金を稼いだら田舎でゆっくりと暮らしたいかな。
とはいえ、有って損をするスキルでは無いから獲得はしておく。主人公も言っていたけどスキルは言わば、日本で言う資格と同じようなものだ。あって損はないけど得が無い時もある……ただ、あったら就職の幅が広がるっていう代物。
多分だけど俺に戦闘は向いていない。
じゃあ、非戦闘員として、それこそ、薬術スキルや鍛治術スキルで稼ぐ人になりたいかと聞かれれば絶対にノーだ。誰かのために働く事自体は別に構わない。だけど、誰かの下について働くのは専らごめんだからな。
今度は従わされる側ではなく従わせる側になってやる。今の俺は十五歳、つまりピチピチの男子中学生だ。それなら失ってしまった青春を取り戻す事だって可能なはず……俺が求める事はただ一つだけ。
「人並み以上の幸せを手に入れるんだ」
ローブを着込んで魔法拳銃を構える。
腰にはポーチを付けたから魔物……がいるかは分からないけど、敵を倒したら中に入れていこう。一応、片手剣だけポーチに入れて他は倉庫の中に戻しておいた。
という事で……どこに行こうか。
ぶっちゃけた話、俺の考えている予測が当たっているかも不明だからなぁ。適当な場所へ行くって言ってもどこに何があるかも分からない……となれば、やるべき事はアレしかない。
「倒れた方向へ行く……ただそれだけ!」
少し大きめの枝が倒れた方向へ。
昔ながらのやり方だけど他にやり方が思い付かないのならこれでいい。それで倒れた方向は……大きな山とは反対だな。まぁ、山を登るよりは平坦な道を進む方が楽だからいっか。
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