第13話 あたしとカレ。

 ボクが変な願いを一生懸命にしたせいで

 キミのチャンスをたくさん、潰してしまったかもしれないよね。

 本当にごめんね。


 彼はそう言ってまた、淋しそうに笑った。

 あたしは首を横に振ってみせた。


 彼も何度か、恋をしたようだ。

 そしてその相手は、いずれもどこか、あたしに似ていたと言う。


 ――昨年、やっと、自分の力だけで生活ができるようになったんだ。


 これでやっと、堂々とキミの前に名乗りをあげられる。

 そう思った、と言った。

 それから必死に、あちこちのツテを頼って

 あたしのもとに辿り着くことができたと言う。


 離れてしまったあの日から、随分と時間が経ってしまったけれど

 ボクはもう一度、キミと時間を紡ぎたいと思っているのだけれど


 ――どうだろうか?


 彼の問いに、あたしは迷った。

 もちろん、悪い気はしない。

 でも、まずは今の彼を知りたいと思った。

 そしてあたしのことも知って欲しいと思った。

 だって二人とも、あのころのままではないのだから。

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