第9話 石の行方

もう、11月。あれから半年が過ぎた頃

偶然理緒に会った。

「あら、空元気?親戚の人まだいるの?」

「うん」

「自宅に行っても会えないし、どうしても会えないのよ。空が何とかしてくれない?」

「ごめん、出来ないよ。私の彼氏だから」

「はぁ、彼氏じゃないって」

「ごめん、あの時は言えなかった」

「別にいいわ!私まだ諦めてないから」と去っていった。

その時オーシャンブルーのイヤーカフが見えた。

「理緒!待って」

「何よ」

「そのイヤーカフどうしたの?」

「ああ、綺麗でしょ。博物館の前で拾ったの。私気に入ったから父にお願いしてイヤーカフにしてもらったの。本当はもっとオシャレにしたかっんだけどこの石加工ができないから、そのままの形で作ったの。素敵でしょ!この石何の石か分からないのよ」

「うん、とても似合ってる」

「最近、これ着けてると良い事あるんだよね」

「そう、良かったね」

「だから空にも会えたのかも」

「ごめん、引き留めて、じゃあ」


私はトトの探している石だと思った。確か青い石って言ってたと思う。理緒が持っていたから分からなかったんだ。でも、どうやって取り戻すの?

早く帰って事情を話さないと。私は急いだ。


「空ちゃん、急いでどうしたの?」

先輩だった。

「ごめん、急用で帰らなきゃ」

と先輩には悪いが今はそんなどころじゃない。


「ただいま」

「トトいる?」

「いるぞ、どうした?」

「石見つかったよ、たぶん」


私は事情をトトに話した。

「ふむ、どうしたものか」トトは悩んでいた。

「トトの魔法で何とかならないの?」

「眠らすことはできる。だが記憶は消せないからそこが問題じゃよ」

「すり替えるのは?」

「ほぉ良い案かも。だが代替品はどうするんじゃ」

「トトつくれないの?」

「見本があれば何とかなるんだが」

私はインスタに投稿してるかもしれないと思い探してみた。理緒のインスタ。

「あった。これだよ」

トトに見せた。

「おお、これじゃよ。やっと見つかったわい。

さて、少し時間がかかるが作るとするか」

トトは部屋にこもった。


私はあと少ししかアビといられないと思った。

胸が苦しい。どうしよう不安が襲う。


「空、帰ってたのか?」

「アビ、ただいま」

石の話をした。

「そうか、見つかったか。その時が来たな」

アビは遠くを見つめていた。

「アビともあと少しだね」

「ああ」

私をギュッと抱きしめた。

「空、離したくない」


二人は愛し合うことで寂しさを埋めることしか出来なかった。


1週間後、理緒を自宅に招いた。

理緒はアビに会えるのを楽しみにしていた。

私はお茶を入れて、アビが彼女の話相手になった。

彼女は上機嫌で話が弾んでいた。

後ろではトトが呪文を唱えていた。


彼女は眠りについた。私がイヤーカフをすり替える。トトは呪文で彼女を起こした。


「あれ、私?」彼女の反応に一瞬焦る。

「理緒どうかした?」と私は聞いた。

「いや、なんでもない。来週はアビさんと買い物行く約束したし。空、ちょっと彼氏借りるね」

「うん、仕方ないよ」

「じゃあ、私帰るわ」


理緒は疑う事なく帰って行った。


トトが喜んでいた。

「空、アビ、よくやった!」

「うん、上手くいってホッとしたよ」


「出発はいつ?」私は聞いた。

「明日の夜10時じゃ」


アビは沈んでいた。


トトは準備があると言って部屋にこもった。


私とアビはやり場のない寂しさが襲ってくる。

もう二度と会えないのだから。

「今日は最後の夜だね」

「ああ」


「アビ七夕覚えてる?」

「ああ、短冊に願い事を書いたな」

「うん、トトから聞いたんだけど、私とアビ同じ願い事してたんだって!」

「そうか、叶えたいな」

「そうだよ。叶うかもしれないよ」


いつまでもこのまま家族でいたい




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