第5話 どっちにするか
私は目を覚ました。
昨日、アビにキスしちゃった。
どんな顔して会えばいいの。恥ずかしいよ。
トトが「空、朝ごはんは?起きたのか?」
と入ってきた。
「おはよう、今起きた。アビはどうしてる?」
「ああ、いつもと同じじゃがどうかしたか?」
「うん、昨日私からアビにキスしちゃって」
「ほぉ、いいじゃないか!だからアビのやつ機嫌が良かったのじゃな」
「空、大丈夫だ。アビもワシも家族なんだから気にするでない。朝ごはん食べよう」
「うん」
「おはよう、アビ」と私は恥ずかし気に言った。
「空、おはよう」アビは笑顔だった。
「さあ、みんなでいただきます」
いつも通りの朝だった。
私はアビのお弁当を持って大学に行った。
若菜がいきなり来て
「昨日お祭り七瀬先輩と行ったでしょ」
と怒って言われた。
「うん、行ったよ」
「なんで、空なの!私断られたんだよ!どうしてくれんのよ」
と喧嘩ごしで言ってきた。
「ごめん。私は七瀬先輩に誘われて行っただけで」
「はぁ、あんたが邪魔なの!わかる?」
私は何も言い返せなかった。
「もう、先輩に近づかないで!わかった」
と行ってしまった。
ああ、どうしてこうなったの。もう、憂鬱だよ。
しばらくサークルも行くのやめようと決めた。
私は帰宅部になったので帰りが早くなった。
トトはエアコンの効いてる部屋で寛いでる。
アビは暑い部屋でトレーニングをしている。
私は悩んでいた。先輩の事、若菜の事、サークルの事。どうしよう。
アビもトトも私の様子を見て心配していたが、あえて私も相談しなかった。
1週間が経った。七瀬先輩からはメールや電話が毎日ように入っていた。私は若菜に言われてからずっと先輩を避けている。ああ、どうしよう。
インターホンが鳴った。
七瀬先輩だった。さすがに無視も出来ず中に入ってもらった。
「空ちゃん、どうしたの?僕嫌われてるかな?
あれからずっと心配してた。空ちゃん、僕は君だけだよ」
七瀬先輩は追い詰められてる様子だった。
いつもの余裕がある素敵な先輩ではなかった。
「先輩、大丈夫ですか?ごめんなさい。私、若菜から先輩に近づくなって言われて、避けてました。本当にごめんなさい」
「嫌いになったわけじゃないんだね。僕どうにかなりそうだったよ」
ホッとした様子で私を見つめた。
「ごめんなさい」と謝った。
七瀬先輩は私を抱きしめて
「メールだけでもいい。お願いだから無視しないで」切ない声だった。
「はい、わかりました」
私の心は揺れ動く。先輩を放ってはおけないと思った。
トトとアビは見ている事しか出来なかった。
アビもまた切ない気持ちになっていた。
翌日、私は屋上でお弁当を食べていた。
若菜が来た。私は会いたくなかった。
「空、この前はごめん。やっぱりサークルに来て欲しい。七瀬先輩、全然顔出さないし学校も休んでるみたいで。空が来たら先輩も来るかもしれないし。みんなから私シカトされちゃって、反省してます」
「先輩学校休んでるの?」
「うん、知らなかった?」
「だって若菜が近づくなって言ったから」
と私は怒った。
「ごめん。もう七瀬先輩は諦める。私サークルもやめたの。だから空にお願いしてるの」
「勝手なこと言わないで!アンタが悪い。先輩がどんな思いでいたか知らないでしょ!もういい。お願いだから私の前にはもう現れないで」
私は若菜が許せなかった。
私は先輩に電話をした。
「空ちゃんどうしたの?」
「先輩、今から会えますか?」
「いいけど、どうしたの?」
「話したい事があります」
「じゃあ、僕の家に来てくれる」
「はい、場所教えて下さい」
私は先輩の家へと足を運ばせた。
アビに連絡した。
「アビ、私今から七瀬先輩の家に言って話してくる。私はアビの事が好き。だけど先輩をこのままにはしておけない。アビ私を信じてくれる?」
「空らしいよ。信じてるから行っておいで」
優しくアビは言った。
先輩の家に着いた。インターホンを鳴らす。
「どうぞ」先輩が立っていた。
「お邪魔します」
意外に綺麗な部屋だった。物が少ないからなのか
あまり生活感がなかった。
「ソファへ座ってて」
先輩はお茶を用意してくれた。
「七瀬先輩、大丈夫ですか?」
先輩は私の横に座った。
「うん、今日も休んだけど大丈夫だよ。明日から大学行くよ。サークルのみんなも心配してくれて。早く顔出さないとね」
「そうですね。私も明日からサークルに行きます」
「空ちゃん、話って何?」
「この前の返事を伝えてたくて」
「うん、僕もうわかってる。けど聞くよ」
「私、好きな人がいます。だから七瀬さんとはお付き合いはできません。ごめんなさい」
私は迷いなく伝えた。
「そうだよね。あの時大学でアビさん見た時からそう思ってた。空ちゃんのあんな素敵な笑顔見た事なかったから。僕、空ちゃんに一目惚れだったんだ。まだ僕にもチャンスあるかもって告ったんだけど」
と悲しい顔で話してくれた。
「ごめんなさい」
「そんなに謝らないで。もう大丈夫だから」
「あーあ、こんな事ならキスぐらいしておけば良かったかな?空ちゃんもその気になったかもしれないしね」
と先輩は冗談ぽく言った。
「えっ?それはどうかな、、、」と誤魔化した。
まだアビと会う前なら恋人同士になっていたかもしれないと。
「あと、ハンカチありがとうございました。
すっかり返すの忘れてて」
「そうだったね」
と寂しそうに受け取った。
「明日サークルで」
と言って先輩の家を出た。
アビが待っていてくれた。
私はアビに抱きついた。アビは私の頭を優しく撫でてくれた。
「頑張ったな」と。
アビの匂いがする。私はアビが好き!
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