第12話 お見合い中のカレ。

 ――チャンスの神様は、前髪しかないから

 通り過ぎたら捕まえられない――。


 キミがずっと口癖のようにいっていたから

 ボクは捕まらないように、って、いつも必死に祈っていたよ。

 だってきっと捕まえてしまったら

 キミはお嫁に行ってしまうと思っていたから。

 キミの夢は、お嫁さんになることだ、って言っていたしね。


 子供のころ、親の事情で離れなければならなかったことが

 酷く哀しかったんだ。

 だって、約束しただろう?

 キミはボクのお嫁さんになる、って。


 ――そうだ、そうだったね、あたしはマーくんのお嫁さんになるのが夢だった。


 思い返せばどの人も

 どこか、マーくんに似ている部分を持ち合わせていた。

 優しそうな目、サラサラの髪。

 中身は……随分と違っていたようだけれど。

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