第4話 七夕祭り
もう、7月になり暑い日が続いていた。
トトは暑さでバテていたので、私がバリカンで短くカットしてあげた。トトは涼しくなったと喜んでいた。アビは毎日トレーニングをしている。アビはとても真面目で誠実な人。
最近私はアビの事が気になり始めてた。
明日は七夕祭りがある。自宅の庭に小さな柳があるので私は飾り付けをしていた。トトもアビも手伝ってくれた。
アビの浴衣と私の浴衣も準備して明日は七夕祭りに繰り出そう。
お祭り当日。
大学の帰りに七瀬先輩が
「空ちゃん、今日はお祭り行くの?」
「はい、アビとトトと3人で行きます」
「アビとトト?」
「ああ、親戚です。この前の」私は慌てた。
「そうなんだ。僕も一緒に行ってもいいかな?」
「えっ!一緒にですか?」
「あっ、ごめん。迷惑だった?」
「いや、あの大丈夫です。一緒に行きましょう」
「じゃあ、僕は空ちゃんの自宅に迎えに行くね」
と言って別れた。
どうして先輩が?私の事気にしてくれてる?
私は急いで帰った。
「ただいま」
シーンとしていた。
あれ?トトもアビも居ないのかな?
「トト?今日お祭りだから行く準備するよ」
シーン。何処行ったのかな?
私が用意した浴衣もそのままだし、どうしたんだろう?
玄関で物音がした。
「空、帰ってたのか」トトが言った。
「うん、居ないから心配しちゃった」
「すまん」アビが一言謝った。
「今日、お祭りだから支度しよう!七瀬先輩も一緒に行くって」
「おお、空の彼氏にやっと会えるな!楽しみじゃ」
トトはニヤついているように思えた。
「彼氏じゃないよ。先輩だよ」
私は照れ隠しした。
「空はそいつを好きなのか?」
とアビが聞いてきた。
「えっ!どうして?アビには関係ないでしょ」
と言ってしまった。
アビの表情は悲し気に見えた。
「アビごめん」
「気にするな」とアビは言った。
アビどうしたんだろう?
私はアビに浴衣を着せてあげた。アビは何を着ても素敵だ。
私はアビに「凄く似合ってる」と笑顔で言った。
アビも嬉しそうだった。
私もササッと着て髪もクルッと丸めてピンで止めた。
するとアビが後ろから私に髪飾りを刺してくれた。
「空、綺麗だよ」アビが笑顔で言った。
私の胸は高鳴った。ドキドキして止まらない。
こんな気持ち初めてだった。
「アビ、ありがとう。髪飾りどうしたの?」
「ああ、いつも空には世話になっているから、何かお礼をしたくて。トトに相談したら髪飾りが良いと言われて、それでさっき留守してたんだ」
「アビ、私凄く嬉しい」
アビは私を後ろから優しく抱きしめてくれた。
とても心地よくいつまでもこうして居たかった。
私はアビの事が好きなのかもしれない。だけど先輩の事も気になる。自分の気持ちがわからなくなっていた。
「支度は出来たかな?」
トトが入ってきた。
「あ、うん出来たよ」
「ほお、空!素敵じゃぞ、似合っておる。アビも男前じゃ。カップルに見えるな」
トトは満足していた。
「カップルって!トトだったら」
「私は構わないぞ」
とアビは照れながら言っていた。
七瀬先輩が迎えにきた。
私とアビが出た。
「七瀬と言います。よろしく」
とアビに挨拶した。
「私はアビだ。空が世話になっている」
と七瀬先輩に挨拶していた。
「空ちゃん、浴衣姿最高に可愛いよ、似合ってる」
「僕も浴衣にすれば良かったなぁ。ちょっとアビさんに焼いちゃうな」
「えっ?焼いちゃうって?」
後ろでトトが
「あいつ空と交尾を望んでいるぞ」
と話しているのが聞こえた。
交尾って!私は真っ赤になった。
七瀬先輩は私の事が好きなんだと初めて知った。
お祭りに行く前から混乱する出来事ばかり。
とりあえずお祭りに行こう!
