第12話 先輩

あれから3年が経った。

私は普通に大学生活を送っていた。


七瀬先輩は今年の春卒業した。

私の事を諦められないらしく、何かあるたびに私に声を掛けてきて面倒だった。

今はそれも無く、私はホッとしていた。


若菜は七瀬先輩に一目惚れしたわりには、あっさり別の彼を見つけて今はラブラブだ。


私にはアビがいる。


私はいつでも二人が帰ってきてもいいように掃除を欠かさず行なっている。


電話が鳴った。

先輩からだった。

「先輩、お久しぶりです」

「空ちゃん、元気にしてる?」

「はい、何か用事ですか?」

「実は、会社で新しく出来た遊園地の招待券もらったんだけど、一緒にどうかと思って」

「はあ、遊園地ですか?」

「うん、無理はしないでいいよ」

「じゃあ、お断りします」

「えっ!いや、僕は空ちゃんと行きたくて誘ったんだけどダメ?」

「はあ、ダメではないですが友達としてなら良いですよ」

「あっ、うん。もちろん友達としてだよ。じゃあ、今度の日曜日迎えに行くよ」

「はい、わかりました」

と電話を切った。


先輩は私をどうしたいのだろう?

トトがよく交尾男と言っていたが、そうなのかもしれない。

私はアビ以外は絶対に嫌だ。私はアビのものなんだから。


遊園地に行く日。先輩が迎えに来た。


「空ちゃん、おはよう」

「おはようございます」

私は先輩の車に乗った。

先輩は上機嫌だった。


「先輩は絶叫系は大丈夫ですか?」

「ああ、実は苦手なんだよね」

「私は好きですよ」

先輩は黙っていた。

「空ちゃん、着いたよ」


私達は遊園地へ向かった。

結構混んでいた。

「先輩は何に乗りたいですか?」

「うーん、メリーゴーランド」

「えっ!可愛すぎますよ」

私は笑った。

「空ちゃん、やっと笑ってくれた」

と先輩は嬉しそうだった。

「メリーゴーランドに乗るよ」

と先輩は私の手を握った。


私達はのんびりと遊園地を満喫した。


「空ちゃん、最後に観覧車乗ってもいい?」

「はい」


私達は夕日を見ながら観覧車に乗った。

先輩が私をじっと見つめている。

私は目をそらし夕日を眺めていた。


「空ちゃん、僕じゃだめかな?」

「ダメです。私には決まった人がいるんです」

「その人いつ現れるの?」

私は少し間を置いて

「まだわからない」

「そんなのおかしいよ!側には僕がいるのにどうして!こんなに好きなのに!」

先輩は私を抱きしめた。

「先輩、やめてください」

そして私にキスをした。

私は思わず先輩を引っ叩いた。

「先輩、酷いです」

無言のまま、観覧車を降りた。


私は振り返りもしないで、そのままバスで帰った。


メールが来ていた。

「さっきはごめん」と。


先輩の気持ちはずっとわかっている。

けど、私はアビしか愛せない。


一カ月後先輩は転勤になり地方へ行った。

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