第3話 忘れ物
トトとアビと私。
これからの生活が楽しみになってきた。
お腹も空いたので今日はカレーにした。
トトは犬なのに何でも食べれるようだ。魔法でどうにでもなるらしい。
アビに食事は魂だから食べないと言われたが、私は強引に食べてもらった。
トトにも説得されて渋々食べ始めた。
「うまい!」と言ってアビは食べていた。
私は嬉しかった。こんな楽しい食事は久しぶりだったからだ。
電話が鳴った。私はびっくりして電話に出た。
七瀬先輩だった。
「空ちゃん、メールは既読スルーだし学校にも来てないようだったから心配で何かあったの?」
「あっ、えっ、心配かけてすみません。大丈夫です」
「それならいいんだ。明日はサークル出席できる?」
「ああ、そうでしたね。出席できると思います」
「そう、良かった。楽しみにしてるね」
「はい、では明日」と電話を切った。
トトが「今の彼氏かな?」
「違います。ただの先輩です」
私は少しだけ彼氏ならいいのにと思っていた。
トトが
「空の携帯にストラップにして付けておいたからな」
「何を?」
「ワシらと繋がっていられる赤い石」
「あれ?アビが渡してくれた石?」
「ワシとは会話できるし、空がピンチの時はアビが助けに行く。おまじないの様なものじゃ」
「うん、ありがとう!大切にします」
私は家族が出来たみたいで温かい気持ちでいっぱいになった。
翌日、寝坊をしてしまって私は慌てて大学へ行った。あの出来事は内緒にしなければならない。
トトからもキツく言われた。
朝一の講義が終わってふと外を見るとアビとトトがいた。周りには女子がアビを見るために囲んでいた。アビは長身で細マッチョ。深い青い瞳でサラサラの黒髪。おまけにイケメンだものそうなるよ。
どうして!あんなにバレたら大変な事になるって言ってたのに!
私は急いで女子をかき分け駆け寄った。
「アビどうしたの?」
「空!忘れ物」
と携帯電話を渡してくれた。
「ごめんなさい。早速忘れちゃって」
トトが「空はおっちょこちょいじゃな」
「本当にごめん。届けてくれてありがとう」
「大した事ではない。トト行くぞ」
アビが照れくさそうに言った。
私は笑顔で「気をつけて帰ってね」
周りの女子はざわついていたが、私は気にしないフリをしていた。
「あの人とどんな関係?」
と幼馴染の理緒が聞いてきた。
うわー1番見られたくない人に見られてた。
「ああ、あの人はえーと親戚だよ。昨日外国から帰国してきたばかりなんだ」
「親戚?空に外人の親戚なんていたっけ?」
理緒は疑い深いし幼馴染だから誤魔化すのムズイ。
「父方の遠い親戚だから」
「ふーん、そうなんだ。で一緒に住んでるの?」
「まぁ。住むところ決まるまでの居候だよ」
「空の彼氏とかではないよね?」
「もちろん。だって親戚だし」
「なら、私の物にしていいって事だね」
とニヤッと笑って去って行った。
どうしよう、私は青ざめた。
理緒はお嬢様で欲しい物は必ず手に入れるタイプなのだ。よりにもよってアビが標的になるなんて!
これはマズイ。帰ったら説明しなければ。
私は知らなかったが、遠くでその光景を見て落ち着かない七瀬先輩がいた。
お昼に学食を食べようと席に座った。
すると七瀬先輩が笑顔でこちらに近づいてきた。
「一緒にいい?」
「はい、どうぞ」
「珍しいね!空ちゃんが学食なんて」
「はぁ、今日は寝坊しちゃって」
と恥ずかしそうに言った。
「たまには良いよね。僕も空ちゃんと一緒に食べれるから嬉しいなぁ」
と爽やかな笑顔で言った。
私はドキドキした。七瀬先輩もしかして!
イヤ、期待してはダメ。みんなに優しい人だから。
七瀬先輩もアビと違うタイプのイケメン男子だ。
女子にもモテるし、若菜なんて彼女でもないのに先輩にベタベタしてる。
「さっき空ちゃんに携帯渡してた人って誰?」
と先輩が聞いてきた。
「ああ、親戚です。今、うちに居候してるんです」
と私は答えた。
「えっ!居候?一緒に住んでるってこと!」
と先輩は驚いて聞いてきた。
「はい、何か?」
「いや、少しびっくりして。ごめん」
先輩どうしたんだろう?
