第11話 試練

一瞬でセトの使いに空を奪われた。

「空、今助ける!」

アビはセトの使いを追ったが追いつかない。

アビとトトは空を見失った。


セトの使いがニヤリと笑って

「狭間に落とした」と言った。

アビとトトは急いで空のいる場所へワープする。

「アビ!落ち着くんじゃ!」

アビは必死だった。

「頼む!空無事でいてくれ!」


空がいた!


アビは急いで空に青い石を渡した。

石が無ければ、空はここで永遠に彷徨うことになるからだ。

トトの魔法でなんとか狭間からは脱出できた。

だがもうワープが出来ない。

すると、セトの使いがアビに呪いをかけてくる。

アビには通用しない。トトの魔法とアビの攻撃でセトの使いを仕留めた。

二人はセトの使いの石を使ってワープができた。



見慣れた光景が広がる。

ここは地獄の門。アヌビスの使い達が忙しそうにしていた。

「アビ、戻ってきたぞ」

「ああ、そうだな」

「アヌビス様に報告にいくぞ」


巨大な黄金の門がある。そこを抜けて長く細い道の先にアヌビス様の館があった。トトがいなければここは通れない。


「アヌビス様に報告がある。会わせてほしい」

とトトが門番に伝えた。

しばらくして案内された。


「入れ」

低い太い声が響いた。

トトとアビが中へ入った。

大きな広間には不思議な模様の絨毯が敷かれおり

蝋燭のシャンデリアが柔らかく広間を照らしていた。その奥にある立派な黄金の椅子にアヌビスは座っていた。

トトとアビは膝まづき頭を下げた。


「トト、しばらく人間界で何をしていた」

アヌビスが質問した。

「恐れながら申し上げます。ワシの不注意で飛動石を無くしてしまい、見つかるまで滞在しておりました」

トトは震えながら答えた。

「ふむ、嘘ではなさそうだな。だが長過ぎる。

逃げた魂は仕留めたか?」

「はい、仕留めました」

とアビが答えた。

「それで、我に何用か?」

アヌビスは面倒くさそうに言った。

「お願いがあります」

アビが言った。

「なんじゃ」

「私は人間になりたいのです。今までアヌビス様に仕えていたご恩は心から感謝しております。もし叶うのであればどんな試練にも耐え抜いて人間となって一生を送りたい。この願い聞き入れてもらえないでしょうか」

アビは真剣に伝えた。

「ワシからもお願いします」

トトも頭を下げて頼んだ。


「ガッハッハ!人間になりたいと?人間は愚かで傲慢だ。それに命なんて儚いものだ。それになりたいのか?」

アヌビスは呆れた顔をしていた。

「はい」

とアビは答えた。


「そうか、わかった。特別に人間になることを許そう。一つ条件がある。お前が食らった魂に勝ったら人間にしよう。そして、人間界で自由に暮らせ。もし負けたら魂を食い尽くされ、お前は消滅する。それでもいいか?」


「はい、必ず勝って人間になります」

アビは迷いなく答えた。

「よかろう。お前は数千万もの魂を食らっておる。時間はかかるが頑張れ。健闘を祈る」

とアヌビスは言った。

「準備はいいか?」

「はい」

とアビは答えると消えてしまった。


「アヌビス様、ありがとうございます。寛大なお心遣い感謝いたします」

トトは笑顔で頭を下げた。


「そんなに人間になりないなんて、どんな素晴らしい事があったのか?」

アヌビスは質問してきた。


「彼奴は人間を愛してしまったんです」

トトは答えた。


「面白いことが起きるものよ。この冥府に愛なんて無縁だからな。愛の味を知ったか。羨ましいかぎりだ。トト、お前も人間界に戻りたいのか?」

アヌビスは愉快な気持ちだった。

「はい、彼奴と一緒に戻りたいです」

とトトは答えた。

「わかった。戻るといい。それまでは私の秘書をしてくれ」

「はい、喜んで」

トトは頭を下げた。


アビは戦っていた。自分が食らった魂と。無数の魂が四方八方から襲ってくる。

アビは絶対に負けるわけにはいかないのだ。

何度も何度も立ち上がって戦った。

空の事だけを考えて戦った。


まだ青い石の力が残っているうちにトトは空にメッセージを送った。

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