3人とトトは会場へと足を進ませた。
両側には出店があって、通路を行き交う人で賑わっていた。
七瀬先輩が私の手を握ってくれた。
「迷子にならないように」って。
アビとトトはどこ?辺りを見るが人が多すぎてわからない。
「アビとはぐれたみたい」
と言うと
「僕は空ちゃんとお祭りに行きたかった。やっと二人になれて嬉しいよ。アビさんは後で探そう」
と笑顔で言った。
出店で金魚すくいをした。七瀬先輩はとても上手でもう7匹はゲットしていた。店主がもういいだろうと言って嘆いていた。的当てやくじ引きもした。
飴細工でプードルを作ってもらった。
七瀬先輩はとても楽しそうにしている。
キラキラした笑顔で私を見つめてくる。
いつも見る先輩とはどこか違って見えた。
そして、花火が始まった。
夏の花火は私には辛い事を思い出させる。
両親の事故の知らせを聞いた時も夜空に花火が散っていた。
七瀬先輩は私を抱きしめた。
「空ちゃんの事が好きです。もしよければ付きあってほしい」と耳元で告白された。
私は戸惑っていた。どうしよう。
「私、今すぐはお返事できません。ごめんなさい」
自分の気持ちがハッキリ分からないまま返事をすることは出来なかった。
「うん。空ちゃんの気持ちが整理できたら聞かせて」
と優しく言ってくれた。
「空ちゃん、サークルは絶対来てよ。僕の事は気にしないでさ」
「先輩は優しすぎます」
「そうかもね。だけど空ちゃんは誰にも渡したくない」とハッキリ言った。
「そうだ!アビとトトのこと忘れてた」
私は慌てて探し始めた。先輩も探してくれた。
人混みもなくなってきた。アビとトトを見つけた。
疲れてベンチに座っていた。
「はぐれちゃってごめん」と私は謝った。
「仕方ない」とアビが怒ってた。
「彼となんかあったかな?」
とトトが言ってきた。
「何もないよ」と私ははぐらかした。
「ふーん、帰ってから聞かせてもらうぞ」
「トト!」
その様子を見ていた先輩は
「空ちゃん犬とおしゃべりしてたけど大丈夫?」
「ああ、大丈夫です。気にしないで」
「じゃあ、帰ろうか」
と七瀬先輩は私の手を握ったまま歩き始めた。
自宅に着いた。
アビの機嫌が悪い。どうしよう。
トトが来た。
「アビはずっと空を探してたんじゃ。七瀬は空と交尾したいと知って尚更心配でのう。アビは空の事を好きなんだと思うぞ。本人にどこまで自覚があるか分からないが、気になり始めてる事は間違いない」
「その事なんだけど、私もどちらが好きなのか分からないの。七瀬先輩からさっき告白されたけど返事は出来なかった。それにアビの事気になり始めてる。アビと居ると私心地良いの。どうしたらいいのかな?トト」
「それは空の心が決める事だ。だから焦らずしっかり考えて心に純粋になれば必ず答えは出る。心配するな。相手もわかってくれるから」
「うん!トトはやっぱり頼りになる。ありがとう」
と笑顔で言った。
私はアビの横に座った。
「アビ、心配かけてごめんなさい」
「もういい。無事ならそれでいい」
「トトから聞いた。ずっと探してたって。本当にごめんなさい」
「アイツに先を越された。私は空と楽しみたかった」
「うん、これから二人でここで七夕しようか」
アビは嬉しいそうに笑った。
「あのね、短冊に願い事を書いて木に吊るすの。するとその願い事が叶うって言伝えがあるの」
「アビの願い事この短冊に書いて!」
アビは考えていた。トトは静かに横で寝ていた。
そして、二人は短冊を木に吊るした。
「お互いの願い事叶うと良いね」
「そうだな」
アビは私の肩を寄せて抱きしめた。
私は自然とアビに口づけをしていた。
トトだけが知っていた。短冊の願い事
いつまでもこのまま家族でいたい
二人は同じ願いだった。
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