あんなに取り乱したところ見た事なかった。
「何にもないですよ。親戚なんですから」
私はさらりと答えた。
「うん、そうだよね。彼凄くイケメンだったから、ちょっと心配になって」
「えっ!」
私はまたドキドキしてしまった。
「なんでもないなら安心した。ご飯冷めちゃったね。ごめんね」
とニコッと私に笑いかけた。
私は期待してはいけないと思いながら食事をした。
同好会の集まりには普段の七瀬先輩になっていたので安心した。
私は帰宅した。「ただいまー」
トトが走ってきて「おかえりー」と言ってくれた。
私は凄く嬉しい!帰ってきて灯りのついている家に帰ることがどんなに幸せなことなのか。
中に入ると良い匂いがしてきた。
「おかえり」
とアビが私の小さなエプロンをしてご飯支度を始めていた。
「アビ、料理できるの?」
「ああ、トトに教えてもらったからな」
「何か楽しみ!」
と言って私はお風呂に入った。
「空、早くしなさい。ご飯できてるぞ」
とトトが言いにきた。
私は髪を乾かさないまま、テーブルについた。
3人揃って「いただきます」
「アビ、すごいよ!初めてなのに完成度高い。それにとても美味しいよ。ありがとう」
アビの料理はとても美味しくて満足した。
「たまたまだ、明日も作るから」
とアビは嬉しそうだった。
「アビもお風呂どうぞ。片付けは私がしておきます」
私は上機嫌で片付けをしていた。
「トト、私家族が出来て嬉しい。私の両親いないから本当に嬉しいの」
「そうか。ワシも空の笑顔を見るのが嬉しいぞ」
すると、アビが全裸でウロウロしていた。
私はびっくりして、下を向いた。
一瞬だったがとても引き締まった良い身体だった。
私は真っ赤になりながら、父の下着やパジャマを渡した。
「アビ、明日アビの服買いに行こう」
と私は照れながら言った。
「ああ」
今日は休日。トトにはお留守番をお願いして、私とアビで買い物に出かけた。
アビは歩いているだけで注目されてしまう。
店員さんもアビにいろいろ服を勧めてくる。
私に兄がいたらこんな感じなのかと妄想していた。
休日のせいか人が多い。
アビが私の手を優しく握ってくれた。
「空、大丈夫か?離すなよ」
アビの手はゴツゴツしていたが凄く温かい。
「うん!」
トトにもお土産を買った。
「ただいま」
「トト、お土産買ってきたよ」
トトが疲れた様子でいた。
「どうしたの?」と聞いた。
「お前達が出て間もなく来客があってな。ワシは庭先で日向ぼっこをしていたのじゃ。その客は勝手に家に入ってさっきまで居座っていたからのう」
私はなんとなく嫌な予感がした。
「女の人?」
「そうじゃ!空と幼馴染って言っておった。なんでもアビに会いたくて来たらしい」
「私に何の用事だ!」
とアビは言った。
「私の物とか?言ってたな。まぁその間中、ワシの事を撫でくり回してほとほと疲れてしまったわ」
私はすっかり理緒の事を伝えるのを忘れていた。
「ごめん、トト。大変だったね。私伝えるの忘れててごめんなさい」
私は二人に理緒の事を話した。
「それは厄介な事になりそうじゃな」
トトも悩んでいた。
「そうなんだよね」
私も困っていた。
「おお、そうじゃ!家の周りに彼女が入れないように結界をはればいいのじゃよ。あとアビにもその子が近づけないようにしておくわい」
「トト、凄いよ!そんな事できるの!尊敬しちゃう」
「まぁな、ワシに任せておけば安心じゃよ」
と得意気に見えた。
「あっそうだ。トトにお土産買ってきたんだよ。
はい、これ!似合うと思って」
と着せてあげた。
「可愛い!アビと選んだの似合ってるよ!」
「トト、素敵だぞ」
とアビは苦笑していた。
「こんなフリフリの服ワシは着ないぞ!アビもアビだ!」トトは憤慨していた。
「今日はトトには仏滅の日だね」
と私はイタズラっぽく言った。
3人で楽しく笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます