第4話 次戦に向けて
一、二回戦は、ひとまず勝ち上がることができた。
一回戦は七対二で勝利した。
こちらが点を与えなければコールドゲームにできていたが、勝てればなんでもいい。
投手の負担が減る、という点は確かにコールドゲームのメリットだが、もともと狙うほどの余裕があるわけでもない。変にコールド勝ちして悪目立ちするデメリットを考えれば、コールドにならなくてよかった、とすら言えるかもしれない。
二回戦は五対三。
守備では射水が多少ヒットを打たれつつも要所を抑え、攻撃も打線がそれなりにつながった。
問題は次の三回戦だ。
三回戦の対戦相手は
毎年中堅クラスの成績を上げている公立高校で、とんでもない強敵、というほどではない……というのも相手に失礼だが、甲子園出場経験のある強豪校というわけでもなければ、優れた逸材を隠し持っている、というわけでも、俺の知る限り、ない。
ただし、はっきりと勝つ意志のある高校なのは間違いない。
こんなことを誰かに言えば、そんなのは当たり前だろう。どの高校だって当然勝ちたいはずだと、そう返されてしまうかもしれない。実際、確かにそのとおりだ。
だがその度合いは、各校で異なる。
甲子園出場常連の強豪校と、毎年一回戦で敗退している高校では当然、目標もモチベーションも違う。
また、三回戦、四回戦と勝ち進み得る中堅以上の実力を持つ高校でも、勝つことを至上命題としている高校と、自分たちのモットーやポリシー、戦い方に固執している学校や、選手たちの身体や将来のことを考え、ときにあえて勝率の低くならざるを得ない選手起用をしているような高校では当然、勝つことへの執着がまるで違う。もちろん、手強さも。
そして次の対戦相手となる新津高校は、前者であるように、俺の目には映った。
突出した選手がいるというわけではない。卑怯な手も辞さない、などというほど極端な戦法をとるわけでもない。
だが、常に勝つために最善と思える手を打つ。
そういう印象を、俺はこの高校から受けた。
となると狙われるのは……
(築城、だよな。やっぱり)
これまでの二試合でホームラン四本にツーベース一本。
安打の全てが長打のスラッガー相手に、まともに勝負してくれるとは思えない。
そういう意味では、狙われるというより避けられる、と言った方が適切なのだろう。
本当に狙われるのは、そのすぐ後ろに座る打者だ。
(あいつが、三回戦のキーマンになるな)
打順を変えるという方法もある。
だが、変えない。少なくとも今回は。
この先を勝ち進むためにはいい加減、あいつにも化けてもらう必要があるのだから。
そしてもう一つ。
(次の試合、射水は使えないな……)
別にケガをしているわけでなければ、疲労が限界に達したわけでもない。
だがこちらも、この先を勝ち進むためには射水一人に頼りきりというわけにもいかない。
猛暑で投げる夏季大会では、今以上に体力の消耗が激しくなるし、この春季大会だけのことを考えても、決勝まで勝ち上がる、決勝を勝ち進むためには、エースの体力はなるべく温存しておきたい。目に見えない疲労は、確実に射水の身体を蝕んでいくはずだ。
だから、次の先発は……。
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